捌
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あれから、どれくらいたったのだろうか………
体が動かない。わたし……死んだのかな………?
澪菜は川に落ちたまでは覚えていた。しかしそれ以上は覚えていない。目を開けようとも、開かないし、体を動かそうとも、指一本動かない。
死ぬって………こういうことなのかな?
不安に押し潰されそうになった時、ふわっと額に手が触れた。
「、、、温かい」ポツリと呟く。
「私のかぐや。お目覚めですかな?」
低音の心地よい声が耳に響いた。
男の人の声。涼とはまた一味違う、落ち着いた大人な声。
そして髪をさらっと撫でる、大きな手。
――誰なの――?―
「死神さん?」
「死神ではないよ。」
クスクス笑いながら優しく話し掛ける。
穏やかな口調が、澪菜の恐怖心を和らげていた。
「ほらゆっくり目を開けてごらんなさい」
言われるが間々に目を開けてみると、さっきまで開かなかったのが嘘の様にすんなりと開いた。金縛りが解ける様な感覚と供に、澪菜はゆっくりと目を開く。
「お目ざめかな?かぐや」
目の前にいたのは、見た事もない男性だった。さらさらの黒髪に、整った綺麗な顔立ち。そして真っ直ぐ見つめる、透き通った瞳。
「月の姫。光を受ければ目覚めるかなと思い、御簾の外まで連れ出して見てよかった。」
さらっと髪を撫でる。
「え!?だれ!?」
__!!?!!?何気に気付いたけど私抱き抱えられてる!!?めちゃひざ枕されちゃってる感じだよね!?
澪菜は自分の置かれてる状態に気付くと、ものすごく恥ずかしくなって来た。恥ずかしすぎて言葉にならない。
「どうした?姫」
「いや、、、この、、、」
恥ずかしさに耐え切れず、澪菜は立ち上がろうとしたが、体に力が入らず、ガタンッとその場に崩れ落ちた。
「姫!」
いっっっ痛っ!思いっきり肘を床にぶつけた。
「無理をするでない」
「ごめんなさい」
「謝らなくていい。昨夜見付けた時は冷たく、本当に黄泉路にさらわれたかと思ったくらいだ。」
澪菜は男性に抱きかかえ直され、今度は腕の中にすっぽり収まってしまった。
本当に心配そうな顔をしている。この人が助けてくれたんだよね…
「ありがとうございます」
「姫が無事ならばそれでいいよ。」
澪菜がお礼を伝えると、にっこりと微笑む。
「本当助かりました。」
でもさすがにコノ体勢は恥ずかしいので、澪菜は寄り掛かりながらも起き上がった。
起き上がった澪菜の目に驚きを隠せない物が目に入った。