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金色の月姫  作者: 藤の花
蒼き竜の雷
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弐-弐拾伍

う、、、ぅうん



「ここは??」


見慣れた我が部屋だった。ずっと薄暗い場所にいたせいか、目がショボショボしてなかなか焦点が合わない。どうやって帰って来たのか、全く覚えていなかった。



「朧?」

「皐殿の家で倒れたみたいだね。具合はどうだい?」

「迎えに来てくれたの?」



心配げに顔を覗きこんでいた朧は澪菜の髪をなでながら、フンワリ微笑んだ。


「ありがとう。」


澪菜は朧に微笑み返した。



内側から発する熱はもうなくなっていた。

自分が変わったと頃があるか、手を握ったり開いたり繰り返す。澪菜の中に竜の御霊が入り込んだ。それは間違いないだろう。

ただ、自分でわかる感じでは何も変わらない。体が乗っ取られるかと思ったが大丈夫だったって事なのだろうか?



「どうした?皐殿の所で何かあったのかい?」


心配げに朧は覗き込んだ。


「ううん!ならいいんだ。」


皐は『波長が合う』って言ってたけれど、そうなのかな?

けれど、何故か不安は拭いきれなかった。



「皐ちゃん何か言ってた?」

「皐殿は何も。ただ犬が付いて来たよ。」

「犬――?「あんっッ」


元気よく、子犬が飛び出して来た。思いっ切り澪菜に飛びつく。竜ちゃんの毛色は深緑から、茶色に変わっていた。


恐らくそれが本来の姿なのだろう。

「お前は、もぅ竜じゃないんだね。本当の名は?」


澪菜はそう問い掛けると、子犬はクゥーンとスリついて来た。



「あうっッあんあんッ」



(犬に名などない。)


「え?」

「姫?」


辺りを見回すも、部屋には澪菜と朧しかいない。


「皐ちゃんいるの?」

「皐殿は来ていないよ?」



声が聞こえる―――。

(話がしたい。そいつに席を外させろ)


「朧、有り難う。少し休んでもいいかな?」

「わかった。ユックリお休み。」


朧が部屋を体質すると、皐の声がまた聞こえ始めた。



(私と竜は繋がっている。お前の中に竜がいる以上声は伝わる。)



「だろうな」と思い、澪菜はあまり驚かなかった。



「この子には、名前ないの?」



(ない。)

(そいつは、元々野良だった。家もない。仲間もいない。寂しい心が竜と同調したのだろう。)



「じゃあ、名前付けてあげようよ!!名前は大切だよ。」



皐は押し黙った。



「うちの猫ちゃんは、茄子っていうんだよ。」

「にゃあ」


茄子って言葉に釣られ、茄子も部屋にやって来た。茄子は元気に走り回る子犬を見て一瞬毛を逆立たせたが、すぐに怖くないとわかったのか、子犬にじゃれ始めた。


(お前がつけろ)皐は少し悩んだ末、そう答えた。


「エーッ!!皐ちゃんが付けてあげた方がいいと思うよ。皐ちゃんの家の子だし。この子は皐ちゃんが好きだと思うから、皐ちゃんが付けてあげて。」



(私には、コイツとどう接っせばいいかわからない。)



竜とばば様とひっそりと暮らして来た。たまに町に降りれば、変わり者だと気味悪がられた。人からあぶれた者は、人には戻れない。

巫女として、竜の為に出来ることもたかがしれている。



(お前は、皆に愛されていていいな)



悲しみが伝わってくる。竜と繋がる性か、皐の心が本心だと感じとれた。


「そんな事ないよ!私だってそうだし!!根本的な事は何も変わっていないけれど、周りが『澪菜』を見てくれたから私は前向きになれたんだと思う。だから皐ちゃんは皐ちゃんでいいんだよ。皐ちゃんのイイ所はいっぱいあるはずだよ?」




(涼も同じ事を言った。)


私の事を気味悪がると思ったが、そんな事はなかった。巫女でもなく、人でもなく、『皐』として見てくれた。


「皐ちゃん……」

(まぁよい。私はこんな話をする為に念をおくっている訳ではない。)



「あっ―!!ごめんなさい。でもこの子の名前は決めてあげて?」



皐は面倒くさそうに舌打ちをした。


(ビャク)

「え?」



(名だ。それでいいだろう)

「あんっ!!」

「百ちゃん!!よかったね。」

「アウッ」

子犬は『百』と名を貰い嬉しげに走り回った。


(お前、体調はどうだ?)

「心配してくれたの?有り難う!!特に変わりないよ。」

(竜に喰われるか、竜を喰うか。見物だな。)


ククッと笑う。その笑いから、澪菜を心配してではないと伺えた。


(竜は一命を止めた。だから、お前の話を聞いてやってもよい。)



「帰る為に竜の首の珠を探していたんだけれど、、、何か手がかりになりそうな事知ってるかな?」



(((ふざけるな!!――)))

皐の空気が一気に変わった。



「え?何か気に障る事いった……私。」



(首珠は、竜の核。それを奪うと言う事はすなわち竜の死


「…………死」


澪菜は愕然とした。自分の求めていた物が、死によって手に入るものだった。


「そんな、、知らな、、、、かった。」




竜の首の珠だけじゃない。もしかすると羽衣だって何かの犠牲がなければ手に入らないかも知れない。

帰る為には犠牲が必要――――。そんな事、私に出来る訳がない。



(所詮、綺麗事ばかり言っても欲深い人間だな。)

皐が皮肉る。


「ごめんなさい、、、ごめんなさい。そんなつもりなかったの」



澪菜はひたすら謝る事しか出来なかった。

そして、皐からの念はプツリと切れた。


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