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金色の月姫  作者: 藤の花
蒼き竜の雷
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弐-拾玖

竜ちゃんはあれから一週間たっても、目覚めなかった。

保護してすぐ、皐に文を送った。が、しかし返って来た返事は不思議な物だった。


「満ち足りて 

御陽炎は

真になり

そなたの光

目覚めの兆し」

時がきたら引き取りにいく。それまで預かっていて欲しい。


何が考えあっての事だけど、あれだけ澪菜を嫌っていたのに預けるのが信じられない。

追記で、餌はやらんでよいから、毎日一回は撫でてやってくれと書いてあった。

毎日1回とは言わず撫でまくった。2、3日たっても目が覚めないので、再び文を送ったが「そのまま連れまわしてもいいから、片時も離れるな。」とだけ書かれていた。

余計に何を考えているんだろうか分からなくなった。籠に布を敷き、そこに寝かせると穏やかに眠った。

竜ちゃんの頭を撫でてると、気持ち良さそうに寝息を立てている。時々ピクッと動いたけれど、特にそれ以外の変化はなかった。



「目、覚まさないなぁ。」

「ニャー」

茄子が目を輝かせ、竜ちゃんに興味を示している。「ジャレちゃ駄目だぞ」なんて言ってみても、もう尻尾にジャレついていた。


「ニャッニャッ!!」

「コラ!!茄子!!」


茄子を抱き上げ、めっとする。余計に遊んで貰ってると思ったのか、ジャレる激しさは増した。


「澪菜様、本日は菫姫様の所へお出かけなさる御予定では?」

「あっそうだった!」

茄子を離して、慌てて準備をする。


別れ際に、「今度ゆっくりお話しましょうね。」と言われ、今日改めて会いに行く予定だ。



「忘れ物ないですか?東宮様に手土産にと渡された包み持ちましたか?」

「あぁ!!」

「はぁ……しっかりして下さい!」

まるで母と子の様な会話だ。



「千鶴ちゃんお母さんみたい。」

「冗談言わないでください。鬢はつけていきますか?」

「鬢うーん、、、やめとおく」


折角お友達になったんだし、隠し事は止めておこう。この髪色を見て嫌われたとしてもそれは仕方ないと。嘘をつき続けるよりはいい。



「竜ちゃん連れて行くから、その準備だけお願いしてもいいかな?」

「かしこまりました。」


バタバタと出て、橘邸に向かった。

菫は「狭い屋敷だから気兼ねなく来てね」って言ってたし、時頼にいたっては、「女御様がお越し頂く様な屋敷ではございません」なんて事を言ってたけれど、着いて見てびっくりだ。



「どこが狭い屋敷なの!?」


確かに東宮御所に比べると、小さいかも知れないけれど謙遜しすぎだ。全然広いじゃないか。

日本にある我が家なんてここに何十個建てられるだろう。

玄関先でびっくりしていたら、菫が玄関まで迎えに出て来た。



「狭いですわ。実家の左大臣邸の方が全然広かった。」

「菫ちゃん!!」

「今日は金色の髪ですね。綺麗ですわ。」

澪菜の髪にさらっと触る。


「驚かないの?」

「ふふ。主人に聞いてたから。かぐや様の話。」


時頼さんの奥さんだもの。知ってても当然だよね。目を輝かせて言う菫が、なにか物凄い妄想をしているのではないかと思う。


「それに、この間もはずれてて、とてもお綺麗な髪だと思ったの。前回はそれどころではなかったから何も言えなませんでしたが。」


パニックで全然気が回らなかったが、あんだけ盛大に川に流されたらはずれちゃうよね!!きっと侍者の人が探してくれたんだろう。大事な髢、本当に無くさなくてよかった。



「立ち話も何ですし、どうぞ奥へ」


菫に促され、澪菜と千鶴は北の対の屋に向かった。長い廊下を抜け、対に着く。

北の対にある、菫の部屋からは、美しく手入れされた庭が見えた。今時期は庭も緑々としていて、涼しげに感じる。



「あっこれ朧、、、東宮様からお土産です。」

「有り難う。」


菫は受け取ると、早速包みを開けた。ふんわりと漂う甘い香り。


「うふふ。美味しそうな菓子ね!こんな手土産まで、東宮様に愛されてるんですね。」



「あっ愛されっって」

「クスクス普通、部下の屋敷に行くくらいじゃ持たせませんよ。それ以前にわたくしがどちらかと言うと出向く立場ですわ。澪菜ちゃんに外に出て息抜きさせたいのでよろしくって事じゃないかしら?」

「えぇー!!」

「澪菜ちゃんは、東宮様の事お嫌いなの?」

「嫌いじゃないよ、、ただ」


好きの違いがまだよくわからない。

涼が頭をかすめる。最初は会いづらくて、避けていたけれど、このままじゃ駄目だと思い、あの後何回か会いに行っていた。

だが、タイミングが悪いのか涼にまだ一度も会えていない。


菫はそんな澪菜の様子を見てピンッと来た。

「何か合ったでしょ。」

「えっ!!!?」



「ふふふ。隠しても無駄よ!年は同じくらいだけど、私の方が恋愛経験は上級ですからね。」

「――――ッッッ!!」


誤魔化そうと頑張ったが、菫の誘導尋問と巧みな話術により気付くと洗いざらい白状させられていた。

「涼殿を見てみてみたい」なんて事を面白がって言い出したので、いかに断るかで苦労した。

もう恥ずかしくて顔があげられない。



「ウフフ若いっていいわ。」

「私の話ばっかし!!菫ちゃんの話も聞かせて!!」



その瞬間、菫の目がキラーンと光った。

「え――!!いいの?」

「え?うん。勿論だよ。」



子犬の様に喜び、憂いに満ちた顔になった。

菫がもし子犬だったら、今思いっ切り尻尾を振っているだろう。


「あぁ、どこから話そうかな?私と時頼の愛の物語!!」



菫は、嬉しそうに小さな箱を取り出した。箱には思い出の品が色々詰まっている。大事そうに取り出すと、菫の目は優しく微笑んだ。

かわいい。菫ちゃんは女の子だな。澪菜は菫の恋をしている目を見て、なんとも頬馬しく思えた。



「これは初めて貰った文でしょこっちは花を頂いて!!花何てめったにくれないから、嬉しくって押しにしたのですわ。」


それぞれに大切な思い出があって、一つ一つ事細かに説明を始めた。



「地雷踏みましたよ。この話、長くなりますよ。澪菜様。」

千鶴が顔をヒクつかせながら、ボソッと言った。




「そうよ。日が暮れるまでに終わればいいんだけどね!」

菫がニマリとしながら、話を続けた。

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