表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金色の月姫  作者: 藤の花
蒼き竜の雷
53/79

弐‐伍

―――――――

帰って来てからも雨は強くなる一方だった。

「楽しかったなぁ」

「嬉しそうな顔をしてどうしたんだい?」

クスクスと笑いながら御簾をあげ、朧が中に入って来た。

 

「ひゃあ!!お帰りなさい!」

「ただいま。」

 

朧は澪菜の隣に座る。すると、茄子が朧に甘える様に近寄って行った。茄子の喉を撫でると気持ちよさそうにゴロゴロ鳴らし、朧の膝の上にすっぽり収まった。

 

「今日は桂の川まで行って来たのだろう。どうだった?」

「うん。素敵な場所だね。水が透き通っていたよ!」

「楽しめたなら良かったよ。」



穏やかに微笑む、朧の笑顔は大好きだ。いつもつられて微笑んでいる。

「いい歌は歌えたかい?」

「うーん。」

一応出来たけれど、やっぱりはずかしい。書いた文をこっそりと、着物の中に隠そうとしたけど、茄子がジャレつき始めた。

 

 

「こら!茄子やめなさい。」

「にゃあッッッゴロゴロゴロ」

さっきまで大人しく寝てたんだから空気読みなさいと思うのに、お構いなしに茄子が文にジャレ引っ張り出す。

 

「姫、それは?」

「あ、いや、、、もぅ」

 

はふっと深呼吸を大きくして、朧の方へ向き直る。

「歌を文にして見たの。朧に渡そうと思って。でも!下手だから。笑わないでね。」

 

顔が真っ赤にして、俯き具合になりながら観念して差し出す。朧は文を受け取って黙って読んでいた。もう読み終わってるはずなのに、何も言ってこない。

ばっさり切られても立ち直れないけど、何も言われないのもモヤモヤする。



「ありがと、嬉しいよ。いい歌だね。」

「絶対うそ!どこがいいの!!?」

信じられず朧に詰め寄った。自分でもしょうもない和歌だと思うのに。音ものってる言われたが、正直少しズレてるし。

 

「冷たさが

プールみたいで

懐かしい

入ってみようか

ちょっぴし悩む」

 

「いやー!!読みあげないで!!」

文を奪い返そうと飛び付くが、ヒラリとかわされた。やっぱり捨てて下さいと懇願したが、何を言っているのだと言う顔をすると懐に歌文を隠された。

 

「小夜殿には歌はどう歌うって習った?」

「………こ…心で?」

 

それを聞くと、朧は本当に嬉しそうに微笑んだ。

「姫の心があるから、いい歌だよ。見た事ない月の国に行ったみたいだ。プールとは何だい?」

 

そういう物なのかな?でも確かに、朧の和歌を聞いてると、平安の国にいるんだなって思う。

朧がとても嬉しそうにプールの事を聞くから、頭を悩ませながらも一生懸命説明した。


「プールはね、水浴びとかする場所だよ。夏は涼しくていいんだよ!」

澪菜は大きさを伝える為に、両手をいっぱい広げて説明した。

 

「湖みたいな所か?」

「ちょっと違うかな……もっと人工的な感じ。魚とかもいないし。水着とか着ちゃって、皆で泳いだりはしゃいだりして!!!!流れるプールとか滑り台プールとかあるよ!!」

 

水着も滑り台も殆ど意味が通じていないのだろうけれど、朧は頷きながら楽しそうに聞いてくれてた。だからなのか、余計話しに熱がこもる。

 

 

「なんて説明すればいいんだろう?くやしいな。涼君とよく夏休みはプールに行ったんだよ。是非一度あの開放感を味わって貰いたい。」

夏休みによく通った市民プールを思い浮かべる。こっちではもぅ行けないんだろうな。懐かしい思い出が少しセンチメンタルな気分にさせる。

 

「今度プールとやらは無理だけれど、水浴びにでも行くか?」

「え!ほんと!」


「水浴び!楽しみ。涼君も喜ぶよ。そうだ!千鶴ちゃんや静子さんも誘ってみんなで賑やかに行こうよ。」

「皆でか?」

少し俯きかげんで答える朧。―――もしかして私まずい事言った?朧の顔を覗き込みながら恐る恐る聞き返す。

「だめだった?」

 

「いや、そうだね。皆で行こうか。」

にっこりしていたので、気にしすぎだったのだろう。澪菜はほっと肩を撫で下ろした。

 

 

「では、今夜はもうおやすみ。明日は春晃の屋敷にいくんだろう?」

「うん。」



朧は澪菜の髪に指を絡ませながらくるくると髪をなで、ふんわり微笑みながらおやすみと部屋を後にした。廊下まで、見送ると澪菜は床についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ