穏やかな日常(1)
ダンパーネ領に来てから2週間余りが過ぎた。
王妃様からの手紙も婚約が成立した事で無事に断りの返事をする事が出来て私はのんびり穏やかに暮らしている。
ルル様もダンパーネ領で一緒に過ごしている為、うちの両親達は少し緊張気味だけど。
「スー…見つけた。」
「ルル様!どうかされましたか?」
ルル様は相変わらず私にベッタリとくっついてくる。
「スーは気付くといつも居ないな。心配になる。」
「心配…?大丈夫ですわ!ウチの人達私がどこにいるか何となく分かってますから。大体私がいる場所は部屋かここの草原ですもの。」
「俺が心配なんだ。」
ルル様は私をギュッと抱きしめる。
「ル、ルル様…そう頻繁に抱きしめないでください。」
「何でだ?婚約者なのだからおかしくはないだろ?」
「婚約者候補です!…それでも抱きつかれるのは…。」
「俺が嫌なのか?」
「いや…そうじゃなくて…恥ずかしいんです。」
ルル様はきょとんとした顔で私を見る。
「今更じゃない…?ずっと前からしてるしキスだって…」
「わぁああ!それ以上は言わないで!だって…なんか…」
「なんか…?」
「なんか…ドキドキするんです…。」
ルル様は私の言葉にびっくりしたような顔をした。
「最近ルル様に触られたら…落ち着かないというか…」
「スー、それって…。」
ルル様が私に何かを聞こうとした時、後ろから低くて大きな声が聞こえた。
「スレイー!!」
逞しい体つきに高身長の男性がこっちにやってくる。
「ソイルお兄様だわ…!」
私は走ってソイルお兄様の元へ行った。
「ソイルお兄様!いつお帰りになったのですか?予定より少し遅かったですが…。」
「ああ。ちょっとしたトラブルがあってね。やっと今帰ってきた所だよ。」
私はソイルお兄様に抱きつくと、ソイルお兄様は私を軽々と持ち上げた。
「スレイ大きくなったな〜!でもまだまだ軽いな。ちゃんと食べてるか??」
「ちゃ〜んと食べてますよ!ソイルお兄様ったらレディをこんな風に持ち上げないで下さるかしら?」
「ハハハ!そうかそうか!レディそれはすまなかったよ。」
ストンと地面に足がつく。
「ん…?何だ?さっきから強い視線を感じると思ったら…王太子殿下でしたか!」
ソイルお兄様は姿勢を正した。
「ルルド王太子殿下にご挨拶申し上げます。」
「ああ…。」
「殿下、今回は変装なしで来られたんですね。」
私とルル様はビックリしながらソイルお兄様を見つめた。