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6・夜の学校、幼馴染。何も起こらない筈がなく……


「さて、それでは話し合いを始めますわよ」


 佐藤くんの部屋の中、四人で各々の場所に座りながら話を始める。

 私と神宮寺さんが佐藤くんのベッドに。

 佐藤くんは椅子に。

 黒江さんは佐藤くんがバーベルトレーニングの時に使う長い椅子のようなものに座る。佐藤くんがいつも寝そべって筋トレをしているので汗が染みこんでいい匂いがする椅子です。

 たまに忍び込んで吸わせてもらっています。

 最初こそ雑談だったけれど、流石にまずいと思ったのか神宮寺さんが話を切り出してくれた。

 私としてはこのままうやむやになっても構わなかったのですが。


「それでは執事の私が情報を整理しましょう」


「当たり前ですわ、早く話しなさいな」


「お、何だ、黒江は執事だったのか! なるほど、シュッとしてるわけだ」


「またアニメのイメージですか……」


 黒江さんの発言に神宮寺さんが頷く。

 何で黒江さんのような優秀でスタイルがよく顔もいい男性が、神宮寺さんの執事をしているのでしょう……。


「はは、一概にそういうわけではないのですが、私はお嬢様の身辺警護も兼ねているので。それでは話を始めますね」


「さらっと身辺警護っていいましたね。神宮寺さんって本物のお嬢様だったんだ」


「え? いまさら……」


 隣に座っている神宮寺さんががっくりと肩を落とす。

 黒江さんはそれを見て少し微笑んだ。


「今回の騒動は、学内の成績優秀者を狙ってノートを燃やすという非常に悪質なものです。燃えたノートは校内の焼却炉から発見されており、何冊かは燃やされる前の状態で発見されたものもあります」


「おお、その話か。俺も聞いたぞ、酷い奴もいたもんだ」


 佐藤くんも知っていたんですか。

 トレンドは基本的に筋肉の情報しか知らないので少し意外です。

 それほど学校中の噂になっているのでしょう。


「ええ、本当に酷い話ですよ。先生方や生徒会も注意して見回りや焼却炉を燃やす前の確認なども徹底しているそうですが、それでもノートの紛失の話はあるので燃やす以外にも処分方法があるのでしょう。そのような悪質事件の範囲人候補として名前が挙がっているのが、我らが神宮寺京子お嬢様なのです」


 まるで名誉な事のように黒江さんが神宮寺さんを指さした。


「指さないでほしいですわ。どこで失言したか知りませんけれど、何で私がこんな目に……」


「あ、心当たりないんですね」


「お嬢様は息をするように失言しますので」


「言いすぎよ。まったく黒江は、あなたのノートも燃やしてあげましょうか」


「あ、こういうことですか」


「がっはっは! ジョークが下手糞だな!」


 神宮寺さんはうまいこと言ったみたいにどや顔をしている。

 こういう些細な事で誤解されてしまうのでしょう。

 何故か爆笑する佐藤くんがいるせいで、尚更調子に乗った顔をしています。目を瞑ってわざとらしく口角を上げる様は見るに堪える光景です。


「それでまあ失言お嬢様のせいで犯人探しをしているのですが、今回の犯人どうやら足が速いようで。何度か追い込んでも逃げられてしまうのです」


「黒江さんも足速そうですけど、無理なんですか?」


 黒江さんが少しだけ神宮寺さんを見て、再度微笑んだ。


「はい。お嬢様から離れる訳にはいかないので、速度を合わすと追い付けないのです。少しでも離れてしまうとお嬢様は何をしだすかわからないので……」


「信用ないんですね」


「過保護なだけですわ」


 この二人の関係性も非常に気になりますが、今は話に集中しましょう。


「そこで、お二人には私がいる場所まで犯人を追い込んでほしいのです。追い込み漁のようなものですね」


 なるほど。過保護執事の黒江さんと神宮寺さんのコンビは二人のようで戦力としては一人だから、人手を欲して私に声を掛けたという流れのようです。

 でも何で私?


「あの、何で私だけ声かけられたんですか? そういうのは男子の方が向いていると思いますけど」


「それは那智様が全生徒の中で最も優れているからです。成績優秀、才色兼備、文武両道に近い言葉を多くの生徒から聞いたもので、頼りがいのある方だと思ったからです」


「えへへ、そうですか? なら仕方ありませんね。ええ、私は完璧な人間なので困っている人は見過ごせないです!」


「あの子、ちょっと心配なくらいちょろいですわよ……」


「那智は良い奴なんだよ。全て事実だし、少しくらい喜んでも罰は当たらん」


 頼みは断れませんとも。ええ、私は頼りがいがあるので。

 人から褒められたのは久しぶりな気がします。

 黒江さんは良い人です。


「それでは詳しい配置は後でお伝えしますので、今夜の九時に学校に集合ということにしましょう」


 浮かれていて緩み切っていた頬が、一気に元に戻った。

 え、いまなんて言いました?

 夜に学校?

 ナイトスクール?

 あ、佐藤くんの前では洒落になりません。考え停止。


「ん、集合は夜なのか?」


「ええ、夕方は私とお嬢様で何度か追い詰めていますがここ三日ばかりはめっきり見なくなりましたし、それでも被害は出ている一方です。犯人が日中の厳しい管理状態のときに物を処理するとは思えません。手荷物検査なんてされたら一瞬でバレますしね。なので、学校から持ち運ぶなら夜なのです」


「おお! 頭いいな!」


「それほどでも」


 うーん、夜に外出するのならお父さんに許可をとらないといけませんね。

 香苗に口裏合わせてもらいましょうか。


「まあ、お父さんに確認取ってみますけど、駄目だったら行きませんからね……」


「ええ。その時は残念ですが諦めますわ」


 神宮寺さんも頷いたのでひとまず話はまとまった。

 夜に学校集合。

 正直行きたくないです。何か怖いです。


「それじゃあ、夜にまた校門前で集合って事でいいか?」


 佐藤くんの言葉に全員が頷きその場は解散となった。



――――――――――



「あの、お父さん」


「どうしたの。あ、新作のエロ漫画読む?」


「思春期でもそこまでオープンじゃないので大丈夫です。そうではなくて、夜に学校に出かける用事があるのですが……」


「うーんと、浩二くんと?」


「よくわかりましたね。佐藤くんと後二人来ます。肝試し的な遊びです」


「青春だー。行ってらっしゃい。エロ漫画みたいなことにならないようね」


「セクハラでそろそろ訴えますよ。行ってきます」


 まあ、行くことになりますよね。


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