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神生紀  作者: 岩崎秀次郎
序章
1/2

この物語は私が何十年と温めてきたものです。

既に、作品化する事を諦めていましたが、ある天啓に近い偶然が重なり、執筆してみました。

皆様に一読して頂けるだけで、幸いです。

『八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を』


 素敵な歌ですね。愛おしい妻を守りぬく強い意思を感じます。


 どのような方が、歌われたと思いますか?


 スサノオノミコトと言う一柱の神が、妻のイナダヒメノミコトを娶った際に歌ったものです。


 ヤマタノオロチの贄にされてしまうイナダヒメノミコトに一目惚れしてしまったスサノオノミコトは、その様な事はさせてなるものかと、怒りを覚えました。

 スサノオノミコトはイナダヒメノミコトを八重垣に守らせた宮に待たせて、単身でヤマタノオロチの征伐に向かいました。

 イナダヒメノミコトは、自らが贄である為、スサノオノミコトと共に戦う事はできません。スサノオノミコトを信じて待つしかないのです。

 ヤマタノオロチの恐ろしさはイナダヒメノミコトの身に沁みております。

 如何に勇猛果敢なスサノオノミコトであっても、無事に済まないのではないかと言う心配と、自分の為にその様な危険な行為をさせて申し訳けないと言う気持ちから、宮にある鏡の様な池にスサノオノミコトの無事を祈り、そして、最高のお迎えをする為、笑顔の練習を行っていました。


 イナダヒメノミコトが何時の様に祈りを捧げていると、太陽が沈む方向の空に幾重にも重なった黒い雲と雷が落ちているのが分りました。


「オロチと…」


 スサノオノミコトとヤマタノオロチが今、正に戦っていると悟ったイナダヒメノミコトは必死に祈りました。


「スサノオノ様……」


 イナダヒメノミコトは、それ以上言葉にできません。知らず、身体が震えてしまい、立ち上がる事もできなくなったのです。


「スサノオノ様が居なくなってしまったら、私は生けていけない……」


 オロチに食われてしまう恐怖よりも、スサノオノミコトを失う恐怖が強い事に気付いたイナダヒメノミコトは、初めてスサノオノミコトを心から愛しているのだと自覚しました。


「スサノオノ様は命を掛けて戦われている。私はスサノオノ様を信じて待つのみ」


 肚が座ったイナダヒメノミコトは、鏡の池に一匹のイモリがいる事に気付きました。

 イモリはイナダヒメノミコトの顔を見つめた後、池の底に去って行きました。その時、イナダヒメノミコトは、スサノオノミコトの勝利を確信します。そして、勝利の宴の準備をする為、立ち上がりました。


 練習した最高の笑顔と共に……

 

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