君をまた
掌編小説です。
高一の秋。君は死んでしまった。さよならも言わず突然。聞いたところによると車に轢かれたとのことだ。
それから、僕の毎日は灰色になってしまった。いつも一緒に帰っていた道も、君と一緒に行ったレストランも、君と一緒に見た映画でさえ。
僕は生きがいをなくしてしまったみたいだ。明るい笑顔の君。映画を見て泣く君。パスタを美味しそうに食べる君。そのどれもが愛おしくて可愛かった。それを失った今はもう、生きる気がしない。
だから僕は死んだんだ。
君に会うために。
君はきっと天国にいるでしょ?僕もそっちに行くよ。だから待っていてほしい。広い広い天国でも僕がきっと探し出してみせるから。
いざ天国に来てみるとだだっ広い雲が広がってるだけだった。感触としてはふわふわしてるけど足を取られる感じ。これは君を探すのには苦労しそうだ。
歩き続けて数日。ちらほら人は見るものの君はいない。ずっと雲の上を歩き続けているだけだ。不思議にもお腹も空かないし、喉も渇かない。疲れてもずっと君だけを想って歩き続けるよ。
あれからまた数日。人が多く集まっているところまで辿り着いた。みんなで地上の様子を見たり話をしたりして楽しんでいる。
その中に君の姿を見つけた。やっと・・・・・・!やっと・・・・・・!君を探し出したんだ!
小走りで駆け寄る。君を抱きしめたい気持ちでいっぱいだ。
君がこちらに気づく。
・・・・・・え?なんでそんな怯えて逃げるんだ?僕が君に会いに来たんだよ?
すると君はこう言った。
「なんでここにいるのよ!?来ないでストーカー!!!」
あぁ。ここでも君、いやお前はそんなこと言うんだ。こんなにもお前を好いているっていうのに。
そうだった。君が車に轢かれたのも僕から逃げていた時だったね。またあの鬼ごっこしよっか。
だってお前はまた死にたいんでしょ?
じゃあ僕がその願いを叶えてあげるよ。お前の望みはぜーんぶ叶えるから。
逃げ惑うお前に追いつく。
「いやっ。こ、来ないで・・・・・・」
僕は優しく背中を押した。
天国から堕ちていく君をいつかまた探し出すよ。
じゃあ。またね。
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