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金色の月姫  作者: 藤の花
蒼き竜の雷
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弐‐捌

「ん、、、ぅん、、」

体が痛い。布団に入らず寝てしまったからだろうか。重い体を起こし御簾をカラリとあげて廊下に出てみると、辺りは暗くなっていた。屋敷の中の物音がしないから真夜中なのだろう。

夜空を見上げると今日も星と月が輝いていた。澪菜はぽてっと廊下に座り込み空を眺め続けた。満天に輝く星空は、手を伸ばせば届きそうなくらいに輝いている。

 


「日本にいた頃は、こうやって夜空を眺めるなんてあんまりなかったな……。」

センチメンタルな気分になり、ぼんやりとしてると、いきなり辺りが暗闇に包まれた。

 

 

「――――?雲?」

段々暗闇は増していく。

―――――――!!

闇はユラユラ揺れている。月明かりがチラリチラリとこぼれるその動きは、まるで雲が生きているのではないかと思えてしまう。いや生きている様ではなくそれは生きていた。雲ではなかった。

 

「竜?」 

裸足の間々庭に駆け出し、空を確認し直す。東宮御所の上を優雅に飛び回っている。恐いという感情は何故かなく、変わりに神秘的で微かに見える月明かりが鱗を輝かせ魅入ってしまった。

 

 

「綺麗。」

瞬く間に流れる様に、北の空へと消えて行った。

 

「す、、、凄すぎる。」

あっという間の出来事にたたずみ動けなかった。

おの字に口を開けた間々、空を見続ける。

 

「竜本当にいるんだ。」

澪菜の世界では想像上でしかなかった竜。一度ならず二度も出会うと、見間違いや幻想かも知れないと思う。

不確かな気持ちは無くなり、竜は存在すると言う確かな確信へと変わった。


「涼君の言う通り、羽衣が見付かるのも夢じゃないかも」

部屋に戻ろうとすると、物影からザザ――っとした足音と声がした。

 

澪菜は振り返ると、武装した男性が立っていた。

 

 

「こんな時間に何者!!」

「金色の髪女御様にしては、淫らな格好。裸足でこの様な場所にこの様な所にいる訳がない。貴様怨霊の類か!!」

 

男性は澪菜を上から下まで見ると、激しい眼光で睨み付けた。不信がられても当たり前な状況だ。普通の姫君なら、裸足でこんな時間にこんな場所にいない。

 

「はうぅ」

マゴマゴしていると、男性の腕は腰刀に伸びていた。

やばい!!この流れは何度か体験したぞ!サクッと斬られちゃう。あああああいや待って!!



「やめないか。近衛殿。」

「安倍殿!!?」「春晃さん!!?」

春晃の登場に、澪菜と男性は同時に振り返った。 

 

「安倍殿こんな時間に何故ここに?」

「東宮御所の空気が変わったのでな。何かがいたみたいだか、去った後だった。」

春晃は竜の気配を感じたのだろうか。

 

「それより、刀をしまいなさい。残念ながら、こんな格好をしているがこの方は女御様だ。全く貴方がいると問題ばかり起こるな。」


ため息まじりに話す。春晃の刺さる言葉にグサリと刺さる。本当だけど鋭すぎて痛い。 

男性と春晃は知り合いらしく、春晃の言葉に刃向かう風もなく、殺気を抑えすぐさま刀を鞘に収めた。

 

「本当に女御様なのか」


近衛殿と呼ばれる男性は、驚きを隠せない。

澪菜の謝る事でもないけれど、反射的に頭が下がる。

 

 

「東宮に確認して頂いても結構だ。」

「いえ。その様な事は!女御様、知らぬとはいえご無礼を。申し訳ございません。どうぞ御処罰を」

男性は膝を着くと、刀を地面に置き俯いた。

 

「ななな!!処罰なんてしません。」

いやこの流れも前にあったな………。

「そんなに命を粗末にしてはいけませんよ!!」

刀を拾い男性に返す。

 

「こんな時間にウロウロしていた私も悪いし、お相子で!立って下さい。」

 

「いえ、それでは。」

千鶴の時もそうだったけれど、処罰はしないって言っているのだからいいのではないのか…?

これが価値観の違いなのだろう。

 

 

「じゃあ!処罰は生きる事。私が出す処罰はそれしかないです。後は東宮様の御判断にお任せします。だから今日は立って下さい。」

 

 

澪菜は男性を無理矢理引き起こす。

その姿を見て春晃はクスリと一瞬笑った。


「春晃さん!今笑った!!?」

「そうか…?」

「うん。笑ってた!初めて見ました!!」

もう一度笑い顔を見ようとマジマジと覗き込むも、いつもの無表情に戻っていた。

 

「相変わらず変わった姫君だなと。近衛殿、残念ながらその姫は処罰を嫌うお方だから、お主は処罰される事なかろう。気にすることない。」

 

男性は少し悩みながらも、仕事の途中だったので、春晃に促され戻っていった。

 

 

「さて。姫はこんな真夜中に何をしていたのだ?」

「あ…空に大きな竜がいたんです。」

竜の消えた北の空を指差し、見上げながら答える。

何事にも興味なさそうな春晃が、珍しいほど興味を示して来た。

 

「水竜の巫女が動き出したか……」

妖艶に微笑むその表情は、少し恐ろしくも感じる。

 

 

―――水竜の巫女?この間の奥嵯峨の少女――?

竜の背に乗る少女の姿が脳裏をかすめる。

 

 

「知り合い何ですか?」

「いや。会った事などない。」

「そうですか。春晃さんなら、竜の知り合いも居そうなイメージなんですけどね」

そんなには甘くはなかった。

 

 

「水竜の巫女ってどこにいるのかは知ってますか?」

「私は伝承でしか知らない。」

「――――伝承?ですか?」

 


「あぁ。水竜を守護する一族がいた。」

春晃はポツリと話始めた。 

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