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金色の月姫  作者: 藤の花
蒼き竜の雷
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弐-弐拾漆

何も考えられず、フラフラとさ迷い歩いていると、自分がどこを歩いているのかわからなくなっていた。


「ここどこ……。」


見たことがあるようなないような。広い屋敷の為似たような廊下に局が続く。普段、屋敷の中を移動する時には、誰かしらついていたからまったくと言っていいほど方向感覚がなかった。

一人じゃ何も出来ない。その癖に迷惑ばかりかける。

また、胸が締め付けられる気がする。

考えすぎだろうか?弱気になると、竜に負け余計に喰われてしまいそうな気がして、不安な中で必死に気丈に振る舞う。落ち着つこうと胸を撫でると、違和感を感じた。

恐る恐る胸元を開いて覗いて見る。そこには心臓を取り巻くよう、深緑の鱗がびっしりとあった。



―――ヒッ!!?ザラザラと感触。なにこれ。身体も竜の浸食が始まっていた。




「姫?どうしたんだい?こんな所まで。珍しいね」

心地よい低音の声が耳を掠めた。振り返るとそこには、朧がいつもと変わらぬ様子でいた。

変わらない事が嬉しく感じる。緊張感が一気に解けた。




助けて、、、喰われる。怖いよ。


縋る様に、朧に抱き付いた。

明らかに様子がおかしい澪菜。落ち着かせるように抱き返し髪を優しく撫でる。朧は周りを確認すると人目に付かない所へと誘った。

手を引かれる間々に、少し進んだ先の部屋に入って行った。


「ここは?」

「私の部屋だよ。」


広い部屋だか、特に必要以上に物が無いためか、朧の部屋とは思えなかった。澪菜の部屋の物は、全部朧が揃えてくれた。本当に申し訳なくなる位に、色々と揃えてくれるから、朧はこういうの好きなのかなって思ってたけど、澪菜の為にやっていたのだろう。



「なんかサッパリしてるね?」

「ふふ。ここは、寝に来るだけだしね。」



その言葉に如何に、日々朧が忙しいかが垣間見れた。几帳を立てかけ、澪菜を座らすと、穏やかに話しかけた。


「落ち着いた?」

「……。」

「何があったんだい?」

「千鶴ちゃん、、、怪我させたの私なんでしょ?」



ここで起きた事は全部朧の耳に入るから単刀直入に言った。朧は何も答えなかったが、それが答えなのだろう。


「私だけど私じゃないの――。覚えてないとかそういうんじゃなくて」

「大丈夫。皆わかっているよ。」

微笑みながら、澪菜の髪をサラッと撫でる。

ああ、言いたい事はそんな事じゃないのに。何て言えばいいのだろうか。



「私の中に竜がいて、たぶん、、、その性だと。ごめんなさい。」

「あぁ。」

朧は口元に手を当てると、難しい表情で黙り込んだ。



「気づいてはいたんだけれど、いいだせなくて。まさかこんな事するとは思いもしなかったの。」

「あの瞳の奥に見えたのは、竜だったのか。」



澪菜が寝静まったあと、事は起こった。紅に光る瞳。

何者かに操られる様に、澪菜は起き上がった。苦しみを振り払うかのごとく几帳をなぎ倒し、自分をも傷つけ様とし、女房達が止めに入った。

そして澪菜の意識は再びなくなった。



「物の怪の仕業と言われが、神獣の力とは」

竜は神の遣いと歌われていた。その竜が悪鬼へと化すとは、余程の事があるのかと朧は言った。

澪菜には、竜の心が痛いほど伝わってくるので、切なくて切なくて胸が痛んだ


「胸に、心臓を囲う様に鱗が出来てて。私を喰おうとしてて」

「鱗?見てもいいかい?」


朧のゴツゴツした手が、澪菜の胸元に伸びる。

え?ちょっと待て!!下着と言う習慣がこの国ないから、私着物の下何も付けてないんだよ!!

見せたら丸見えじゃないか!!いや、例え下着を付けていたとしても恥ずかしいよ。



「ちょっと待って!!結構際どい場所なんだけれど…」

「え?あぁ」

真っ赤になっている、澪菜に朧は気付いた。少し困った顔になる。



「けれど、見てみないことには。」


ごもっともですが……。


「では、春晃にでも見て貰うか?あいつの方が分かると思うし。しかしわかっていつつも他の男に姫の素肌を見せるのには殺意が、、、」

「そっちもそっちで抵抗が!!」

「拒否してくれてよかった。少し我慢して。すぐ終わるから。」


澪菜これは診察だよ!恥ずかしがってる場合じゃない!チラリでいいんだから。上手く捲ればそんなに肌を晒さないよ。そう、お医者さんだとおもえばって思えないよ!!




「御前失礼致します。東宮様、お部屋に澪菜様がいらっしゃらないのですがご存知あり、、、」

千鶴は、澪菜の姿が見あたらなく、探し回っていた。几帳が風で揺れる奥で、影が二つ見えた。


「澪菜様もいらっしゃいるんですか?」



ガタガタと物音と共に、声も聞こえてきた。



「ひゃあっ朧っ心の準備が!!あっ」

「ふふ。姫の準備を待ってたら、日が暮れちゃうよ?」

「わわわ分かったから、自分でやるから!!」


朧はふふと笑いながら手慣れた手付きで、一枚また一枚と脱がせていく。

このまま剥がれると、あらわもない姿になる。自分でパパっと少しはだけさせた方が、傷が浅くすむ気がする。


「初、反応だね。可愛らしい。」

「からかわないでよ!!」


澪菜は部屋の隅に行き、朧を気にしながら鱗が見える様に、前を少し開けた。


部屋の外にいる千鶴と澪菜は目があった。

「ひゃえ!?千鶴ちゃん!?いつからいたの!?」

「ももも申し訳ございません!ままままさかこんなお時間から。決して邪魔するわけでも、覗くつもりもございませんでした。私の事はお気になさらず!!失礼しました。」


千鶴は顔を赤らめ去っていく。慌てて足を引きずりながらさっていく。


「千鶴ちゃん、怪我してるのに走っちゃ駄目だよ!!」



キョトンとしている澪菜に、朧はおかしく笑った。

「クスクス。あれは勘違いしていたね。」

「勘違い?ーーーーーー!?千鶴ちゃん違うよ!?朧からも否定しておいてね。」

「いいんじゃない?」

「もぅっ適当なんだから。」


すっと朧の目つきが変わった。朧の手が鱗をなぞる。

「これが竜の鱗。」

「そう。これなんだけれど。」



さっき自分で見た時より、広がっていた。確実に身体が蝕まれていくのがわかった。また、いつ自分じゃなくなる恐怖と隣り合わせで、澪菜の肩は小刻みに震えた。



「時間の問題だな。春晃を呼ぶか。」

朧は澪菜に自分の羽織りを掛けると、すぐさま行動に移した。

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