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佐藤さんの転生物語 ~チケットで転生~

作者: 夕暮れの家

「あれ?ここは?」


周りを見ると知らない場所にいた。

目の前には虹色に光る対岸が見えない川があった。


「ここはどこなんだ?俺は・・・」


確か、一人暮らしの家で頭が痛くなって倒れて・・・。


「死んだ??」


「ここは死後の世界か?」


「あっ居た!」


女性が駆け寄ってくる。


「あの佐藤大輔さんですか?」


「あ、はい」


「三途の川の案内人をしております。えみりと申します。」


「あ、ご丁寧にありがとうございます。佐藤大輔です。」


「はい、では早速三途の川を渡りましょう!」


「えーと、三途の川ってあの目の前にある川ですか?」


「はい、そうです!あの先があの世になります。ここは現世とあの世の堺ですね。」


「なるほど」


「あ、引き返そうと思ってもダメですよ、佐藤さんは寿命を迎えてこちらにいらしているので戻れません」


「大丈夫です。特に心残りとかないんで」


「そうですか!それは素晴らしいことです!ではでは皆さんお待ちなのでさくっとあの世へレッツゴーです!」


「あ、はい」


なんか元気な人だな。やっぱ死んだのか。まあ本当に心残りとかないし、いっか。

案内人のえみりさんが歩き出す、付いて行くか。


「あ、佐藤さん六文銭とか持ってます?」


「六文銭?」


「はい、三途の川を渡るのに六文銭を渡して船を出して貰うっていう風習があるんですよ」


「へぇーそんな風習あるんですね」


「いやー若い人はやっぱ知らないですよねー、一応六文銭がないときは服を全部没収して裸で渡るとかあるんですけど」


「え、裸はちょっと嫌だなー」


「ですよねー、昔は裸で渡って頂いてたんですが、コンプライアンス的に良くないって話になりまして、今は無料で渡れるようになったんですよ」


「コンプライアンスですか?」


「あの世も色々あるんですよ。それに三途の川に渡し賃が必要って風習は日本人のみで、日本人だけ裸であの世に行くのはどうなの?ってなりまして」


「たしかにそれはまずそうですね」


「ですよねーそれで三途の川の渡し賃制度は結構前に廃止になったんですよ」


「なるほど」


「着きました、ここからはこの船で行きます。源さんお願いします」


川の畔に小さな木で出来たボートがあった。

そこにオールを持った年老いた男性がいた。


「ほいほい、乗りなしゃんせ」


老人に促されてボートに乗る。


「じゃあ、源さんAコースでお願いします」


「ほぉーAコースかい、そりゃ立派なこって」


Aコース?


「コースがあるんですか?」


「はい、三途の川を渡るときにどのコースを通って渡るかがあるんですが、佐藤さんはAコースです!」


「Aコースっていいんですか?」


「いいですよー、ねっ源さん」


「ほっほっほっ、楽しみにしりゃさんせ」


楽しみに?


「ではではあの世に向けてしゅっぱーーーつ!!」


源さんがオールをゆっくり動かすとボートがスゥーと動き出す。


「ではでは佐藤さん周りの景色をお楽しみください!」


虹色の川の表面が光を浴びてキラキラと輝く、温かい光に包まれて気持ちがいい。

鳥や蝶が辺りを飛び回る。

鳥が飛んだ後にはキラキラと輝く軌跡が残る。

蝶が飛ぶと美しい音色が聞こえる。

水面から音がしたと思ったら金色の魚が跳ね上がり虹色を空中に押し上げ輝かせる。

現世では見ることが叶わない景色がそこにあった。


「凄いですね、綺麗です・・・」


「ですよねー皆さんいつもより気合が入ってますよー」


「そうなんですか?」


「はい、佐藤さんは特別なので」


「特別??」


鳥と蝶と魚たちの舞いは続く。

魚が大きくジャンプした。

勢い余ってボートに乗り上げてしまった。

ボートの上でビチビチと飛び跳ねている。


「えっ?おい、お前何してんだよ」


慌てて魚を掴み、川に戻す。

魚はポチャンと川に飛び込むと気持ちよさそうにスイスイ泳いでいく。


「テンションが上がり過ぎちゃったみたいですね」


えみりさんが笑顔で言う。


「ドジな子もいるんですね」


「ほっほっほっ、会いたかったんじゃろ」


「会いたかった?」


「ここにいる子たちは皆、佐藤さんと縁がある子なんですよ」


「えっ?でも俺そんな魚とか蝶とか鳥とかに縁なかったですけど」


「いえいえ、今はその姿ですが、皆違う姿だったんですよ」


「そうなんですか?でも俺そんなこんな美しい光景を見せて貰えるようなことした覚えないんですけど」


「まあまあいーじゃないですか、せっかくなんですからこの光景を楽しんでください!」


「あ、はい、ありがとうございます」


船は川を進む。

目を閉じる。

風が気持ちいい。

目を開けると皆が作り出す美しい光景がある。

なんか泣きそうだ。

そんな時間はあっという間に過ぎた。

もう対岸が見えてきた。


「さぁあの世に到着ですよー」


「はい」


ゆっくりとボートが岸に接触する。


「あの、源さん、後、皆さんありがとうございました」


「ほっほっほっ、儂も良いものが見れたわい」


魚が飛び跳ね、鳥が飛び、蝶が舞う。


「皆ありがとう」


「はい、ではあの世を案内しますので船を降りましょう!」


「ここがあの世ですか?」


目の前には大きな建物があった。

白塗りの壁で出来た真四角な建物。


「はい、ここは転生課の建物です。」


「転生課の建物?」


「昔は色々あったんですが、現代風に改装されまして、現在はこの建物で来世を決めるんですよ。所謂、昔でいうところの閻魔様がいる建物です!」


「閻魔様?えっと地獄に行くか天国に行くかとかですか?」


「はい、そうですね。天国も地獄もありますよー。どこの世界に行くか、この建物内で決定する訳です」


「なるほど、地獄は嫌だなー」


「どうなるかは行ってみてのお楽しみです!ではでは、入口までご案内しますね」


川からその建物までの道は石で舗装されていて歩きやすかった。

一歩しか歩いていないはずなのに数歩歩いたかのように周りの景色が流れる。

あっという間に建物の前に着いた。


「はい!とうちゃーく!私の案内はここまでです。ではでは佐藤さん素晴らしい来世を!」


「えっ、あ、はい。えみりさんここまでありがとうございました」


「いえいえ、これが私のお仕事ですので、ではでは次の来世の終わりにまた会いましょう!」


「はい、そのときにはよろしくお願いします」


「さらば!」


煙が立つとえみりさんの姿が消えた。


「えっと、どうすればいいんだろ。とりあえずこの建物に入ればいいんだよな」


建物の入り口はガラスの回転扉になっていた。

意を決し回転扉の中に飛び込む。

建物の中はなんか普通だった。

目の前に受付みたいなのがあって、横にはエスカレーターがあって、奥に入るゲートみたいなのも見える。どこかの企業のビルの1階みたいだった。


何をしていいのか分からなかったため、とりあえず受付に行くことにした。


「あの、すみません。お忙しいところ恐縮なのですが、ご教示いただきたいことがございます。私は佐藤大輔と申します。案内人のえみりさんにご案内をしていただき、ここまで来たのですがこの後どうすれば良いでしょうか?」


「はい、ご予約の佐藤様ですね。承っております。このカードを持ってゲートを潜り奥に進んでください」


受付の美人のお姉さんから銀色に光り輝くカードを渡された。


「これで奥にですか?」


「はい、あのゲートにピッとかざして奥に進んでください。奥に係員がいますので、その後は係員の誘導に従ってください」


「あ、はい。ありがとうございます」


このカードでゲートを潜って奥にか、なんか就活で企業訪問したときを思い出すな。

うっ嫌な記憶が。

まあ気を取り直して行ってみますか。


「ご丁寧にありがとうございました」


「いえいえ、良き来世を」


受付のお姉さんに別れを告げゲートへ進む。電車でICカードをかざす要領でピッとやったら普通に通れた。


「えっと奥に行けばいいんだよな」


奥まで歩いていく、赤い絨毯に白い壁、高級感と清潔感がある通路を渡ると行き止まりに扉が見えた。扉の横にがたいのいいお兄さんが立っている。


「この扉の中に入ってください」


「あ、はい、分かりました」


重い両開きの扉を開けると小学校の体育館ぐらい広い部屋に出た。

沢山の人がいる。

広い部屋の中に複数のブースがあってスーツを着た人が説明をしている。

あっこれ見たことある。

これ就活のときの企業が合同で開く説明会のブースに似てる。

入口でこの後どうしようかと周りをキョロキョロ見ているとスーツを着た男性がこちらに駆け寄ってきた。


「どうも、転生課のスガラキと申します。」


「あ、佐藤大輔と申します。ご丁寧にありがとうございます」


名刺を渡された。転生課スガラキと簡素に書いてある。

スガラキさんは手にしていたファイルをパラパラとめくると


「本日ご予約の佐藤大輔様ですね。ではご説明をしてもよろしいでしょうか?」


「あ、はい。よろしくお願いします」


「はい、ここは転生課が受け持っている転生ブースとなっております」


「転生ブースですか?」


「はい、各世界の担当職員が各ブースで自分たちの世界を紹介しておりますので、そこでお話を聞いてもらいます。」


「このブース全部異世界なんですか?」


「はい、そうですよ。皆さんに馴染みの深い天国や地獄などのブースもございます」


「天国と地獄もですか?」


「はい、厳密には天国と地獄も別世界ですので1ブース担当しております」


「なるほど」


「チケットはまだ受け取っていませんよね?」


「チケットですか?」


「はい、各ブースでチケットを見せていただきます。チケットをお持ちの方のみ、その世界への転生することができます」


「あっそういう仕組みなんですね」


「はい、チケットの受け取りは左手にある扉の先になります。まずはそのチケットを受け取っていただき、自分が転生できる各ブースへ行き説明を聞いた後で中央のテントへ行っていただき転生の手続きをしていただきます」


「はい、じゃあまずはチケットをあちらで受け取りに行けばいいんですね」


「はい、そうです。チケットを受け取りに行ってください。すみません、本日は飛行機事故があったようで多くの方が来ていまして、あちらの左手の部屋の中でお声がかかるまでお待ちください」


「あっはい、分かりました。ご説明ありがとうございます」


「はい、ではでは素晴らしい来世を!」


「はい」


えっと、とりあえず左の壁にある、あの扉の先に行けばいいんだよな。

にぎやかな会場を後に左手にあった扉を潜る。

そこにはパイプ椅子がずらっと並んでいる広い部屋があり、色んな人が座っていた。

向かいにまた扉があり、その横でスーツを着た女性が立っていた。


「今、来た方、お名前が呼ばれるまで椅子に座っていてくださーい。詰めて座ってください」


「あ、はい、わかりました」


えっとこのパイプ椅子に座ればいいのか。

隣には綺麗な服を着たおば様がいた。


「あら?あらあら?貴方若いのに死んじゃったの?あっあの飛行機に貴方も乗ってたの?」


「いえ、飛行機には乗ってなくて部屋で頭が痛くなって倒れてそのまま」


「あらーそうなのね。私は飛行機乗ってて落ちちゃって、いやねーまだ死ぬ予定じゃなかったのに」


「ははは、ですよねー自分もまだ死ぬ予定じゃなかったですよ」


「そうよねー。まあ死んじゃったならしょうがないわよね」


「ですね、もうどうしようもないですからね」


「はぁー困っちゃうわ」


「ははは」


困った。人苦手なのにこんなに話しかけてくる人の隣とか、あー今から席変える訳にはいかないし苦行だ。


「ねぇ、あの人見て、あの人有名人のカイトよ」


「えっ、あっ、そうですね」


カイトは所謂インフルエンサーというやつだ。昔にIT企業を立ち上げて大きくして経営は後継者に任して海外へ移住。そして海外からSNSなんかで色々と政治についてなど意見を言っていた。


「で、あそこみて、あれ、殺人犯よ」


「えっとそうなんですか?」


「そうよ、確か親を殺したのよ、やーねー怖いわ」


殺人犯と呼ばれた人をみると若い男性だった。自分はニュースなんかはあまり見てなかったから顔は知らない。


「早く名前呼ばれないかしら、待ちくたびれたわ」


部屋の中には自分の前に300人くらいがいる気がする。

この人たちが全員呼ばれた後だとするとかなり時間がかかりそうだ。

一人の名前が呼ばれた。

その人は椅子から立ち上がると向かいの扉の中へ入っていった。

そして、しばらくすると出て来て、代わりにまた他の人の名前が呼ばれる。

一人5分から15分くらいだから・・・50時間?

うげーきつい。

待っている間、おば様の雑談に相槌を打つ相槌Botと化して時間を潰す。

部屋の中では所々で話声が聞こえるが、基本的には静かだ。

目を瞑って寝ている?人が多い。


「相田祥子さん」


「ようやく呼ばれたわー。行ってくるわね」


「あっはい、行ってらっしゃい」


おば様がスキップしそうなくらいルンルンで向かいの部屋へ旅立った。

きつかった。

ようやく解放された。

まあ時間が潰せたから良かったのか?

良かったと思おう。

しばらくしておば様が部屋から出てくると手には紙切れが握られていた。

おそらくあれがチケットだ。

おば様は笑顔でこちらに手を振ってきた。

ぎこちない笑顔で手を振り返す。

おば様はブースがある会場に行くようだ。

また少し時間が流れて、カイトも殺人犯と呼ばれた男も呼ばれてブースへ移動していった。

そこから大分時間が経過して。


「佐藤大輔さん」


「はい」


ようやく、ようやく呼ばれた。長かった。

暇だから観察をしていたが、皆チケットと呼ばれる紙を持って出てくる訳ではないみたいだ。

本当に偶にだが手ぶらで部屋から出てくる人がいる。

その場合は皆暗い顔をしている。

中には紙を沢山持って出てくる人もいる。

その場合はいい笑顔をしている。

チケットが貰えない場合はどうなるんだろう?自分はチケットを貰えるのだろうか?

ドキドキしながら扉を開く。

あっノック忘れた。


「佐藤大輔さんですね」


部屋を入ったら一人のスーツを着た女性が座っていた。

扉の横には屈強な男性が二人立っている。

女性の目の前にパイプ椅子がある。

既視感がある。また就活の面接を思い出した。

ノックを忘れたのは減点かもしれない。

そうそうに失敗してしまった。


「そちらに座ってください」


「はい、失礼します」


背筋を伸ばして手は膝の上で軽く握り、まっすぐ前を見る。

もう気持ちは就活だ。


「あはは、気楽にしていいですよ」


「ありがとうございます」


気楽にしていいと言われて気楽にしたら落とされるんだ、決まってる。


「では後が詰まってるので、もう本題に入らせていただきます」


「はい、よろしくお願いします」


「ここでは転生先の世界へのチケットをお渡しします。チケットは推薦で貰えます」


「推薦ですか?」


「はい、推薦です。他者からの推薦でうちの世界へ来て―と推薦状を貰うという感じです」


「なるほど」


「佐藤さんへの推薦状は・・・」


ごくりっ


「沢山来てますね。ここまで多いのは最近では中々ないですね」


「えっ?本当ですか!?」


「はい、基本的に虫さん達からの推薦状が多いですね。蟻さん、ミミズさん、ゴキブリさん、蚊さん、蜘蛛さん、蝉さん、エトセトラといった感じで」


「えっと、虫さん達ですか?」


「佐藤さん貴方、虫さん達を沢山助けませんでした?」


「えっと?余り記憶が・・・」


「推薦状には感謝の言葉が合わせて綴られていますよ。人間の家に間違って入ってしまって死んだと思ったら外に逃がして貰えたとか、見つかって殺されると思ったら外に連れ出して貰ったとか、後、一番多いのはミミズさんですね、死後に手を合わせて念仏を唱えて貰えて嬉しかったと書かれていますよ」


確かに、部屋で虫を発見するといつも外に逃がしてたっけ。

ミミズは夏とか路上に一杯死んでて、なんとなくいつも習慣で心の中で手を合わせて念仏唱えてたっけ。


「えっと、ありがとうございます?」


「くすくす、感謝しているのは皆さんだと思いますよ。中には練習して三途の川で恩返しをしていた子もいたと思うのですが」


「えっ、あーあれってそうだったんですね」


「そうですよ。一杯の魚や蝶や鳥がいたと思うんですけど、皆何か感謝がしたいって希望した子がその姿を取って貴方の門出を祝っていたんですよ」


「そうだったんですね。ありがとうございます」


「はい、なので佐藤さんは沢山の推薦状が届いています。大抵は一緒にまた地球に転生して今度は虫やらないかい?っていう推薦状ですね。他にも魚さんや鳥さんや植物さん、犬さん、猫さん、などの動物さん、人間はご両親からも推薦状が来ていますね」


「両親からもですか」


「はい、ご両親からは天国への推薦状が届いています」


「天国ですか」


「はい、ご両親は天国にいらっしゃるようでこちらに来ないかと推薦状が出ているといった形ですね」


「なるほど」


「他にも様々な異世界への推薦状も来ていますね。前世でお世話になった貴方に今、自分のいる世界へ来ないかと推薦状が届いていますよ」


「ありがとうございます」


「はい、ではこれを受け取ってください」


椅子を立ち上がり女性から複数の紙を受け取った。


「ではでは、隣の会場で希望する世界を見て回ってください。チケットに書かれている世界でしたらお好きに行けますので」


「わかりました。ありがとうございます!」


「はい、では良き来世を!」


「失礼します」


お辞儀をして部屋を後にする。数えると15枚もチケットがあった。

15世界へ行けるのかな?すごいな!

ありがたい。

皆さんありがとうございます。


ブースのある会場へ行く。

どこから回ろうか。

とりあえず、チケットを見ると世界の名前と種族が書かれている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

世界名:地球

種族:虫、犬、猫、鳥、魚、豚、牛、馬、植物

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


多分、この種族に転生ができるってことかな?

地球だとこれだけの種族に転生ができるのか。

人間がないな、まあ地球で人間はもういいかな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

世界名:天国

種族:人間

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


多分、これが両親からの推薦状で得たチケットだ。

天国で人間ができるらしい。

天国で人間か、少し悩む。


でも自分は昔から夢があったんだ。

もし異世界転生が叶うなら魔法が使える世界へ行きたい!

魔法が使える世界で人間として生きたい


魔法が使える世界はあるのだろうか?

そもそも自分、人間として生きれるチケット天国以外にあるのだろうか?


チケットを一枚一枚チェックする。

そうすると聞いたことのない世界の名前と種族:虫というチケットが沢山あった。

虫さん達からの推薦状が多いって聞いてたからやっぱ種族は虫なのか。

虫かぁ、虫に転生するなら蜘蛛がいいなぁ。

蜘蛛に転生する異世界転生物あったなぁ、大好きだった。

異世界で蜘蛛ならいいかもしれない。

だけど、一枚だけ異世界で人間があった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

世界名:ドビーズ群青

種族:虫、人間

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ドビーズ群青っていう世界、ここだけ人間がある!

ここが魔法が使える世界ならここで決定したい。

すまぬ、親よ、子は旅立つ。

天国も良さげだけど異世界で魔法の誘惑には勝てぬのだよ!

ドビーズ群青、ここが第一候補だ。

魔法来い!


と思っていたら会場から怒声が聞こえる。


「なんでお前みたいな殺人鬼がチケット貰えてやがんだ」


声の方を見るとおば様に殺人犯と呼ばれてた若い男が中年の男に胸倉を掴まれていた。


「うるさいな、いいだろ。お前には関係ないだろ」


「チケット見せろ!おらっ」


中年は若い男から無理やりチケットをむしり取った。


「おい、返せ!」


「なんだ地獄のチケットかよ!やっぱ殺人鬼には地獄がお似合いだぜ!もう一枚はと、はぁー地球で猫だと!ふざけんな!なんでてめえみたいな奴が地球で猫なんだよ!ふざけんな!」


「返せってつってんだろ」


「君、そのチケットを彼に返したまえ」


カイトだ。カイトが揉めてる二人の間に入って中年のおっさんにチケットを返すことを要求した。


「ちっカイト様かよ。うぜーな、どうせ有名人のカイト様はチケットさぞ沢山貰えたんだろうな。いいよな有名人様はよ」


「はぁー君、そんなだからチケット貰えなかったんじゃないかい?」


「うっせーな!余計なお世話だボケ」


「とりあえず、彼にチケットを返したまえ」


「うるせー猫のチケットは俺が貰ってやることにしたんだ。殺人鬼が猫に転生してまた地球に行くのを俺様が阻止してやろうって言ってるんだ。俺は良いことをしようとしてんだ!邪魔すんな!」


「はぁーすみません、係員さん他者のチケットを使っての転生はありなんですか?」


カイトが近くにまで来ていた係員に聞く。


「はい、チケットの譲渡はありでございます。チケットはその方の財産ですので、自分の財産をどのように利用しても問題ございません」


「よし、俺様は来世は猫ちゃんだ!ヒャッホー!」


「返せよ!」


「うるせーな、お前は地獄に行けよ!」


「お客様、無理やりの略奪はルール違反です」


パチン!


スーツを着た係員の男性が指をパチンと鳴らすと、中年男の手に合ったチケットがスッと消えて、若い男の手に戻った。


「くそっ!なんで俺みたいな善良な市民がチケットなしでこんな屑がチケットありなんだよ、くそったれ!」


男は罵詈雑言吐きながらその場から離れて行った。


「はぁー君、災難だったね」


「どうも」


「ねえ係員さん聞きたいんだけどチケットなしの場合はどうなるの?」


「チケットなしの場合はランダムで次の世界と種族が決定となります。所謂皆さまに分かりやすく言いますとガチャですね。ガチャで決まります」


「なるほどね、ありがとう。因みにチケットがあった場合もガチャを引くことはできるのかな?」


「はい、可能です。チケットを破棄しガチャを引くことは可能です」


「チケット破棄かぁー。OKありがと」


「いえいえ、素晴らしい来世を」


「みんなー聞いて欲しい!」


カイトが騒動で集まった人に向けて大きな声を出した。


「僕は天国・人間のチケットを持っている!これを地球・人間のチケットを持っている人がいたら交換して欲しい!誰か地球・人間のチケットを持っていて、天国と交換してもいい人はいないかい?」


集まった人がざわざわと騒ぎ始めた。

その中から一人の女性が手を挙げる。


「はい!カイトさん、私、地球・人間のチケットあります!」


「ほんと!交換して貰えないかな」


「はい!カイトさんにだったら大丈夫です!」


「ありがとう助かるよ。僕は地球の未来が心配なんだ。だからまた人間として地球で生まれて地球をよりよくしたいと考えてるんだ」


「はい!是非、素晴らしい地球にしてください!」


「勿論だよ!ありがとうこの恩は忘れないよ」


女性とカイトは握手をしてチケットを交換し合った。

それを見て、周りで色々と声が上がる。

自分も同じようにチケットを交換しようと声が上がる。


どうしようかな。とりあえず、15枚もあるからいらないチケットならあげてもいいんだけど。

とりあえず、ブース回ってからかな。

第一候補のドビーズ群青を見に行くのは決定だけど、せっかくだから色んなところ回ってみよう。


えっと、ここは天国か。


「ここは天国ですか?」


「はい、天国ですよ。チケットを確認しても?」


「はい、チケットはこれです」


チケットをスーツを着た男性に見せる。


「はい、確認しました。ブースに着いたらチケットを係員に見せるようにしてください。チケットを持っている方のみ説明を受けれますので」


「はい、かしこまりました」


「はい、では天国のご説明をします。天国は皆様が想像する天国と大きな差異はないかと思います。死者が旅立つ先の世界で一番人気の転生先となっております。」


「天国への転生は生前と同じお体で希望の歳で生まれ変わります。歳も取らずお腹が空くこともありません。食べ物を食べずにいられるので働く必要もございません。」


「地球世界を見渡すこともできるので、地球を見ながら天国でのんびりゆったり過ごしていただきます。天国には様々な世界で名を馳せた著名人がいますので、その方たちが天国で創作した創作物を楽しむことも可能です」


「なるほど」


「天国のデメリットは子を為せないことです。天国へは生前のお体で行っていただきますが、半幽体となりますので性行為ができません。それでもよろしければ天国をお考えください」


性行為ができないのか天国は。童貞のまま死んだ自分はまた童貞で来世を生きることになるのか。

それは辛いな。


「すみません。天国に行ったらどうやって死ぬんですか?」


「はい、天国では死という概念がありません。簡単にいうと死にません。なので任意で自分が転生したいと思ったら他の世界へ転生するといった形です」


「えっと、その際もチケットを貰ってという形ですか」


「はい、そうなります。他者から推薦状を貰い他の世界への転生となります」


「なるほど、チケットって今回貰ったチケットを次回にも使うことって可能ですか?」


「はい、天国の場合は可能です。世界によってはチケットの持ち込みが不可な場合がございますが、天国へはチケットを持ってご入場していただくことが可能です」


なるほど、チケットを持って天国行けるのか。

うーん、それで任意のタイミングでチケットを使って転生ができるなら一旦天国寄ってから他の世界行ってもいい気がしてきたな。


「あの、チケット持って一回天国行ってから他の世界へ転生しても大丈夫ってことですか?」


「はい、そういう方も多くいらっしゃいますよ」


「なるほど、ありがとうございます」


「また、何かございましたらお声がけください」


「はい」


よし、じゃあ一回天国行って久しぶりに両親に挨拶してから他の世界に転生しようかな。

せっかく両親が天国へのチケットくれたことだし顔だけでも出すかな。

それに天国がどんなとこか見てみたいし。

もしかしたらあの作品の続編とか読めるかもだし。

決めた!一回天国行く!よしよし、天国ブース来て良かった。


他も回ってみよう。


ここは地球か。うーん、地球の説明も聞いてみるか、一番沢山の種族に転生できるのが地球だからな。

まあ人間はないんだけど。


「チケットを拝見します」


「はい、これです」


「大丈夫です。では説明会を開始します。皆さんスライドをご覧ください」


丁度説明会が始まるとこだったみたいだ。ブースの中に椅子があり、10人くらいの人がいる。

カイトさんや殺人犯と呼ばれてた若い男もいる。


「皆さまは地球出身ということで、特に地球に関してはご説明する必要はないかもしれません。ですので、地球がどんな世界かは割愛いたします。地球への転生についてのルールをご説明します」


「地球への転生の場合は一旦記憶を消去したいます。現在の記憶を持っての転生はできません」


「前世の記憶はなしで転生します。転生先の種族はチケットに書かれているものになります。種族内の詳しい転生先も選べません。そこはランダムになります」


「ランダムかぁ~」


「はい、ランダムです。地球は皆にできるだけ平等な転生を提供することをモットーにしております。そのため前世に関わらず平等にランダムで転生することになります」


「はい!徳が高い低いで変わったりしないんですか?」


「はい、平等に転生していただくために前世の徳は関係なく転生されます。前世の徳でスタートダッシュがしたい方には地球はあまりお勧めできません」


「徳でスタートダッシュできる世界があるんですか?」


「あります。詳しくは言えませんが所謂チートを持って転生をスタートなんていうことも可能な世界がありますよ」


チート!夢がある!


「なんだ僕は今世恵まれていたから前世の徳が関係してるのかと思ったけど、全て僕の実力だったってことだね」


「そうですね。前世は関係ございません」


カイトが満足気に頷いている。

地球は平等だったんだな。

意外だ。

でも地球はないかなーせっかくなら異世界に行きたい。


「他にご説明しておくべきこととしては、地球への転生の場合はチケットを持っていくことができません。今回地球へ転生するために使用するチケット以外は破棄していただきます」


「破棄ですか?」


「はい、地球は『始まりの世界』と呼ばれています。地球へ転生しチケットを破棄し、また新たな転生生活をスタートするといった意味でチケットを破棄していただきます」


「なるほど」


「しかし、地球はチケットが比較的獲得しやすい世界でもあります。なので、今世と同じようにチケットを獲得していただき思う存分地球をお楽しみいただいた後は別世界に行くもよし。また地球が発展してきたら覗いてみるもよしです」


確かに、地球が発展した後に行ってみるとかちょっと興味はあるかな?

VRが発展してどこまで行くのかとか興味あるし。


「地球への転生については以上ですね。前世の記憶を失いますが、世界によっては前世の記憶が蘇る世界などもございますので今の自分にまた出会いたい場合はそのような世界へ転生していただければと思います」


「へぇ~前世の記憶を取り戻せる。つまり今の僕にまたなれる世界もあるんだ」


「はい、ございます。その世界のチケットを手に入れるか、ガチャで当たるかすればそのような世界に行くことも可能でございますよ」


「それは良い事を聞いた。僕は今の僕を気に入ってるからね。今度地球行った後はそういう世界へ行くのもいいな。因みに次の自分へメッセージを伝えることはできるかい?」


「地球ではそのようなサービスはやっておりませんね。世界によってはやっているとこもあるかもしれませんが」


「そうか。じゃあ、次の自分に次は前世を思い出せるとこへと伝えるのは無理か・・・うーん、少し悩むね」


「はい、大いに悩んでください。長い人生が決まりますからね。皆様、後悔のないご選択をお願いします。それでは説明会を終わります」


バラバラと参加者が椅子から立ち上がり各々次の場所へ移動する。

自分はどこ行こうかな、とりあえず片っ端から行きますか。

個人的に地球はないかな?魔法が使える別世界がいい。

魔法が使える世界あるよね?



沢山あるチケットを使って色々見て回った。本当に色々な世界があった。

異世界転生物の小説が好きで色んな異世界を物語でだけど知ってたけど、物語より沢山の種類があった。

SF小説に出て来そうな世界から王道ファンタジー世界、そして、魔法が使える世界もあった!

でも虫なんだよなーチケットで転生できるの。

でも虫でもいいから行きたくなる世界が一杯あった。

悩む。

でも、悩むのは最後ドビーズ群青世界を見てからだ!

人間で魔法を使う。その夢が叶うかがここにかかってる。

ドキドキしながらドビーズ群青ブースに向かった。

他のブースを見て回って思ったけど、自分みたいに他の世界へのチケットを持っている人は意外に少ない。

ブースに行っても他に話を聞きに来てる人は、一人二人いるかいないかといった具合で大抵係員の人にマンツーマンで教えて貰えている。


綺麗な深い青が印象的なブースに着いた。


「すみません、ここがドビーズ群青世界のブースでしょうか?」


「はい、ドビーズ世界へようこそ!ここがドビーズブースです!」


元気なお姉さんが係員のようだ。

チケットを見せて確認して貰った。


「ではドビーズ群青世界の説明をさせていただきます!」


期待感で胸がうるさい。さっきから凄いドキドキしている。


「お願いします!」


「はい、ドビーズ群青世界は名からも分かる通り鮮やかな青をイメージした世界になります!すっごく綺麗な世界になります!バカンスに最適!青い海、青い空、青い生き物、青ずくめです!」


青ずくめかぁ~。


「地球出身の人には余り人気ないんですよね。青づくめ。もっと色んな色が欲しいって」


お姉さんが落ち込み始めた。


「青っていいと思うんですけどね。これ言うと大抵地球信者は地球も青い海、青い空だって言い始めて、なおかつうちは沢山の色があるぞとかマウント取ってきやがって」


「はは、大変ですね」


「そうなんですよ、地球がなんぼのもんじゃいって話ですよ。地球の青もまあいい青ですけど、うちの青舐めないで欲しいんですよね」


「そんなに綺麗な青なんですか?」


「はい!青の綺麗さでは絶対ナンバーワン!です!そこは絶対に負けませんよ!」


鼻息荒く身を乗り出して言わなくても。

でもそんなに綺麗な青っていうのも気になるな。


「あの、地球との違いを教えて貰ってもいいですか」


「はい!お任せください!そうですねーやっぱり地球との大きな違いは色なんですけど、色以外だと魔法ですね」


「魔法があるんですか!?」


「あります!多種多様な魔法がございまして、様々な魔法体系があります!魔法系世界ですので!」


「すごい!」


「でしょー!後、うちの世界はバカンス利用で皆さまがご利用されている世界で皆さまに愛されて幾憶年って感じでして。他の世界に負けない素晴らしい世界であると自負しています!」


「バカンス利用ですか?」


「はい、転生の際には前世の記憶を持った状態で転生していただきます。そのため、前世で疲れた人や魔法に憧れがある人なんかが次の世界へとよく選ばれるんですよー」


いいかもしれない。前世記憶ありで魔法世界。


「あの!魔物とか人類に対する外敵はいますか?」


「あー魔物はいます。でも今は平和な世界になっていますので魔物とも仲良くする世界です。昔は魔王と人類とで大きな戦とかしてたんですけどね。それこそ地球で描かれている勇者物語みたいな世界だったんですが、今はもう魔物とも友好的な世界になりましたね。そのため、バカンス利用でご利用される方が多いんですよ」


「なるほど、平和な世界なんですね」


「そうですね、まあ人類同士のいざこざはありますが、概ね平和な世界です。あーそうですね。地球の方にはポケ〇ンにそっくりな世界と言えば分かりやすいですかね」


「ポケ〇ンですか?」


「はい、あんな感じでモンスターと人類が仲良くやってる世界ですよ」


「なるほど」


うーん、ポケ〇ン+魔法の世界かそれはなんていうか楽しそうだ!

かなりいいんじゃないかドビーズ群青世界。

ワクワクしてきた。


「可愛い魔物いますか?」


「はい!たぁーくさんいますよ!綺麗な青い可愛い魔物をゲットでウハウハライフです!」


「おお~!」


「しかも美味しいものも沢山!」


「おお~!」


「しかもしかも、それが美しい青!」


「おお~?」


「分かってます。食べ物が青いと食欲が湧かないっていうんですよね」


「いや~ははは」


たしかに湧かない。


「大丈夫です。魔法で色変えられるので」


「なるほど、魔法で変えちゃえばいいんですね」


「なんですけど、世界の特徴の青はできれば尊重して欲しいんですけどねー管理側としては」


「ははは、そうですね」


「どうですか!?ドビーズ群青世界いいでしょ?」


「いいですね!行ってみたいです!」


「でしょーお待ちしております!以上で説明を終わります!」


「ありがとうございます!」


「素晴らしい来世を!」


「はい!」



よし、全部回った。ドビーズ群青世界、青いのが気になるけど後は最高じゃないか?

ちょっと魔物と魔法を使って戦うのも興味あったけど、でもポケ〇ンもいいんじゃないか?

ドビーズ群青世界でいいんじゃないか?

いい気がしてきた。

よし、ドビーズ群青世界に決定!!


やったぁー人間で魔法が使える世界だー!!

ヒャッホー!!

やばいニヤニヤが止まらない。

虫さん達に優しくしてて良かった。

あー幸せだ。


とりあえず、天国に行って、親に挨拶してそこで天国のコンテンツを楽しんで、そしてドビーズ群青世界へ転生だ!


~♪


ついつい鼻歌を歌ってしまう。

自分の人生色々あったけど最後になんか幸せになれた。

終わりよければ全て良しっていうし最高だな。


鼻歌を歌って浮かれたら近づく人に気づかなかった。


「ねぇ、あんた」


背後からいきなり声かけられてびっくりした。


「な、なんですか?」


振り返ると綺麗な気の強そうな目が特徴的な女性がいた。


「あんた、チケット一杯持ってるでしょ」


「え、あ、はい」


「余ってるわよね。頂戴」


「え?」


「頂戴って言ってるのよ、あんたのチケット」


どうしよ、綺麗な女性にカツアゲにあってるんだが?

えーとチケットの譲渡は自由で、天国に持っていくことも可能。

うーん、どうしよう。

チケットは推薦してくれた虫さん達からの好意だからあんまり簡単に他人に譲るのも悪い気がするんだよな。


「えっと、確かに多く持ってるけど、転生種族虫ばっかだよ」


「は、虫?」


「うん、虫さん」


「ないわー。虫以外はないの?」


「えっと虫以外は地球ならあるけど」


「見せて」


チケットを渡す。


「猫あるじゃん!あっ犬もある!あー悩むいいなー。これ頂戴」


「えっと、推薦人からの好意だから簡単にあげるの気が引けるんだけど」


「いいじゃん!あっもしかして地球のチケット使う予定?」


「いや、地球のは使う予定はないけど・・・」


「じゃあいいじゃん!頂戴よ!」


えっ、どうしよ。面倒なことになったな。あげちゃう?

まあ持ってても使うことないからあげてもいいと言えばいいんだけど。


「うーん」


「あんた、モテないでしょ」


「な!なんでそんな」


「モテない男のオーラがプンプンするわよ。男ならドーンとプレゼントするところでしょ。だからモテないのよ」


胸が痛い。年齢=彼女いない歴で人生を終わった男には辛い一言だ。泣きそう。


「私みたいな綺麗な女性の人生が救われるのよ。ここは男だったら譲る一択でしょ。これだから童貞は」


さっきまでの幸せ気分が吹っ飛ぶくらいキツイ。なんでいきなりこんなことを言われなくてはいけないんだ。つらたん。


「ははーん、見返りが欲しいってわけね。いいわよ、じゃあ胸でも揉んでみる?」


マジ!?


「ただで貰うのも悪いしね。胸くらいならいいわよ」


どうする?俺?


「でもここで見返りはいらない貰ってくれってさらっと言えたらカッコいいと思うなー」


えっ試されてる?


「どうする?」


どうする俺!どうする俺!胸か矜持か、胸か矜持か。


「かっこいいところ見たいなー」


ぐっ・・・


「いいよ、そのチケットあげる」


「ほんと!やったぁーありがと!お兄さんかっこいいじゃん!ありがと!じゃあね!」


あっ、あっさりどっか行っちゃった。なんかその後進展みたいなのはないんですね。

かっこいいお兄さんと進展したりはないんですね。

そうか、ぐっ。泣きそうだ。


いいや、もうだから女性は苦手なんだ。

くそう、来世ではいい思いしてやる。

くそう。


「すみません」


膝を抱えて落ち込んでたらまた声をかけられた。

優しい雰囲気のおじさまがいた。


「あ、はい、どうしましたか?」


「あの、さっき女性と話している声が聞こえましてチケットが余っていると」


「えっと、一応余ってはいるのですが、お渡しできるのは種族が虫さんのやつしかないんですけど」


「あ、虫でも大丈夫です。あの、科学技術が発展しているSFみたいな世界のチケットはありませんか?」


SFか確かあったな。


「えっと、虫さんでいいなら、この世界とかSFだなーって感じだったんですけど」


「譲っていただけませんか?」


えっと、もう1枚も2枚も関係ないか。


「いいですよ。チケット譲りますので、このチケットで説明受けてみてください。もし、ご希望に沿わないようでしたら返して貰えると助かります」


「ありがとうございます」


丁寧にお辞儀してくれた。良い人だ。

チケットを渡し、ブースの場所を教えてあげると急ぎ足でブースへ向かって行った。

その後、様子を伺ってるとなんかすんごい笑顔で説明聞いてる。

あそこはドラ〇もんの未来の世界っぽい世界だったんだよな。

希望に合ってるっぽい?

説明を受けた後、駆け足で男性がこっち来た。


「ありがとうございます!こんな理想な世界があるなんて!是非、転生したいと思いました。すみません、チケット拝借してもよろしいですか?」


「はい、希望の世界だったみたいで良かったです。あっ、あのお願いがあります」


「なんでしょう。私に叶えられることならなんなりと」


「多分、そのチケット地球にいた虫さんに貰ったチケットなんで、次、虫さんに転生したら虫さんに優しくして貰えますか?」


「はい、大丈夫です。虫さんに優しくあろうと思います」


「はい、それを約束していただけるなら大丈夫です」


「はい、約束します!ありがとうございます!」


また丁寧にお辞儀してくれた。やっぱりこの人は良い人だ。この人だったらいいよね、虫さん。


「あの、良き来世を」


「はい、貴方も良き来世を」


おじさまはニコニコ笑顔で去っていった。


ふぅー疲れた。

人とコミュニケーションするの苦手なんだよな。

終わって良かった。


2枚譲渡したから残り13枚で天国とドビーズ群青の2枚は使うから使わないチケットは11枚かどうしよ。

欲しい人いるかな?

でも虫さん不人気だからな。

いる?って言って虫かよ、ぺっみたいなリアクションされたら心折れる。

うーん、周りを見渡す。

特にチケットくださいと寄ってくる人はいない。

うーん、別に無理してチケット裁く必要ないかな。

天国に持っていこう。

そうしよう。


あれ?ドビーズ群青ってチケット持ち越しありなのかな?

ドビーズ群青の青いブースに戻る。


「あのお姉さん」


「あっ、さっきの方ですね。どうしました?」


「あの質問なんですけど、ドビーズ群青世界はチケットの持ち越し有りですか?」


「はい、ありですよー今のチケットはちゃんと使えますので大事にしてくださいね」


「あっそうなんですね。ありがとうございます」


「はい、また何かあったら聞きに来てくださいね」


「ありがとうございます」


うーん、地球のチケット譲ったのは失敗だったかな。

ドビーズ群青行った後に、地球で猫とか有りだったなぁ。

返してとか言っても無理だよね。

うん、またあの人と話して揉めるの嫌だわ。

あのチケットは諦めよう。


会場を見渡すと、チケットの交換をしませんかと声を上げている人がいて、その人の周りに人だかりになってて、多分あそこがチケット交換会場になってる。


うーん、どうする?チケット交換会場に行って交換してみる?

でも自分は虫さん有り派なんだよな。

さっきのおじさまじゃないけど世界の観光をするだけなら虫さん有りな気がするんだよな。

いいや、やっぱこれ持った状態で天国行こう。


確か、転生先が決まったら正面奥にあるテントに行くんだったか。

テントに向かって歩いて行くとテントの近くにいる小さな男の子とそのお母さん?の声が聞こえた。


「すみません、誰かこの子にチケットを譲ってくれませんか?お願いします!」


その声を聞いて、皆、気まずそうにそっぽを向いている。

あーあの子チケットないのか。


「お前が譲ればいいだろ、他人に頼るなよ」


テントの前の列に並んでいる男性が言った。


「親なら自分の子にチケット譲ればいいだろ」


「そうよ、そうしなさいよ」


おば様も声を上げる。


「私はチケットを持ってないんです。誰かお願いします!」


「自業自得だろ」


声をかけてみるか。


「あの」


「お願いします!チケットを譲ってください」


「はい、その、虫への転生のチケットなら余ってるんですけど虫さんでも大丈夫ですか?」


「虫ですか?」


「虫です」


お母さんは悩んでしまった。


「えっと、虫さん結構いいと思うんですよ、個人的には。その世界を楽しむには虫さんで自由に旅するとか。どうでしょう」


「寄生虫にはお似合いだな」


心無い言葉が飛ぶ。この言葉を発した男を見るとさっと顔を逸らされた。


「えっと、11枚虫さんのチケットあるので、お母さんも良ければお譲りしますよ」


「お母さん僕虫さん大好きだよ?」


「うん、そうね。でも出来れば人間が良かったんですけど」


「えっと、そうですよね。すみません、人間のチケットは自分で使う予定でお譲りはできません。ごめんなさい」


「いえ・・・」


「お母さんと一緒がいい」


「あっあの同じ場所に行くチケットって二枚持っていたりしませんか?虫でも構いませんので」


「いや、11枚全て違う世界ですね」


「そうですか・・・」


うーん、どうにか出来ないかな。


「あの、あそこでチケット交換していますよね。他の世界で虫さんで転生するチケット持っている人いるかもしれないので声かけて見ます?上手くいけば虫さんで親子揃って同じ世界に転生できるかもしれませんよ」


「はい!お願いできますか。良太、次はお母さんと一緒に虫さんでいい?」


「うん!お母さんと一緒がいい!虫さんも大好き!」


「すみません、お願いしてもいいですか?」


「分かりました。じゃあ一緒に交換してるとこ行きましょうか」


「はい」


交換で群がってるとこに親子を連れて突っ込む。


「すみません、アビス世界で虫への転生のチケットを持っている人いませんか?」


とりあえず、大声で募集してみる。


「アビスで虫いませんかー?」


声をかけて回ってみる。

そうすると一人のおっさんが手を挙げた。


「おっ!アビスで虫ならあるぞ!」


「本当ですか!?」


「ああ、チケットを確認してみてくれ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

世界名:アビス

種族:虫

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


確かに、アビスで虫だ。


「すみません、このチケットと他の世界の虫チケットの交換して貰えませんか?」


「あーなんだ、虫かぁ」


「虫ですけど、他の世界ですよ。魔法世界とかありますけどどうです?」


「おっ魔法か!」


「魔法です魔法、確認したら虫でも魔法使えるらしいですよ」


「まじか!虫で魔法使って無双か、かっこいいかもしれないな。よっしゃ交換だ」


「ありがとうございます。これです」


おっさんに魔法世界の虫さんチケットを渡す。


「これ本当に魔法世界なんだよな」


「疑うようならブースで確認してみてください」


「そうだな、よし信じるぜ!兄さんはなんか良い人っぽいオーラがあるからな」


そんなオーラが?初めて言われた。


「よーし、魔法を使う虫になるぞ俺はー」


おっさんは意気揚々とブースへ行った。


「よし、アビスの虫ゲット。あのこれでアビスの虫チケットが2枚になったので同じ世界で転生できますよ」


「あ、ありがとうございます!すみません、一つお聞きしてもいいですか?」


「ん?なんですか?」


「どうして、そのアビスってとこのチケットだったんでしょうか?」


「あーアビスは細かく転生先が選べるんですよ」


「細かくですか?」


「そうです。だからまたお子さんと親子になることもできるんじゃないかなって」


「そうなんですね!」


「詳しくはブースで聞いてみてください」


「わかりました。ありがとうございます!」


チケットを2枚渡すと深々とお辞儀された。うん、この人は良い人だ。


「お母さん行こう!」


少年がお母さんの手を取って教えたブースへ引っ張っていく。

お母さんも少年も笑顔だ。

うん、良いことしたな。

よし、OK。テントへ行こう。


テントへ行くと長蛇の列になっていた。

しょうがない。また待つか。


しばらく待つとようやく自分の番が来た。

テントの中に入ると椅子に座るように促された。


「はい、次の転生先のチケットを提示してください」


「はい、この天国のチケットです」


チケットを係員のおねえさんに渡す。


「はい、確認しました。天国へのご転生希望ですね。問題ありません。天国への転生ですので記憶はそのままでチケットも保持したままで構いません。体の年齢はいくつにしましょうか?」


体の年齢か、今が32歳でお腹がちょっとポコッとしてきてしまったから若い頃がいいな。

うーん、一番筋肉があった高校生だったときがいいかな?


「じゃあ、18歳でいいですか?」


「かしこまりました。では18歳だったときの体でのご転生にしますね」


「お願いします」


「では、最後に人生の終わりに推薦状を書くことができます。貴方が推薦したい人はいますか?人間で地球の推薦状が書けますよ」


あっ、推薦状書けるんだ。


「何枚書けるんですか?」


「推薦状を貰った数+1枚推薦状を書くことができます。佐藤さんの場合は推薦状を10148枚貰っていますので、10149枚推薦状を書くことができます」


うおっ、なんか凄い数来た。

でもそんなに推薦状書きたい相手いないなぁ。


「あの、推薦状を貰った相手に推薦状を送ることって出来ますか?」


「はい、可能ですよ。皆さん推薦状を送りあうことが良くありますよ」


「あっ、じゃあ10148枚全て送り返してもいいですか?」


「はい、問題ございません。何かメッセージを載せますか?」


「あの『推薦状ありがとうございました。よろしければ地球で人間もいいですよ』とメッセージを添えていただけますか?」


「かしこまりました。ではそのメッセージで10148枚全て返信させていただきます。プラス1枚はどなたに送りますか?」


「えっと、小学校からの友達で八木香苗っているんですけど、八木香苗宛てに送れますか?」


係員のお姉さんが手元でタブレットを操作する。


「この香苗さんで間違いないですか?」


タブレットに香苗の顔が映る。


「はい、この香苗です。メッセージは『自分と友達になってくれてありがとう』と送ってください」


「かしこまりました。ではこれで推薦状は全ての枠を使いました。では、転生に移ります。今から転生をしても問題ございませんか?」


えっ、もう転生なのか、早いな。


「あっはい、大丈夫です」


お姉さんが立ち上がり後ろへ行ったかと思うと一つの水晶を持ってきた。


「では、この推奨に手を置いてください。それで転生がされます」


「えっと、水晶に手を置くだけですか」


「はい、水晶に手を置くだけです。大丈夫ですよ。痛くも痒くもないので、あっという間に終わります」


こわっ、これちょっと怖いな。

ふぅ、まあいいか。よし。


「こうですか」


水晶に手を置く。そうするといきなり視界が真っ白になった。

真っ白な視界で体が動かない。

なんかフワフワと浮かんでいる感覚がする。

温かく気持ちいい。

寝てしまいそうだ。

真っ白な視界が段々と明確になっていく。

そうすると目の前に現れたのは雲だった。

地面が雲になっていた。

そして、雲の上に雲で出来た建造物?らしきものが沢山建っている。

とりあえず、ここが天国らしい。

なぜなら、目の前に『ようこそ、天国へ!!』と書かれたゲートがあるからだ。


「ここが天国なのか」


「こんにちわー」


「おおっ天使だ!」


背中に羽が生えたザッ天使という容姿の人物が飛びながら声をかけてきた。


「はいー僕は天使ですよー。ウェルカム天国!いぇーい」


とりあえずハイタッチを求められたのでハイタッチしておく。


「いぇーい?」


「佐藤大輔さんですよね?」


「あっはいそうです」


「ご両親からメッセージを頂いてます」


「メッセージですか?」


「読み上げていいですか?」


「お願いします」


『あんた、死ぬの早過ぎよこの親不幸もん!あれほど食生活には気を付けなさいって言ってたのに毎日毎日コンビニコンビニ牛丼牛丼、それは早死にするわよ、このおバカ!まああんたを追い込んだのはあの糞な会社だってのは分かってるわ。とりあえず会社の社長とあんたの直属の上司宛てに地獄への推薦状書いといたから、あんたはもうそんなくそったれのことなんか忘れて天国を楽しみなさい。私たちは一足先に転生することにしたから、お父さんと一緒にロマンスすることにしたの。あんた、天国でいい人見つけてカップル転生しなさい。じゃあ次の人生は幸せにやりなさいよ。幸せになりなさい。じゃあ行くわ、ばーい』


「お袋・・・」


「メッセージは以上でーす。お母さんたちはもう転生されたので、これからどうします?」


どうするって久しぶりにお袋たちに挨拶でもするかって天国寄っただけだからなぁ。いきなり目的がなくなってしまった。


それにしても社長と上司宛てに地獄への推薦状か、その手があったか。まあお袋が送ってくれたならそれはいっか。


おとんと相変わらず仲が良いようで。

はぁ、どうしよ。


「とりあえず、天国を観光したいと思います」


「了解でーす!天国を観光するならお金があった方がいいですよー」


「お金ですか?今一文も持ってないんですけど・・・」


「余ってるチケットありますよね?」


「えっ、あ、はい。あります」


「天国ではチケットが高値で売り買いされています。あそこでチケットを換金できるので不要なチケットを換金してお金にするのをおすすめしまーす!なお、天国から他の場所に転生するとお金は消失するので必要な分だけ換金するのがいいと思いまーす」


チケット換金できるのか。


「分かりました。換金してみます」


「チケット換金以外では普通にお仕事すればお金が手に入ります。地球と同じでーす。ここではお腹は減りません。他人の体に触れることはできません。寿命はありません。病気にもなりません。天国を楽しんでくださーい」


「分かりました。ありがとうございます」


「はい!ではでは僕は次のお客様のところへGoしますので、ぐっばい!」


「はい、ぐっばいです」


ふよふよと空を泳ぎながらどこかへ行ってしまった。

とりあえず換金所行くか。

他人の体に触れることができないから、セックスができないってことか納得。

ふぅ、お袋が言ってたみたいに彼女見つける?

うーん、彼女ができるビジョンが浮かばない。

彼女は保留!

とりあえず、換金して漫画だ。

地球で作者の先生が亡くなってしまって未完で終わった作品の続きがあるかどうか、それが問題だ。

それを楽しんだら観光で見て回って飽きたら転生しよう。

よし、まずは換金所。


「すみませーん、ここでチケットが換金できるって聞いたんですけど」


「なんじゃ、換金希望か。うむうむ、換金できるのじゃ。どのチケットを換金するんじゃ」


おっ、ロリのじゃ美少女だ。二次元にしか存在しないとされているロリのじゃがいるとは流石天国。

換金は地球と似ている世界で虫さんになれるこれでいいかな?


「これを換金したいんですけどいくらになります?」


「うむうむ、この世界は中々人気があるからのう。虫だと言え結構高値がつくぞ。100万天貨だな」


「えっと、通貨の価値って地球と同じだったり?」


「そうじゃの、大体同じじゃ。100万もあれば贅沢しなければ天国だったら3年は余裕でいけるのじゃ」


「なるほど、じゃあそれでお願いします」


「うむうむ、即決できる男は良い男なのじゃ。ではこれが100万天貨じゃ」


金貨が100枚目の前に積まれる。

金貨一枚1万かなるほど。


「ありがとうございます」


「うむ、アイテムボックスの説明は受けたかの?」


「アイテムボックス?」


「うむ、アイテムボックスじゃ。アイテムボックスと言ってみるのじゃ」


『アイテムボックス』


目の前に透明なウインドウが表示された。なんだこれ?

文字が書いてある。


----------------------------------------------

アイテムボックス

なし

-----------------------------------------------


「それがアイテムボックスのウィンドウじゃ。そのウィンドウに保管したいものを突っ込めばいいのじゃ」


こういうことか?透明なウィンドウに金貨を1枚押し込んでみる。

そうすると金貨は手から消えて代わりにウィンドウの表示が変わった。


----------------------------------------------

アイテムボックス

天貨:10,000

-----------------------------------------------


「どうじゃ?格納されたじゃろ?」


「はい、これ取り出すときはどうすればいいんですか?」


「うむ、アイテムボックスのウィンドウに手を突っ込んで取り出したいものを頭に思い浮かべると出てくるのじゃ」


ウィンドウに手を入れて天貨1万と頭の中で思い浮かべる。

そうするといつの間にか手に金貨が握られていた。


「できたじゃろ?」


「はい、できました」


「天貨やチケットなどの貴重品は念のためアイテムボックスに入れることを推奨してるのじゃ。天国は平和じゃが泥棒と詐欺はあるからのう。気を付けるんじゃ」


「わかりました。ありがとうございます」


「うむうむ、いいのじゃ。じゃあ、天国を楽しむのじゃ!」


「はい!」


ロリのじゃ美少女と別れて、とりあえず手持ちのチケットと金貨を全てアイテムボックスに入れた。


----------------------------------------------

アイテムボックス

天貨:1,000,000

チケット:9

-----------------------------------------------


チケットは残り9枚。とりあえず100万天貨あるからどうにかなるかな。

換金所を過ぎると、雲でできたお店が立ち並ぶ商店街?のようなところに出た。


「お兄さん来たばっかでしょ。お金持ってる?持ってるようならうちで買い物していきなよ」


角刈りの体が半透明のお兄さんに声を掛けられた。


「えっと何を売ってるんです?」


「うちは家を売ってるのさ、不動産屋だな。天国でこれから生活するなら拠点は必要だろ?どうだい?うちで家を買わないかい?勿論賃貸もあるぜ」


あー確かに寝る場所は必要か。そういえば寝れるよね?眠くならないとは聞いてないから寝れるはず。なら寝る場所は必要だな。


「えっとそんなにお金ある訳じゃないから賃貸がいいんですけど安くていい場所あります?」


「あるぜー。色んな家を紹介できるぜ!ここではなんだから事務所に来てくれよ」


「あっ、はい、お願いします」


角刈りのお兄さんについて行く、お兄さんが立ってた場所にあったお店に入るものだと思ったら大分歩くみたいだ。どこに行くんだろ?


結構歩いたな、雲の切れ間みたいなところに来た。

雲の下が見える。怖い。高いところ怖いんだが。落ちたら死ぬぞこれ。


「お兄さん。天国では人に触れられないって知ってるかい?」


「あっ、はい、説明受けました」


「いや、それ正確じゃないんだよ」


「正確じゃない?」


「この道具を使うと具現化することができるんだよ」


角刈りお兄さんが一つの指輪を見せてくれる。

お兄さんが指輪を嵌めるとお兄さんの半透明だった体がくっきり映るようになった。


「ほら、体が具現化しただろ?」


「あっ、はい」


「ほら」


お兄さんが懐からもう一つの指輪を取り出すとポンと投げ渡してきた。

思わず受け取る。


「着けてみなよ」


「あ、はい」


とりあえず着けてみる。右の人さじ指でいいか。

指輪は不思議なことに指に嵌めると自然にサイズが調整されてピタッと指に吸い付いた。

体を見るとさっきまで半透明だったのが地球にいたころと同じように見える。


「これで具現化したんですか?」


「そうだよ」


というなり、お兄さんが突進してきた。

余りにも不意打ちで反応できず吹っ飛ばされた。

倒れた自分にお兄さんが馬なりに乗ってくる。

マウントを取られた。

事態に頭が追い付かない。

咄嗟に頭を腕でかばうと腕の上から角刈りお兄さんのパンチが降ってくる。


「おらおら、死にたくなければ金を置いてけ!」


頭が余りの展開に追いつかない。


「おらおら、死にたくねえだろ。金を出せって言ってんだよ」


ガードしている腕が痛い。どうすればいいんだ?

指輪を外せばいいのか!

指輪を外そうと腕を動かしたら頭に一発強烈なものを食らってしまって、目がチカチカする。

頭をかばうために腕を元に戻すしかなかった。


「おらおらおらおら」


どうすればいいんだ。腕が痛い。どうすればいいんだ。

テンパった頭で困っていると。


「ぷぎゃらぼきゃああああああああ」


ふっと体の上に圧し掛かっていた角刈りの重さがなくなった。

見ると綺麗な銀髪のお姉さんが大きなハンマーを振りぬいていた。


「ふう、そこの指輪を外せ」


銀髪の綺麗なお姉さんに声をかけられた。なんか幸せ。


「おい、聞いているのか?指輪を外せと言ったんだ」


「は、はい」


慌てて指輪を外すと体がまた半透明に戻った。


「ふう、指輪を寄越せ。それはご禁制の品だ。保持だけでも罪になる」


「わ、わかりました」


即座にお姉さんに指輪を渡した。


「おい、天使共、そいつを連れてけ」


「「「はーい」」」


背中に羽の生えた少年たちが角刈りを持ち上げるとフヨフヨと空を飛びながらどこかに行ってしまった。


「捜査協力感謝する。奴は詐欺、強盗の常習犯なんだが、中々尻尾を掴めず今回現行犯で捕まえるため泳がしておいたんだ。痛い思いをさせてすまない。天国の治安を守るには仕方なかったんだ」


「いえいえ、こうして助けて貰いましたし大丈夫ですよ。お姉さんは?」


「名乗り忘れていたな。私は天国治安部隊のカタリーナという」


カタリーナと名乗ったお姉さんは肩にどでかいハンマーを担ぎ、堂々とした立ち住まいでこちらを向いた。

でかい!

白の衣で包まれているが、どこがとは言わないがでかい!

うほーすげーエロい!

白の衣が薄く少し透けているのも相まってエロさがヤバイ。

うほー!


と思っていたらカタリーナがさっと空いた片手で胸を隠した。


「お前、そんなに初対面の女性の胸を凝視しているとモテないぞ」


ぐはっ。


「それに天国には悪い奴もいる。入口の立て看板は見なかったのか?天国で路上で知らないものに話しかけられた場合は注意をするようにという看板があったはずだが。そんなにポヤポヤしていると人に騙され使われ悲惨な目にあうぞ」


ぐはっ。心当たりしかない。


「そんなポヤポヤしていると好きな女一人守れないだろ。モテないぞ」


ぐぅ、泣きそうだ。


「もう辞めてください。反省してます」


泣きそうになって項垂れているとお姉さんが困った笑顔を浮かべた。


「まあ、それが貴殿の良いところでもあるのだろう。胸を見るのは頂けないが男だからな、仕方ない面もあるか。少々言い過ぎた。すまぬ、貴殿を思ってのことだ許してくれ」


「大丈夫です。ありがとうございます」


「うむ、では私は行く。あいつから余罪を吐かせないといけないからな。貴殿、名は?」


「佐藤大輔です」


「佐藤殿か、何か困ったことがあったら詰所に来るといい。相談に乗る」


「ありがとうございます」


「では、またな。色々あったとは思うが基本的に天国は平和で良いところだ。楽しんでくれ」


「わかりました。ありがとうございました」


握手を求められたので握手を返すとカタリーナさんは颯爽と去って行った。

女性の手を握ったのは何年ぶりだろうか。

色々あったけど終わりよければ全てよし。

ラッキー!


で?ここどこだろうか?雲の切れ間があって怖いんだけど。

とりあえずさっきの商店街に戻ろう。


来た道を戻り、なんとか商店街にたどり着くことができた。

えっと、お腹は減らないし、とりあえず寝る場所の確保だな。


「らっしゃーい!天国産のフルーツはいかがかい?他では味わえないフワフワのフルーツが病みつきになるよー」


威勢の良い呼び込みが聞こえる。フワフワのフルーツか気になるな。


「すみません。フワフワのフルーツ食べてみたいんですけど」


「おっ、お兄さん見る目があるねぇ~。美味しいぞ~よし500天貨でフワフワの実一つだ」


お兄さんにマジックボックスから取り出した天貨500を渡す。

マジックボックスから天貨500と願ったら銅貨が5枚出てきた。

銅貨1枚で100天貨らしい。


「ほい、まいど!」


「これ生でかじりついても大丈夫ですか?」


「あーその食い方が一番うめえな」


「ありがとうございます。すみません、少しお聞きしたいんですけど大丈夫ですか?」


「おう、どうした?」


「しばらく滞在するのに寝れる場所を確保したいんですけど、家の仲介をしてくれるお店ってどこにありますか?」


「なるほどな。お兄さんやっぱ来たばっかか。家は無料で貸し出しているアパートもあるが、希望者多数で今は抽選してるから当たるかは運次第だな。お金があるようなら安いアパートが沢山あるから紹介して貰うといい。うちの店から三件隣に不動産屋があるからそこに行きな」


「ありがとうございます。助かりました」


「いやいや、気にすんな。困ったときはお互い様ってな。じゃあ天国を楽しんでくれ」


「はい」


良い人だった。お兄さんに別れを告げて三件隣の不動産屋へ向かう。

フワフワの実は触感がマシュマロで果汁が一噛みすると溢れて味は梨に似てた。

結構美味しい。


不動産屋の前に来た。看板が店の前にどーんと立てかけられている。

読めない文字だと思ったが、ずっと見ていると文字がぐにょぐにょ動いて日本語になる。


『天国不動産』


って書かれている。

謎だ。とりあえず読めたからいいか。


「すみませーん、今大丈夫ですか?家を探してるんですけど」


「はーい、ちょっとお待ちを」


店内は低いカウンターがあり、カウンターの前には椅子があった。

カウンターの奥からお嬢さんがパタパタと駆け足で現れる。


「はい!お家をお探しですか?まずは椅子へどうぞ!」


「はい、家を探しておりまして」


椅子に座りながらいう。


「どのようなお家をお探しですか?お客様もしかして天国は初めてですか?」


「はい、天国初心者です」


「では、天国へ何を求めていらっしゃいましたか?訪問の目的を聞き、最適な物件をご提案しようと思います」


天国への訪問目的か、親への挨拶はなくなったし。


「観光と漫画を読みに来ました」


「観光と漫画ですね。漫画は沢山読みたい感じですか?」


「あっ、はい。地球で未完で終わってしまった名作の続きが読めないかなぁって」


「大丈夫ですよ。大抵未完で終わった作品は作者様に無理を言ってでも天国で完結まで描いて貰っていますから」


「ほんとですか!?」


「はい!ばっちりです!」


よしっ!天国来て良かった。


「なるほど、漫画と観光ですか。ご予算と滞在期間はどれくらいでしょうか?」


「はい、予算は安ければ安いほど助かります。余り家にはこだわりないので、ただお風呂とトイレは別だと嬉しいです。滞在期間は目ぼしい有名観光地を巡って名作漫画を読み終わるまでで考えています」


「なるほど・・・ですと、余裕を見て3年くらいで有名観光地と漫画読了は出来そうですね」


3年か以外と短いな。


「であれば3年で大丈夫です」


「3年滞在でできるだけお安く、過去の名作を読める。風呂トイレ別ですと、漫画喫茶に住むのが良いかもしれませんね」


「漫画喫茶ですか?」


「はい、天国には漫画喫茶が複数個所あるんですが、住む目的で部屋を貸し出している漫画喫茶もあるんですよ」


「へぇ~そんな漫画喫茶があるんですね」


「はい、ご予算に余裕があるようでしたらグレードの高い漫画喫茶もご紹介できるのですが」


「えっと、3年で100万で過ごしたいと思っているんですけど無理ですかね?」


「いえいえ、100万もあれば天国では3年は特段贅沢をしなければ問題ないですよ。であれば年間契約で1年20万で住める漫画喫茶があるのですがどうでしょうか?3年で60万になります」


「あ、はい、値段的には問題ないです。そちらを案内していただけますか?」


「ではお時間あるようでしたら早速内見しに行きましょうか」


「はい、お願いします」


カウンターの横からお姉さんが出てきた。

お姉さんはお店の中にある。空港の金属探知機のゲートみたいなオブジェをカチャカチャいじり始めた。


「設定終わりました。では行きましょう。ゲートを潜ってください」


ゲートに薄い紫色の膜が張られた。

ここを潜るのか。

意を決しゲートを潜る。

そうすると目の前の景色が変わった。

雲で出来たビル群が立ち並ぶ都会のような雰囲気の光景が目の前に広がった。


「はい、お客様、こちらは天国の商業区画になります」


「商業区画ですか?」


「はい、ここでは日々様々なコンテンツが生産されていて、天国の娯楽を支えています」


「なるほど」


「お客様に紹介する漫画喫茶も商業区画にありますので、今から向かいましょう。少し歩きますが大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫です」


商業区画と言われた雲でできた高層ビル群を歩いていくと、段々、背の低い建物が増えてきた。


「はい、こちらになります」


案内されたビルは同じく雲で出来ており、真っ白で看板に『漫画喫茶こはだ』と書かれている。


「入りましょう!」


中に入ると広い。外から見たときに想像した広さの3倍はある気がする広々としたフロアに所狭しと漫画がずらっと並んでいる。


「こーちゃんお客さんを連れてきたよー」


不動産屋のお姉さんが声をかけると、奥から人の良さそうなガタイの良いお兄さんがのっそり出てきた。


「んだ、お客様だべ?」


「そうそう、お客様。内見したいの空き部屋を見せて」


「わかったべ。こっち来てくれだ」


お兄さんが漫画置いてある通路を進むとエレベータがあった。

エレベータに乗って4階のボタンを押すとエレベータが上がっていく。

あれ?4階までこのビルあったのか外見からすると3階建てに見えたんだけどエレベータには10階までのボタンがあった。

チンという音と共にエレベータが開くと、通路に扉が等間隔に設置されており、普通のマンションの廊下のように見えた。


「ここが今の空き部屋だべ。最近入居者がいなくなって空いただ」


お兄さんが扉を開くとなんてことはない地球でもよく見かけるワンルームの部屋があった。

風呂とトイレがあり、キッチンもある。

収納も結構あり、過ごしやすそうだ。

ベットもお布団もあり、もうすぐにでも生活できそうだった。


「佐藤様どうですか?」


「あっ、はい、かなりいいですね。これで年間20万でいいですか?」


「んだ、年間20万でいいだべ。漫画好きに悪い人はいないだぁ」


うん、このお兄さんは凄い良い人っぽい。

ここにしよう。


「ここにします」


「んだんだ、歓迎するだ。漫画は1階から3階までにあるだ。ドリンクはフリードリンク制だから自由に飲んでいいだ。漫画は借りたら部屋に持って行ってもいいだ。ただ読み終わったらすぐに返して欲しいだ。次のお客様が読むだ」


「わかりました」


「ではここで書類にサインして頂いても?」


「はい、大丈夫です」


不動産屋のお姉さんがすっと出してきた書類にサインする。


「佐藤様、3年の代金を今ここで前払いで支払ってしまいますか?」


「あっ、はい、そうしたいです」


「ではこちらに60万天貨ください」


アイテムボックスから60万天貨を支払った。


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アイテムボックス

天貨:400,000

チケット:9

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「はい、これで契約終了です。天国不動産をご利用ありがとうございました!」


「はい、良い部屋が見つかりました。こちらこそありがとうございました」


お姉さんは挨拶をすると部屋を出ていった。

今日からここで住むことになるのか、なんか今日は一日で色々あり過ぎて疲れた。

住む家が決まり落ち着いたら急に睡魔が襲ってきた。


「んだ、おらは基本的に1階にいるだ。何かあったら声をかけてくれだ」


「はい、分かりました。ありがとうございます」


「んだんだ、では天国を楽しんでくれだ」


そういってお兄さんは部屋から出て行った。

今日は怒涛の一日だった。

疲れた。

ベットにダイブして目を瞑る。

あっという間に睡魔に負けて寝てしまった。


朝起きるとすっきりしていた。

体調が良い。頭がすっきりして体も軽い。こう内からやる気が漲ってくる感覚がする。

こんなに気持ちいい朝を迎えられたのはどれくらいぶりだろうか。

うーんと背伸びをして今日の予定を考える。

とりあえず、漫画読もう。


1階、2階、3階の漫画を見て回ったが、自分が知っているタイトルで途中で終わっていたはずの物に続編が出ていて感動した。

かたっぱしから漫画を読んだ。

まずは有名作の途中で終わっていたものを。

次にお勧めとポップが書かれている棚に置いてある漫画を。

面白かった。聞いたことのない作者だったが凄い面白かった。

後は、気になった漫画を片っ端から読みまくった。

朝起きて漫画を読んで寝るの日々。

こんな怠惰な生き方が許されるとは流石天国。

天国という名に嘘はなかった。

1階を制覇。2階を制覇。

所々たまには外を歩くかと周辺を歩いて回って料理屋でご飯を食べたりした。

天国では動物を殺すことが禁止されているらしい。

そのため人工肉という人の手で作られたお肉が出回っていた。

味は悪くない。普通に美味しい。

天国のグルメも楽しみつつ、漫画を堪能する日々。

そして、3階も制覇して新刊が入るまでは読むものがなくなった頃には2年が経っていた。


ふう、読み切った。天国の漫画面白かった。

地球の漫画も面白かったが天国にも天才がいるな。

楽しかった。


今後は1年かけて天国中を観光しようと、書店に行き観光マップを買った。

天国にはキリスト教徒垂涎エリアや仏教徒垂涎エリアなど宗教色が強いエリアがあった。

とりあえず、有名スポットは一通り回ろうと旅に出た。

天国ではゲートが各所に設置されていて、誰でも利用が可能でゲートを潜ってすぐ目的に着くことができた。

そのため、移動には苦労することなく、各所を回ることができた。

個人的には天国一の大きな滝が一番見ごたえがあった。

天から雲の下へ大量の美しい流れがあり、水しぶきで虹がかかり幻想的だった。


そんなこんなで天国観光を気になるところを見つけては行ってを繰り返し、一年が過ぎた。


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アイテムボックス

天貨:54,500

チケット:9

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天貨の残金は5万ちょっとなり、もうそろそろお金が尽きてきた。

ここいらで天国への滞在は終わった方がいいかもしれない。

とりあえず、当初の目的の観光と漫画は思いっきり楽しんだ。

悔いはない。


一応言うと、彼女はできなかった。

そんな出会いはなかった。

まあいい。天国で彼女作ろうと思ってなかったし。

天国で流通しているスマホを買うと色々サイトが覗けて、出会い系のパーティなんかが各所で開かれているらしい。漫画で知った。でもスマホが30万と高かったことと、そこまで天国に滞在するつもりがなかったからスルーした。

いいのだ、次の転生で彼女作るから。

どうせ、ここで彼女できても触れ合えないし、いいのだ。


3年は短いようで長かった。もうすっかり慣れてマイホームとなった部屋を出ていく。

この3年でオーナーのお兄さん、こはださんとは随分仲良くなったし沢山お世話になった。

3年分の感謝を伝えて漫画喫茶を後にする。


行くのは転生課がある建物だ。

天国では寿命がないので自分の足で歩いて転生課へ行き、転生手続きをする。

この3年でこはださんから聞いた話と漫画で仕入れた情報から察するに、天国はもう終わりの世界として一生を過ごす人と次の転生のためにチケットを手に入れるために滞在する人がいる。

チケットは高額で売買されており、様々な世界、様々な種族のチケットがお店で売られている。

この3年で考えていたことを実行する。


転生課の建物に行く前に初めて天国に来たときによった換金屋による。


「こんにちわー」


「なんじゃなんのようかの」


「はい、チケットの換金とここはチケットを買うことも出来ますよね」


「うむ、チケットの販売もしておるのじゃ」


「じゃあ、すみません、このお店の『天国:人間』のお値段を教えて貰えますか?」


「『天国:人間』じゃな。それは在庫がそこそこあるからのぉ、1000万じゃ」


「すみません、このチケット8枚で1000万行きますか?」


次の転生に必要なドビーズ群青以外の虫チケットを渡す。


「うむ、組み合わせにもよるのう。残したいチケットはあるかの?」


「はい、この世界のとこの世界のはちょっと残せたら残したいですね」


SF世界と王道ファンタジー世界のチケットはできれば残したい。


「うむ、その二つが人気でのう。どちらかは手放さないと1000万はいかんのう」


「ではこちらで」


SF世界を手放すことにした。


「じゃあ、この6枚で1000万じゃ」


「はい、大丈夫です。問題ないです。そのお金で『天国:人間』をください」


「うむ、交換じゃな。大丈夫じゃ。ほれ『天国:人間』じゃ」


「ありがとうございます!」


これで保持しているチケットは、ドビーズ群青のチケットと王道ファンタジー(虫)と確か余り特徴のない中世ヨーロッパっぽい世界(虫)と天国(人間)だ。


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アイテムボックス

天貨:54,500

チケット:4

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お礼を言ってロリのじゃ美少女がいる換金屋を後にして、次は転生課がある建物だ。

天国は居心地が良かった。それに今連載中の漫画の続きがまた読みたい。

そのため、天国・人間のチケットがどうしても欲しかった。

なんとか持ってるチケットでどうにかなって良かった。

危うく働くとこだった。危ない危ない。


転生課の建物へはすぐに着いた。

ゲートを潜って一発だ。


白い雲で出来た宮殿のような建物だった。

建物内に入り、順路と書かれた矢印に沿って歩く。


扉を潜るとカウンターがあり、職員がいた。

空いていた一つのカウンターの前に行く。


「こんにちわー。転生したいんですけど」


緑の髪を短く束ねたお姉さんが笑顔で答えてくれる。


「はい、転生希望ですね。チケットはお持ちですか?」


ドビーズ群青世界へのチケットを提示する。


「種族は虫と人間があるようですけど、どちらをご希望ですか?」


「人間でお願いします」


「はい、承りました。現在推薦状が来ていないか確認しますので、お名前を伺ってもよろしいでしょうか」


「佐藤大輔です」


お姉さんがタブレットを操作する。


「はい、確認できました。5680件推薦状が来ています。今チケットを発行しますね」


「あ、はい」


うおっ、なんか凄い推薦状来てた。天国でなんか良い事したかな?


「推薦状にはメッセージが添えられてますね。『推薦状ありがとう。地球で人間やってみたかったんだ』といったメッセージが多いですね」


なるほど、この間お返しで返した虫さん達からまたお返しで推薦状が来たんだな。納得。


「はい、こちらが新たなチケットになります」


12枚のチケットだった。確認していくと手放した世界の虫さんチケットがまた手に入った。変わったものだと異世界で猫さんや牛さんなどがあった。


異世界で猫かいいかもしれない。

アイテムボックスに格納する。


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アイテムボックス

天貨:54,500

チケット:16

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「推薦状をお書きになりますか?地球・人間と天国・人間の推薦状が書けますよ」


今まで経験した世界と種族の推薦状が書けるのか。


「では、推薦状を貰った相手に返信でメッセージは『推薦状またくれてありがとう。天国・人間も楽しんでみて』とお願いします」


「かしこまりました。メッセージを添えて天国・人間の推薦状を送っておきます。プラスで1通推薦状を送れますがいかがしますか?」


そうだったプラス1あったんだった。天国でお世話になった人というと漫画喫茶のオーナーのこはださんだな。こはださんは転生しないみたいだけどチケットがあればお金になるし送っておくか。


「では漫画喫茶こはだのオーナーのこはださんに『天国・人間』をお願いします」


「かしこまりました。手続きは以上です。ドビーズ群青へは今旅立たれますか?」


「はい、お願いします」


お姉さんは奥へと行くと水晶を持ってきた。


「ではこの水晶に手を置いてください。素晴らしい来世を」


「ありがとうございます。では」


手を置く。視界が真っ白になる。フワフワと浮遊感があり、優しく包まれるような温かい感覚。

気持ちいい。

気づくと耳に赤ちゃんの泣き声が聞こえた。


「おぎゃあああ、おぎゃあああ」


「おお!愛しい我が子よ!」


逞しい男性の顔がドアップになる。どうやら泣いているのは自分らしい。

そうか赤ちゃんになっての転生か。


「すまぬ、エリーゼ赤子を連れて行くぞ」


「はい、すぐに返してくださいね」


なんか持ち上げられて男の胸に抱きかかえられる。

家の中にいたようだけど、扉を潜って外へ出た。


「愛しい我が子よ、見えるかこれがドビーズ群青の空だ!」


男性は俺を天高く掲げる。空が近くなった。

空を見て、俺は泣き止んだ。

青い。圧倒的に青い。

地球に比べると澄んだ濃い青で、これは美しい。

この空の元、今後は自分はこの世界で生きていくのか。

ドキドキする。


「我が子、サトーシよ!今これより勇者サトーシの物語が始まるのだ!お前を阻むものは何もない!自由に勇敢にこの世界を謳歌せよ!」


おおおっ、俺の物語が遂に始まる!

イヤッホーテンション上がる!


「おぎゃあああ!」


次は彼女作るぞ!


「おぎゃあああああ!」


名前サトーシかよ!


「おぎゃあああああああああ!」


こうして俺の第三の人生がドビーズ群青で始まる。

ポケ〇ン+魔法の世界ってことだけど、どんな世界なのか。

今から楽しみだ!


「おぎゃあああああああああああああああああああああ!」

お読みいただきありがとうございましたm(_ _)m

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