急な来客(3)
「それよりも、母上の事で話があって…実はその事で今日ここまで急遽来たんだ。」
シリウス様は真剣な顔で私達に話し始めた。
「母上にスレイちゃんの事色々聞かれたんだ。魔力なしで人の心が視える、魔獣と話せる事。それらは『神様からの贈り物』と代々伝えられ書き綴られた王族しか見る事ができない本に書かれていた事と類似していると言われたんだ。」
「王族だけに語り継がれている本に書かれていた内容が…私の能力と似ているのですか?」
「そうだ。兄さんは見た事があるんだろ?その本。」
ルル様ばコクンと頷いた。
「人の心が視える者がいたり、魔獣と話せる者が居たと事は過去に居たと書いてあったけど、時空を遡ったという話は何処にも書かれていなかった。スレイちゃんは人の心も視えて魔獣と話す事も出来る今までにない特別な存在だ。」
「私が…特別な存在…?」
「神様の贈り物は大体が王族の人達が受け継がれるが、王族でない場合も稀にあり、そうだった場合その者と王族が結婚して神の力を守って行く事になっていた。」
(だからルル様は早く婚約をしようとしていたのかしら…)
「スレイちゃんの能力が学園側から母上の耳に入ったんじゃないかなと思ってるんだけど…母上はその能力を欲しがっていて、自分のものにしようとしているんだ。」
「それは…私はどうなるんでしょうか?殺されてしまう…とか?」
「そうだな…殺してもその能力は受け継がれる事はないとされている。母上は君を側近の侍女にするつもりだよ。永遠に結婚などせずに母のそばに置きたいと言っていたんだ。」
「私が…王妃様の…。」
「そうなると体を駆使し続けたり、無理な事を言われたり人を殺める事も厭わないだろう。王妃は人間を使い捨てだと思っているから最悪は力を使い果たし死んでしまう侍従もいる。」
私が誰かを殺める…そんな事絶対に嫌だ。
私は自分の腕をギュッと掴み身震いをした。
「スー、正直あまり時間がないんだ。このままだと王妃からスー宛に侍女として働くよう手紙が来る。そうなったらもう断れない。その前に手を打っておきたいんだ。婚約者候補でもいい。俺達の案に乗ってくれないか?」
(好きかどうかとか、王太子妃に向いていないとか言ってる場合ではなかったのね…。2人は私の無事を思ってこうして提案してくれている事に感謝しなくては。)
「分かりましたわ。そのご提案に是非乗らせて下さい。本当に御二方にはどう感謝を表したらいいのか…。本当に本当にありがとうございます。」
「まぁ、そうなったら兄さんの婚約者候補が妥当だろうね。俺だと母上との距離が近いし何を企んでいるのか分からないしさ。俺も今まで母上に従順に従っていたけど流石にもう母上の思うままに生きたくない。俺は俺でやらなきゃいけない事もあるからな。」
「シリウス、何をやろうとしてるんだ?」
シリウス様はニヤッと笑った。