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はじまり

よくある悪役令嬢が断罪エンド回避のため、ヒーロー(次期公爵)とヒロイン伯爵令嬢から離れようとする。

でもなぜか二人とも執着してきて!?

「ローゼ、お前の婚約者、ドルトムント公爵令息ディートリヒ殿だ。」

銀髪にアイスブルーの瞳を瞬かせ、ローゼマリー侯爵令嬢は遂にこの日が来たことに動揺し、そして決意を新たにした。



ローゼマリーが前世の記憶を思い出したのは5歳の時である。流行り風邪に罹患し、熱にうなされていた時、夢でローゼマリーは橋本薫という18歳の大学生だった。

友人に勧められたウェブ小説、「真実の愛は」を昨日から読み進めており、大学の帰りにバスを待っている間にちょうど読み終わったところだった。その時、トラックがバス停に突っ込んできた。そしてそこで目を覚ましたのである。

つまり前世の記憶を思い出したわけだ。


「これが、私?」

解熱し、ベッドから飛び降りて、鏡台の鏡を見て驚いた。なんと自分の容姿は「真実の愛は」の悪役令嬢、ローゼマリーそのものだったのである。

「髪もツヤツヤの銀髪、目も青、しかも超絶美少女なんだけど…。」

頬に手をあてて小首を傾げてみる。それだけの仕草がなかなか様になる。


銀髪にアイスブルーの冷たい瞳。橋本薫も可愛い顔立ちで、そこそこモテたのだがローゼマリーの非の打ち所のない美しさは見慣れないものであった。

どう見ても部屋の内装も橋本薫の部屋では無い。中世のような雰囲気の豪華な部屋だ。


解熱してからの自己認識は橋本薫にローゼマリーの記憶を持ったようなものだった。


「これは…いわゆる転生ってやつ…?」

ウェブ小説で転生ものをたまに読んでいたが、まさか自分の身にふりかかるとは…と信じられない気持ちと同時に、ひとつ恐ろしい事実が気になる。

仮に本当に自分がローゼマリーに転生してしまったのであれば、ローゼマリーは18歳の誕生日に断罪、処刑される予定なのである。








「お嬢様、今日は大切な日ですから、アイスブルーのシフォンドレスにしましょう。」

ローゼマリー6歳の誕生日である今日は「真実の愛は」のヒーローであるディートリヒと婚約する日だ。

レディスメイドのミアがローゼマリーの瞳の色に合わせたドレスを準備してくれる。

「そうね、そのドレスにしましょう。」

ヒーローと婚約することは処刑に近づくようで気乗りはしないが、家同士の繋がりである婚約を避けることは出来ないだろう。



「初めまして。レーゼンハイン侯爵家のローゼマリーにございます。」

遂にこの日が来てしまった。動揺を隠し、カーテシーを侯爵令嬢らしく美しい所作でこなす。


「ドルトムント公爵家のディートリヒだ。」


(さすが、ヒーローだけあって美少年ね。)


黒髪碧眼のディートリヒもまたヒーローらしく美しい少年だった。

原作ではローゼマリーはこの日ディートリヒに、恋に落ちることになるのだが


(流石に21歳で6歳の男の子に恋に落ちるってことはないわ。)


原作のローゼマリーはその恋心故、ディートリヒに高飛車な態度をとり、逆に嫌われていく。高飛車といっても侯爵令嬢としては不自然なものではなかったが、ディートリヒの好みではなかったようだ。

(そして16歳で王立学院に入学した2人は、本物のヒロイン、伯爵令嬢メアリと出会うのよね。そこでディートリヒとメアリは恋に落ちるの。)

メアリは伯爵令嬢だが伯爵の庶子で庶民育ちなのだ。15歳で伯爵家に引き取られ、行儀見習いも兼ねて16歳で王立に入学する。庶民育ち故の貴族令嬢らしからぬ天真爛漫なメアリに恋に落ちるディートリヒ。

ローゼマリーはディートリヒの恋心にいち早く気づき、庶民育ちのくせにとメアリをいじめ抜く。そして王立学院卒業間近の18歳のときに、メアリに毒を盛るという犯罪行為をディートリヒに暴かれ、ローゼマリーは処刑される。それが原作の流れである。


(おー怖。私は処刑だけは絶対嫌よ。ディートリヒはメアリにあげるから、処刑だけは勘弁して。)


ディートリヒは最終的にメアリにあげるとしても、特にディートリヒに嫌われる必要もないだろう。

ディートリヒともメアリーとも仲良くやり、2人の恋を応援すればいいよね?

そう考えたローゼマリーはこの日からディートリヒと友情関係を築く事にする。


「ローゼって呼んで。同い年だし、仲良くしましょ。」

にっこり笑ってディートリヒを見つめるが、ディートリヒの反応は薄く、視線を逸らされた。

(何よ、原作通りローゼマリーとは仲良くしたくないわけね。)

ディートリヒの目元が僅かに赤くなっていることにローゼマリーは気づかなかった。

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