弐-参拾壱
「何!!?それは誠か。」
内裏に荒げる帝の声が響きわたった。「主上、声を下げて頂けますか。」とお願い申し上げると、帝はコホンッと咳払いをし、頷いた。
「すまぬ。続きを申せ。」
「はい。」
朧は都に戻り、即座に内裏へ向かった。
部屋には、帝と朧、そして小夜がいた。
「わたくしは席外した方がよろしくないですか?」
「ええ。迷惑でなければ、小夜殿のご助言も是非頂きたい。」
「ふふ。お気遣い有り難うございます。お役にたてるなら、光栄です。」
小夜は微笑むと、竜について語り出した。
「不死と言えど、まだ三百と数年しか生きていないわたしには、何千何万昔の事かは存じあげませんが、竜の根元は唐と言われ、古の伝承ではそう伝わっております。」
「、、、。」
小夜の言葉に朧の顔がしかめる。
竜は、四竜と言いまして、火を司る火竜。大地を司る地竜。大気を司る風竜。そしていつの世かわが国に流れ住んだ、水を司る水竜。
そして四竜を束ねるのが竜神です。竜神に付き従う獣より、いつしか竜も神獣と崇められました。
「水竜の一族の伝えは、東宮様も耳にした事あると思います。」
どのようにこの国に流れついたかは、一族が出来たのかは存じあげません。
ただ一つ言える事。
神の力を人が手にしてはならない。竜のいる所には争いが生じる。我が国には在るべき存在ではないのです。
「竜を返せと言われれば、返すのがわが国の為でもありますね。」
「よいではないか。竜が帰れば、お前の姫もここに残るのだろう?余はお前にとって悪い話しではないとおもうぞ。」
良かれと思って言った言葉に朧は反感を持った。
「父君、いくら貴方でもそれ以上は許しませんよ。」
「すまぬ。ただ、お前の為を思って。」
思わぬ朧の言葉に、主上も驚く。
「いえ。申し訳ございません。私こそ御無礼を。」
「東宮様、慰めにしかなりませんが、羽衣を探されているのであり、竜は羽衣に繋がる可能性の一部ですよね?可能性が一つ消えただけで他にも方法はあるかもしれません。」
「、、、」
皆が、「仕方ない」で片付ける些細な事も、姫は心を痛める清き姫―――。
「主上、この事は私がお預かりしてもよろしいですか?決して裏切る様な事はいたしませんので。」
「あい、わかった。お前を信じるから、大丈夫だ。」
朧は深く頭を下げると、部屋を退出した。




