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金色の月姫  作者: 藤の花
蒼き竜の雷
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弐‐漆

少し待っていると、涼が何冊か古びた本を抱えながら、客間にやってきた。

 

「何これ…?」

澪菜は涼から受け取り、目を通す。


【竹取の書】

 

「こっちじゃ『かぐや』って思われているだろう?」

「うん、一応。」

本当にかぐやかどうかは別として、春晃の占術で澪菜がかぐやと思われているのは事実だ。

 

「なにかヒントになるかと思い、読み漁ったんだけど、『かぐや姫』ってどんな話か知ってるか?」

「知ってるよ!竹から生まれて、おじいさんとおばあさんに育てられて美女に成長するの。いろんな人に求婚されて結局月に帰ってしまう。」



涼が勝ち誇った顔をしている。あっているよね?

 

「そう。俺もそのくらいにしか知らなかったんだ。不死の事件の時、姫が不死の妙薬を残していくって言ってたのが引っ掛かって。そんな話だったっけと思って読んでみたら、結構深かったんだよ!」

涼の目がキラキラと輝いていた。


「ここ。」

涼は書の最後の方を開き指を指す。澪菜に見せる。

 

「これ、涼君読めるの?」

ミミズみたいに繋がるこの国の文字は難しすぎて澪菜には読みずらかった。

 

 

「あぁ。春晃のおかげで陰陽の書物を読む機会が多いからな。でも三割くらいしか読みとれてないぞ!澪菜にも所どころ読めそうな字があるだろ?」

 

 

涼の指す先を解読始めた。

「…天の……羽衣……せ…つ…ば……」

「それだけ解れば大丈夫だな。」


片言ながら、読んでいく澪菜に涼はにっと笑って話続けた。

「かぐやは最後羽衣を羽織り、月に帰っていくんだ。この羽衣を探せば、元の世界に帰れるんじゃないかと思う。」

 

 

―――――!!!!!!?

「でも、そんなあるかな?空想上の物。」

「仮説でしかないけれど、妙薬は見付から無かったけど不死は存在した。羽衣はわからないが、それに通じる何かあるはずだと思う。」


口では仮説とは言っているが、確信している涼の瞳を見ると澪菜もそんな気がした。しかしどこを探せばいいのか検討もつかない。朧や春晃さんを頼るしかないかな?


「もうひとつ。」と言いながら涼は本をパラパラとめくり指を指した。

 

『竜の首に五色の光ある珠あなり。』

 

「この物語の中で、羽衣以外に、『仏の御石の鉢』『蓬莱の玉の枝』『火鼠の皮衣』『燕の子安貝』そして『竜の首の珠』ってワードがある。まずこれから探してみれば、羽衣にもたどり着く気がす、、、」

「そんな簡単な事ではないと思います。」


だまって聞いた、遮る様に突然千鶴が口を開いた。


 

「何もしないよりはいいだろう。それに、『竜』について、心当たりがある。」

不服そうに千鶴は黙りこんだ。澪菜は、千鶴と涼の間にピリピリとした空気が漂っている気がした。


「千鶴ちゃん?」

「いえ。口を挟んで。すみません。」

ペコリと頭をさげると、すっと部屋を後にした。

 

 

「なんだ?あいつは」

「涼君、千鶴ちゃんになにかしたの!?」

「は?俺!!?なのか!!?」

 

涼が何かしたとは、本気で思っている訳じゃない。けれど千鶴の様子は明らかにいつもと違った。しかも、ここに来てからだ。

 

「心配だから今日はもう戻るね!竜の事は私も調べてみるね。」

「あぁ。」

 

もう少し竜の話も聞きたかったけれど、千鶴を放っておく訳もいかず、澪菜は追うように部屋を後にした。




――――――――

あの後、東宮御所に戻って来たが、千鶴の様子は戻っていた。

 

「千鶴ちゃん…ちょっといいかな?」

「はい。何ですか?」

 

忙しなく働く千鶴を座らせ話をする。回りくどいのは苦手なので、単刀直入に聞いた。

 

「千鶴ちゃんもしかして涼君の事苦手?」

「そんな事ありませんよ。涼様は、澪菜様の大事な御友人ですから。」

 

 

顔では笑って見せてるが、なにか胸に引っ掛かる笑顔だった。

 

「千鶴ちゃんも私にとって大事な友達だよ!だから何でもいって!!」

手を握りしめ真っ直ぐ見詰める。千鶴は少し嬉しそうに顔を赤らめているが、どことなく複雑な気持ちだった。

 

「澪菜様は」

「…………?」

「澪菜様は御国に帰られてしまうのですか?千鶴は寂しゅうございます。」


元の世界に戻るって事は、平安の国の人々とはお別れになる。折角仲良くなった人々と。初めてこんなに人と触れ合える様になった大事な場所。考えればわかる様な事なのに、全くそこまで考えていなかった。

 

「………あ…………え……」

何を返せばいいのか、言葉が出て来ない。

 

「涼様は澪菜様を私共の前から連れて去りそうな気がして怖いのです。」

「私も………寂しい…………………けれど…」


だからといって…私はこの国の人間ではない。いつまでもこの間々で、いい訳もない。

 

「平安の国に御残り頂けないですか?」

千鶴はギュッと握り返した。暖かい手。この手を振り解きたくはない。けれど、元の世界には、両親が待っているだろう。いきなりいなくなった澪菜を心配して。


「やめなさい、千鶴。」

「東宮様!!」

「それを決めていいのは、姫だよ。」



朧が御簾をあげ、部屋に入ってきた。フンワリと千鶴を諭す。澪菜はどこかで、朧なら『帰さない』と言って来ると思っていた。そのせいか、そんな言葉を言う気はなかったのに、気付いたら口に出していた。


「朧は、私が帰ってもかまわないの?」

「姫、それを決めるのは姫自身だよ。」


朧の目は真っ直ぐで、偽りはなかった。

朧にとっては、私はそれだけの物だったのか。

かぐやだ女御だと言っていても、結局は『予言の姫』でしかないのだろう。それ以上でもそれ以外でもない。

どこかで、自分は特別なのではないのかと思っていた気持ちがあったのか。

澪菜は急に恥ずかしくなった。自惚れてた。いくら人付き合いに疎いからって少し優しくされたからって恥ずかしい。

 

「姫?どうした?」

「うぅん。何でもないよ!」


頬の筋肉を動かす。ちゃんと笑えてるかな?

 

 

「ちょっと疲れただけ。今日はもぅ休もうかな?」

「どれ」

朧の手が、ふわっと澪菜の前髪を持ち上げるとおでこに手をあてた。

「ひゃッッッ!!?」ひんやりとした手が気持ちいい。

 

「熱はないね。最近バタバタしてたからかな?ゆっくりお休み。」


朧は額から手を離すと、髪を一撫でし部屋を後にした。

顔が頬てる。でもこれは誰にでもする事なんだ!きっと。勘違いするな。強く自分に言い聞かせた。 

 

一人考えていたら、いつのまにかその間々寝入ってしまった。

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