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金色の月姫  作者: 藤の花
蒼き竜の雷
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弐‐拾弐

涼に連れられ、少し歩くと、古びた小さな屋敷に着いた。


「こんな所に屋敷があるんだね。」

「あぁ。俺も最初、狐にでも化かされたかと思ったよ。」


涼はカランカラン笑う。

そして入り口の前に立つと、屋敷に向かって叫んだ


「皐!!久しぶり!!いるか?」



気味の悪いくらいの静けさになる。次の瞬間涼の声に反応するように、何かが割れるような音が微かに聞こえた。するとぎぃーっとゆっくりとドアが開いた。

「いるみたいだな。」と涼はそれを気にする事もなく、中に入っていく。


「何?今の音?」

涼の着物の裾を掴み、恐る恐るついて行く。


「女二人で暮らしているから、屋敷に結界を張ってるらしいぞ?」

「結界を張れるなんて、皐様はさぞ御力のある巫女様なのでしょうか?」


驚いた千鶴は涼に質問した。千鶴の言葉に涼は不思議そうな顔をした。


「そうなのか?こっちの世界じゃ、当たり前の力かと思ってたけど?春晃もあぁだし。」

「春晃様は国で一番の陰陽師ですし!普通の人にはそんな事出来ませんよ。」

「ふーん。」



玄関を通り抜け、居間に行くと、少女がポツンと座っていた。涼の声に少女は振り向いた。色白で華奢な少女。薄い色素の髪を横で束ねている。歳は涼に言われた通り同じくらいだろう。



「皐!!久しぶり。元気だったか?」

「……。」

皐はコクンと頷く。


「皐ちゃん…初めてまして。涼君の幼なじみの澪菜です。」

澪菜は右手を出して挨拶をする。



皐はチラリと澪菜の方を見ると、ふっと目をそらした。

――無視!!?された!!?あたしなんかだめだった?



「涼、どうした?今日」

皐は澪菜の事を、まるでいないような風に扱う。


「千鶴ちゃん!!今の挨拶おかしかった?」

「いえ。そんな事はないと思います。」



半泣き気味に千鶴に問いかけるも、千鶴も困惑している。

涼はくるっと皐の顔を澪菜の方に向けさせると、一喝した。


「皐、ちゃんと挨拶しなさい。」

「………………それは必要か?」


ツンと答える皐にさすがに涼も苦笑いだ。「気にするな」と涼がぽそっと耳打ちをしてくれたが、内心ずたぼろだ。



「ばぁちゃんは?久しぶりだし、挨拶しなくちゃ」

キョロキョロと見渡しながら、姿を探したけれど、見あたらなかった。



「ババ様は………死んだ。」

「亡くなった…のか?」

一瞬空気が止まった。


「あぁ。」


皐は無言で歩き出した。着いて来いと言いたいのか、時折振り返りながら歩く。

屋敷を出て、裏に回った。裏庭に小さな碑があり、その前に立ち止まった。綺麗に整えられており、とても大切な人だったのだろうと伺える。


「眠っている。ここ」

「ばーちゃん元気だったのにな。」


涼の記憶の中には、まだ全然元気だった姿しかない。涼が淋しい顔を浮かべ手を合わせる。

澪菜と千鶴も一緒に手を合わせた。



「今、一人なのか?」

涼が心配そうに皐に問いかけた。


「二人。竜、いる。」

「竜!!」


皐の言葉に澪菜の胸は高鳴る。聞き間違いではない。竜って言った。

桂の川で見た少女は皐だったのだろうか?そう脳裏を過ぎる。


「竜、おいで」

皐は座り、手を差し出した。すると家の中から、バタバタと出て来た。「ガウガウッッ」と嬉しそうに尻尾を振りながら、皐の手に顔をすり寄らす。

その生き物は、涼の言っていた通り小型犬位の大きさで、深緑の毛色ではあったが、それ以外は犬と言われても違和感がなかった。


―――――――違う。



「こいつがいる。」

皐は竜を抱き上げ、涼に見せた。竜も涼を覚えているのか尻尾を振りながら、顔をペロペロ舐める。



「ちょ!!お前っくすぐったいよ!!」

「人懐っこいんだね!!」


澪菜は竜に近寄り、撫でた。硬そうに見える毛並みは、サラサラしていて見た目より全然柔らかくて気持ちよい。竜は一瞬ビクッとし、うなり声をあげると、ささっと皐の影に隠れてしまった。



皐が睨んでる気がする。


「ごめんなさい。驚かすつもりは無かったんだけれど……。」

澪菜は謝るけれど、皐はまたも目を逸らした。



「涼、何しに来た?」

「あ、あぁ。竜を探していてな。本物の。お前なら何か知ってるかと思って!!」

「………………」

「その娘は、お前の言ってた娘か?」

「そうだよ。」


今度は、澪菜をじっと見ている。顔に穴があきそうなくらいに。澪菜には、サッパリ何の事だかわからなかったけれど、二人にはそれで通じていた。


「竜もそいつの為にか?」

「あぁ。」



皐は目を閉じ、何か物思いにふけている。そして口を開いた。


「なら、知らん。」

「え?」

「私はそいつ、好きじゃない。そいつの為になど竜は教えぬ。」


涼はまさか、皐がそんな事言うとは思わず、驚きが隠せなかった。


「さつき?」

「用はそれだけか?なら帰れ。」



皐はスッと家の中に入り、バタンと扉が閉まる。慌てて追いかけるも扉に手をかけると、ピリッと静電気の様な感覚が走った。中から結界が張られたのだろう。




扉はどう頑張っても開かなかった。

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