催眠の魔法(3)
シリウスは陛下と目を合わせると、陛下は何かを悟ったような表情をしていた。
「これを私に先程飲ませたのか…?」
「はい。」
「シリウスもこれを飲んだのか?」
「はい、僕はこの部屋に来る前にもう飲んでいました。」
「そうか…。私はなんて愚かだったのだろう…。」
陛下はかなり気を落としているように見えた。その弱々しさがいつもの威厳のある国王としての姿ではなく1人の夫として、1人の人間としてシリウスは見えた。
「父上…元王妃様が亡くなられた時もお茶会が開かれていた事を覚えていますか?そのお茶会の主催は母上です。その時、兄さんも参加していて魔力暴走が起きました。」
シリウスが何を言いたいのかも直ぐに悟り、顔が青ざめる。
「サラが…ルナとルルドを排除する為のシナリオだったというのか…。何故私は…」
「催眠の魔法はかけた人の言葉しか聞き入れない。何もを見ても聞いても全くの無意味。今まで沢山の魔法がかけられたお茶を飲んで来たのだから仕方ない事です。ですが…もう理解しましたよね?」
陛下はため息を吐く。
「ああ。そうだな。それにしても…お前も大きくなったな。ルルドとシリウスがいればこの国は安泰だ。」
陛下はシリウスの頭をポンと叩く。シリウスはそれにビックリして目を丸くする。
「父上…僕はまだ兄さんよりも未熟で魔力も…」
「それはアレが異常なだけだ。今までの王族の中でもトップを張る程全ての能力が高すぎる。アレと比べる事は無駄な行為だシリウス。お前もよく頑張っている。魔力もだが頭脳明晰だ。周りが何と言おうと父親の私は認めている。いつもルルドと比べられ、今まで辛い思いをさせてしまったな…」
シリウスはその言葉を聞き涙が溢れそうになるのを我慢した。
「…っ ありがとう…父上…」
涙を隠そうと下を向くが陛下はシリウスの背中を叩く。
「前を向け!お前は自信を持て。そしてこれからはルルドを支えてやって欲しい。アレはどうにも人付き合いが苦手で怖がられる。お前のような明るさがもう少しあれば…。」
シリウスはハハッと無邪気な笑顔で笑い陛下と目を合わせる。
「兄さんには…スレイ嬢がいるから大丈夫じゃないでしょうか。僕も兄さんを支えられるようにもっと強くなります。でも…僕だってスレイ嬢と一緒にいたいんですけどね。」
「シリウス…お前もか…兄弟揃って同じ女性を好きになるとは厄介だな。まぁお前も頑張りなさい。第二王子なのだから『神の贈り物』を守る立場としては相応しい。どちらを選ぶかはその娘次第だがな。」
大きな声で意地悪そうに笑う陛下。
「父上…なんか楽しんでませんか?」
「ハハハ!楽しみもなくてはな。…さて、私はやらなくてはいけない事だらけだ。この小瓶は貰ってもいいか?」
「はい。父上の為にご用意しましたのでお待ちください。」
「感謝する。さあ、お開きにしよう。今度はルルドと一緒に来なさい。婚約者と一緒に顔を見せに来いと伝えてくれ。」
「はい。では、陛下、僕はこれで失礼します。」
シリウスは会釈をした後、部屋を出た。