漆
ポーン
ポーン……ポーン
鼓、琴の音が賑やかに鳴り響いている。
泉のホトリには桜が舞い散り、満月に照らされとても美しい。
宴には最高の夜である。多くの人々が集まり、賑やかに盛り上がっている。
そんな宴も終盤に向かっていた。
「今宵は素晴らしい夜であったな。」
「そうですな。おっ…そろそろ、締めに入るのですな」
泉の方に向かって一人の男の人が歩いて来た。
「あの有名な陰陽師の占術が始まりますぞ。」
桜の宴は一年の繁栄を占い終りを告げる。
毎年国一の選ばれた陰陽師が国の繁栄を祈り、占術を施す。
「今宵は美しい月」
陰陽師は呟くと無表情のまま泉に入って行く。ちょうど腰の位まで水に浸かると、立ち止まり、空を見上げた。
月明かりに妖々と照らされ、陰陽師は輝いていた。
「不思議な方ですな」
「ほんと…」
「静かに…何か唱え始めましたよ。」
陰陽師の妖艶な姿に宴に集まった皆々が見惚れる。
場が鎮まりかえると、陰陽師は呟き始めた。
「漆黒の
夜に満ちあふる
月の光
姫舞い降りし
永久の栄光」
――今宵、月色の姫が舞い降り、姫を手にした貴方は覇者となり永遠の栄光が続くでしょう――
「そう。貴殿様の元へ……月姫は舞い降ります」
そう言うと陰陽師は一人の男性の方を指した。
その光景に、宴参加していた者達ちは驚き、ざわめいた。
その瞬間、木々や泉、空までもがざわつき出した。
突然吹き荒れる風に、桜は舞い散り泉は桜色に染まる。
月の明かりもドンドン強くなり、泉のホトリは光に包まれたのだ。