白虎
ーー白い毛で覆われた通常の虎より一回り大きいその虎はその場にいる者を圧倒した。
フウ「メアリーゆっくりこっちに来るんだ‥」
ーー虎はメアリーから目を逸らさず、後退りするメアリーに近づく。だがその時、虎の前にグランが立ちはだかる。そして虎に対し一言。
グラン「お前‥白虎なんだろ?なんで俺たちの前に現れた?」
ーーメアリーとフウの表情は驚きを隠せない。
フウ「この虎が白虎なの?」
グラン「おそらくな‥普通の虎ならもうとっくに襲ってくる。それにこの虎は警戒はしてるが不思議と襲ってくる感じがないんだ。
メアリー「でもめっちゃ怖いんですけど‥」
グラン「多分何か試そうとしてるのかも知れないけど、、でも僕らは何をしたらいいのか分からない。」
ーーその時、森の奥から獣かも怪しい咆哮がフウたちの鼓膜を震わす。
メアリー「きゃあっ!‥何‥今の?」
フウ「とても大きな声で泣いてたね。これはただ事じゃなさそうだね。」
ーーそういうとフウは颯爽と森の奥へ走っていった。
メアリー「あ、フウ行っちゃった‥って!この状況どうするのよ〜!」
ーーグランは白虎の目を見て恐れずに口を開く。
グラン「白虎ついてきてくれないか‥お願いだ‥僕の命はお前にやるからメアリーとフウには手を出さないでくれ。お願いだ‥」
ーー白虎はグランのまっすぐな目を見て何か考えているようだ。続けてグランが話し続ける。
グラン「おそらくさっきの鳴き声はただの動物の声じゃない。フウはちょっと抜けてるところがあって危なっかしいけどこの森のことを俺ら以上に大切にしてる。だから守ってやってほしい。」
ーーすると白虎はグランを前脚で殴りつけた。地面に叩きつけられたグランを白虎は見つめる。その時、グランの脳内に何かが話しかけてきた。
???「腑抜けた奴がいたもんだな。腰抜けにも程がある。友達を助けたい気持ちはあるのにお前は何もしないのか?」
グラン「?!!っ‥ お前‥俺の脳内に‥」
ーーその声の主は白虎であった。
白虎「質問の答えになっていない。お前は友達が危険な目に合うと分かっていて目の前の知らない者に助けを乞うのか?そんな覚悟ならお前もそのフウってヤツも死ぬな。」
グラン「うるせぇ‥」
白虎「まぁどうでもいい。今からそのフウという奴とそこに居る女は殺してやる。」
グラン「!!ダメだ‥」
白虎「いいことを思いついた。お前だけ生かしてやるよ。お前が守りたかったものは全部守りきれずにお前はのうのうと生きてみろ。さぞ楽しいのだろうな〜」
グラン「‥‥舐めやがって‥、調子に乗ってんじゃねぇ!!お前は俺の命に変えても殺す!」
ーーそう言うとグランは地面にあった土を白虎に向かって投げた。怯んだ白虎に対し拳を握りしめて全力で振りかぶった。
白虎「グルぁァア!」
グラン「ざまぁみろ‥まだまだ行くぞ。食いしばれ。」
ーー白虎は素早い速度でグランを翻弄する。さらにグランの周りの地面が不自然に隆起した。グランはすかさず持っていた煙幕を使い、白虎の裏を取り、何度も拳を振るった。しかし白虎も見えないながらも前脚を使って善戦する。そしてグランのパンチが急所当たったその瞬間、白虎は片脚を地面につく。
グラン「よっしゃ!片脚ついた!メアリー早くフウを追え!!」
メアリー「わ、わかった!!必ずきてね!待ってるから!!」
ーーそういうとメアリーはフウを追った。
グラン「このままだったら行けるかも‥」
ーー安堵したその瞬間、白虎の前脚がグランの腹に強烈な一撃を生む。
グラン「ぐはっ!ぐっ‥がはぁっ!」
ーーグランの口から血が流れ出る。
グラン「なんで見えたんだ。」
ーー白虎が脳内に語りかけてくる。
白虎「地面の土の足跡からお前の動きを分析した。そして最初食らったのお前の攻撃後の動きの性質を見ていた。お前は油断しやすい性格でもあるがその分機転も効く奴だとわかった。さぁ次はどう出るんだ?‥」
ーーそういうと白虎はグランを嘲笑うかのように見ている。グランは這いつくばって白虎の方へ近づこうともがく。その様子を見て白虎はゆっくりと近づきグランの脳内へ語りかけた。
白虎「もうお前にできることは何もない。ここで静かに眠れ。お前は結局誰も守ることができなかったな。さらばだ‥」
ーー白虎が無情に吐き捨てた瞬間、白虎の視界が赤く染まった。
白虎「な、なんだ!目がみえん!なんだこれは!」
グラン「血飛沫目眩し成功。ついでにこれも!」
ーーグランは持っていた博士の煙玉を使い、視界を完全に奪った後、宙に向かって大量の石を投げた。
グラン「這いつくばっている時に血を口に溜めておいたんだ。お前をギリギリまで近づかさせるために‥そして厄介な足跡で探知するお前のその特技も靴の裏の石と宙に舞っている石の区別はつかないはず。静かに眠るのはお前の方だ!」
ーーグランは視界を奪われた白虎に対して持っていたロープをありとあらゆる方向から巻き付け、白虎の動きを封じた。
グラン「お前にそっくりそのまま返してやる。さぁ次はどう出るんだ?別に俺はお前を殺す気はないしフウの障害になりそうだったからこうしただけ。しばらくそこで大人しくしておいてくれ。ロープは解きに来るから。」
ーー拘束されている白虎はグランのその言葉を聞いて安堵の表情を浮かべ
落ち着いて地面にうつ伏せた。
白虎「フウとやらに危険が迫っているぞ。早くいけ!」
ーー白虎がそう言うとグランは白虎に持ってきた食べ物を口元に置いて
森の奥へ走って行った。その姿を見届けた後、白虎は自分を縛っているロープを土で作った人形で解かせ、ゆっくりグランの後を追った。
=その頃フウは、=
ーー音の鳴った方向へ走ってきたフウ。その目に写ったのはいかにも怪しい集団10人と1匹の蒼き龍。そしてその集団が持っている青の宝玉が異様な輝きを放つ。
フウ「君たち何をしたんだ。」
集団構成員A「貴様もこの宝玉を奪いにきたのか?これは俺らのものだ。高く売れるぞこれは!でもまずはお前らコイツもアジトに連れて帰るぞ!」
構成員B「そうですね。人質はお金になりますからね!」
構成員C「でもまずは逃げることを考えましょう。」
フウ「宝玉は森の物だから返してよ!」
構成員A「無理って言ったら?」
フウ「多分、ぶっ飛ばしちゃうかな?!」
構成員A「かかってこいや!!」
構成員D「こっちの龍は俺ら七人でどうにかしますんでそっちはお願いします。」
構成員A「ってことだから俺ら3人が相手ってことだ。」
ーーフウの前に3人の構成員が立ちはだかる。
フウ「なんとかしなきゃ‥」
ーーフウは大きな深呼吸をし、覚悟を決める。
説明
白虎:土のエレメントを司る白毛の虎でグランに対しテレパシーで会話できるほどの知能がある。大昔からこの森を守っている。
集団???:青の宝玉を盗もうとしている集団。10人ほどの人数で構成されている???
蒼き龍:恐ろしい雰囲気を出している龍。何かに対し激怒している模様