玄武
ーーヒュンッ!!
ーーバキッ‥
ーー絶望的な音が風の壁という閉鎖的空間に響き渡る。
フウ「あ‥あぁ‥ぁああ‥」
ーーフウの目から光が消える‥
フウ「どうしよ‥てかどうしようもできない‥」
ーーフウは唯一の脱出手段を断たれ、絶望する。
フウ「‥‥」
玄武「ガガァ‥」
ーードスッ、ドスッ
ーー鈍い足音が徐々に近づく。
ーーしかしフウは膝を付き、地面に生える雑草を眺めるばかりで一向に逃げる気配がない。そうしている間にも足音は大きくなる。もう無理だと悟ったフウは風の壁に近づいた。すると壁の外からグランの声が微かだが聞こえた。
グラン「メアリー‥もしかしたらやばいかも知れない。木の影が壁越しだが消えた‥おそらく木が折られたんだと思う。」
メアリー「どうするのよ!あの木からじゃないと越えれないんでしょ?」
グラン「もうメアリーの兄ちゃんに助けを呼ぶしかない。」
メアリー「それはいいけどさ、ここからお兄ちゃんのところまで往復1時間もかかるんだよ?それに‥来たところで助けれるか分からない‥」
グラン「大丈夫‥‥とりあえずフウには今から助けを呼んでくることを伝える。」
メアリー「どうやって?」
ーーするとグランはライトを取り出した。
メアリー「ライトを使って何するの?‥」
グラン「これでモールス信号で伝える。」
メアリー「本当にフウに伝わるの?」
グラン「前にも遊びで使ったことあるから大丈夫。」
メアリー「2人とも相変わらずすごいね‥」
ーー少し驚くメアリーを背にモールス信号で助けを呼ぶと伝えるグラン。
フウ「あ、あれは‥」
ーーフウの目線の先にはモールス信号で「助けを呼ぶから耐えてくれ」の文字が‥
フウ「グラン‥使わないだろとか言ってたくせに‥」
ーーフウの顔に笑みが浮かび上がる。
フウ「そうだね。頑張って耐えてみるね‥」
ーーそう呟くとフウはそばにあった木の枝で玄武に飛び掛かる。
ーー玄武はかまいたちで向かってくるフウに応戦しようとするがフウの軽い身のこなしで躱されてしまう。
ーーフウは玄武の背後まで接近すると、玄武の背中にある噴射口に木の枝を突っ込む。
フウ「これでかまいたちは使えないだろ‥」
玄武「ガァァルッ!」
フウ「これはどうだ!」
ーーフウは地面に落ちているツルを玄武の足に絡めた。
ーー転倒する玄武。
ーーすかさず玄武に近づきツルで固定するフウ。
フウ「あとはこのツルをこう絡めれば‥」
ーーこの時点で玄武は動かない。
ーーフウはもやい結びや亀甲縛りを使って玄武をより固定していく。
フウ「ちょっとここでゆっくりしててね。宝玉は返すから‥」
ーー宝玉が玄武の目に止まったその瞬間!
玄武「ガァァガァァバゴォォオオン!!!」
ーーシュルシュルシュルシュルッ!
ーー爆音と共に物凄いスピードで回転し始める玄武。
フウ「な、なんだ‥」
ーー困惑するフウ。
ーーすると玄武は風の壁に近づき、風の壁と共に駒のように回った。
ーー回り続けている玄武を見ているフウに対して、かまいたちが風の壁から襲いかかる。
フウ「数がっ‥多すぎる‥ぐぁっ‥」
ーー瞬く間にフウの体はかまいたちによって切り刻まれていく。
ーー朦朧としていく意識の中でフウはかまいたちで斬られた大木の中にリスたちがいるのが見えた。
ーーそれと同時にリスたちの方向へと無差別にかまいたちが飛んでいく。
ーーフウは傷だらけの体に最後の鞭を打ち、リスたちの方へと全身全霊で走る。
フウ「ぁぁあああっ!間に合ぇえ!!‥」
ーーその時、宝玉が突如輝きフウの小さな体をその光が纏う。
フウ「ぁあああ!!オラァァァア!!ドリャァアア!!」
ーーフウの渾身パンチから放たれる突風が壁から出たかまいたちを掻き消す。
フウ「緑地を守ってるんだったら自然の命を脅かすなっ!」
ーーフウの姿を見て玄武が壁から離れる。
ーーどぉぉん!地を揺らすその音が巨体を再び地面に触れたことを伝える。
ーードスンっ!ドスンっ!決して早いとは言えない速度でフウに近づく玄武。
フウ「よく分からないけど今のはなんだろう‥僕もエレメントを使えたっことなのかな‥‥。とにかくこのリスたちを逃さないと!」
ーーフウの目の前まできた玄武がフウの宝玉を見つめる。フウは高くなっている心拍数を肌で感じる。
ーー身構えるフウに対し、玄武は「クゥン‥」と可弱い鳴き声を泣いた後、ゆっくりと頭をフウの頬に擦り付けた。
フウ「え?‥」
ーーその瞬間‥
???「炎紋!!」
ーー凄まじい炎が風の壁を吸収し、一帯の静寂さを取り戻す。
???「良く耐えたな。フウ‥」
フウ「ナイト兄ちゃん‥」
メアリー「ちょっとお兄ちゃん!早く火消してよ!森に移ったらどうするの!?」
グラン「フウ‥この精霊って‥」
フウ「あぁ‥もう大丈夫!なんか良く分からないけど急に懐いたんだ。
それと助けを待っている間、風のエレメントが発現したみたい。。」
グラン「本当かよ!俺ら3人、このまま発現せずに人生終わると思ってたからなんか嬉しいよ!てかそんなことよりそのケガ‥」
メアリー「大丈夫?何このケガ!早く治療しないと!」
フウ「ありがとう。でももう終わったよ。痛みはあるけど足じゃないだけマシだよ。」
ナイト「まぁ町まで連れていくから。ほらよ」
ーーそう言うとしゃがんで背中を向けるナイト
ナイト「早くしないと治るものも治らねーぞ。」
フウ「ナイト兄ちゃんありがとう。グラン、メアリーも本当にありがとう。」
フウ「あっ‥最後に忘れてた!」
ーーフウは手に持ってた宝玉を玄武に返す。すると玄武は大きな笑みを浮かべ、フウの頬に頭を擦り付けた。
フウ「もうっ!くすぐったいってば!」
ーー玄武は嬉しそうな顔をした後、ゆっくりと森の奥地へ消えていった。
メアリー「なんか凄く嬉しそうだったね。」
グラン「きっとフウのことを気に入ったんだろーな。」
フウ「だったら嬉しいな‥」
ーーフウは小さく微笑んだ。
ナイト「さぁ早く帰るよ3人とも」
ーーナイトの声と共にフウはナイトの少し大きな背中におぶられ、町へと消えていった。
人物説明
オーガ•ナイト:男 13才 血液型B型 王魔族 9月8日生まれ
趣味 ランニング
好きなもの 辛いもの
•炎のエレメントを扱うメアリーの兄で現在、煌国の軍人になる為、素養試験を受けている。エレメントを活かし、様々な問題を解決する優秀な人物。周りからの信頼も厚く、生まれ育った場所では住民にかなりの期待をされている。
フウ:玄武との戦いで風のエレメントを発言した。本編の主人公。性格は呑気
グラン:フウの幼馴染でフウをサポートしている。3人の中で1番頭が良く、運動能力もフウに引けを取らない。
性格は冷静
メアリー:フウの幼馴染でいつもフウとグランについていき冒険している。兄のナイトとは家では喧嘩ばかりしている。性格は臆病