弐‐玖
まだ平安のこの地に国が出来る遥か前。
場所はどこかは定かではないが、隠れ里に水竜の一族と呼ばれる者達がいた。里の民達は俗世間に見付からない様、ひっそりと暮らし里1番の神力を持つ娘を巫女とし水竜を奉っていた。しかし、戦乱に塗れて、里は姿を消した。
「消した!!?」
竜の力を狙う野族に滅ぼされたとも伝えられている。自ら竜を守る為に、里の滅びを選んだとも言われていた。
深い深い闇の中、真実は誰も知らない。
「竜が再び姿を現したと言う事は、里の民は生きていたとの事だな。なかなか面白い」
「面白い?」
春晃は上を見上げ遠くを見る。空を越えその先を見詰める様なその眼差しには、何が見えているのだろうか?
「時満ちて
人歩み出の
この御世は
廻し廻れる
月夜の奇跡」
――歩みを止めていた人々が動き始めた。個々それぞれの運命の歯車が動きだしたのは、やはり月の奇跡が起きたからだろう――
「え――!!?」
「おぬしがいるから、竜の運命も動き出したのだ。」
「私ですか!!?」
「あぁ。月の姫は不思議だ。おぬしが現れて帝の時間は廻り始めた。」
「あれは」
みんなのお陰だ。一人だったら、何も出来なかっただろう。背中を押し共に歩いてくれたから出来たのだ。
「謙遜する事はない。みなが動いたのはおぬしがいたからであろう。東宮のお心も廻り始めるとよいのだか。」
「朧の心?」
「時がくればわかるはず。おぬしの時間も廻り始めている。」
「んー?」
言葉を理解者しきれていない澪菜を見ながら、春晃は意味深な笑みを浮かべる。
「見るか?先の世を…そして後の世を。」
小声で呪文をブツブツと呟くと、春晃は手を澪菜に伸ばした。
「いやッッッ」澪菜は手を除け、一歩下がった。
「私が怖いか?」
――――あ
「ごめんなさい!そういう意味じゃなくて。」
怖くないって言ったら嘘になる。見れる物なら見てみたいとも思う。でも、それじゃだめだ。自分で未来に辿り着きたいと思う。
「私今まで何でも諦めていたんです。友達が出来ないのも人と馴染めないのもどうせこの髪がって。でも平安の国に来て、自分で歩けば新しい未来が切り開く事が出来るって教えて貰いました。だから未来は自分で掴みたいから。」
「やはり、おぬしの時間も廻り始めているな。そういう方だからこそ周りの時間も廻り始めたのか」
「……?」
「まぁよい。時期に夜が明ける。もぅ休みなさい。」
澪菜は空を見上げると、微かながら色が明るくなり始めてるいた。いつの間にか時間がたっていたのだ。
「そうですね。みんな起き出してしまいますしね。」
別れを告げ、澪菜は部屋へ戻って行った。




