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金色の月姫  作者: 藤の花
蒼き竜の雷
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弐‐肆

 

―――ガタンガタン

奥嵯峨の近くまで来ると、竹林が綺麗にそびえ立っていた。どこまでも続く竹林の道は、小夜の言っていた通り赴きを感じた。ここからは牛車を降り、牛車は先に桂の川に回って貰い、澪菜達は歩く事にした。

 

 

「すごーい!竹林ですね。初めてみました。」 

「ふふ。喜んで頂けたみたいですね。」

『緑葉の

揺れる笹の音

聞き惚れて

歩く道筋

歌心もふ』

 

 

「…………!!」小夜さんすごい!イキナリとスラスラ

 

「音にのせただけですよ。」

簡単そうに言うけれどそれが難しいと思う。澪菜も真似して一句歌って見た。


「竹ばやし……

どこまであるいても…………

たけ…ばやし?

…………………」

 

ちらりと小夜をみるとずれてますねとすかさず突っ込みを入れられた。桂の川に着くまで小夜は歌い続けたけれど、澪菜は結局一個も出来ずじまい。

 

 

「澪菜様、初めて何ですから!!これからですよ」

「でも……千鶴ちゃんも歌出来てるのに、私だけ……」

千鶴が励ましたけど、やっぱり自分だけ出来ない事が悔しくて元気がでなかった。

 

「姫様、美しい物を美しいと感じれる心が大切なのですよ。今日の竹林はどうでしたか?」

「風格があって、素敵な場所でした。」

 

小夜は嬉しそうに微笑み、穏やかに答える。

「それでいいんですよ。今日は心を育てに来てるのです。さぁ川岸が見えて来ましたよ。」

 


川を流れる水のせせらぎが、暑さの中に涼しさが感じさせられた。水が綺麗。生水の間々飲んでも大丈夫な気がする位に、透き通っていた。川岸に近寄り、水をすくってみる。


―――ひゃあ!冷たい。涼しくて気持ちいいな。

 

「……つめたさが

プールみたいで

なつかしい

入ってみようか

ちょっぴし悩む」

 

「音のれてますよ!!」

なんかちょっとずれてる気がするが、気にするほどじゃないと二人が褒めちぎる。澪菜に対する採点がかなり甘々だろうが、素直に受け取って喜んだ。


「ぷふる?てなんですか?」

千鶴が不思議そうに聞く。 

 

「プールは水浴びが出来る所だよ。」

「そうなんですか。でも、ここでは水浴びしないで下さいね。」

 

う、千鶴ちゃん鋭い。ちょっと狙ってたのに。



「姫様!折角初めての御歌なんで、文にして東宮様に差し上げたらどうですか?」


え………え!!?朧にコレを!!?恥ずかしすぎる


小夜は気にせずに、先回りさせてた牛車に近付く。中でゴソゴソして澪菜の元に戻って来くると、小夜は上質な紙と筆を渡して来た。

 

「折角だから、私も主上に一句歌おうかしら。千鶴さんもどうぞ。」

小夜と千鶴も紙を眺め、書き始めた。

こっそり覗き込むと、流れる様な流麗な字で書き上げて行く。

澪菜も空気に負け、書き始めた。恥ずかしいので、少し離れた所で。手紙って結構恥ずかしい物なんだ。


「んっと……つめたさが……なんだったけかな―?」

頭を捻り出して、思い出そうとする。まさか文に書こうとなるとは思わなかったから、うる覚えだ。

 

 

「はふっ」

ごろんと横になり、空を見上げる。青い空が広がる。

太陽にぼやけてあまり目立たないけど、月って昼間も出ているんだ。目線を空から川に戻すと、不思議な光景が目に飛び込んで来た。

 

 

「人………?」

川上の方に人がたたずんでいる。若い女の子。遠くからだからたぶんだけど、澪菜と同じ位の年齢だろう。

あそこそんなに浅いの??

女性は水面を歩いている様に見える――。

女性は二歩、三歩、四歩歩き続けた。

滑らかに水面を歩く姿はまるで、優雅に泳ぐ白鳥の様だった。

 

 

その姿にくぎづけになる。つい目で追っていた、その瞬間


ザバッッッッ―――!!水の中に吸い込まれるかの様に、水中へと引き吊り込まれるかの様に、沈んでいった。

 

 

 

驚きのあまりがばっと起き上がり、またその方向を見る。

 

浮いて来ない。溺れたの――!!?

 

「どうしよう」

打掛を脱ぎ捨て、川に入る。

ばしゃばしゃと進んで行くけれど、深く水圧に足を取られ、中々進まない。

すると、水面に影が浮かび上がった。

 

先ほど溺れたと思った女性が顔を出した。女性の下には巨大な影が見える。

影は姿を現した。大蛇の様な体に背には沢山の鱗があり、口には立派に生えているヒゲあった。頭には角が生えて、初めて見る生き物だった。

 

「り……竜……?」

想像上でしか見たことはないけれど、疑いもなくそう思った。澪菜は動けず、その場に立ち尽くしていると、ばちっと女性と目が合った。

 

「あ………」

睨まれた――。

女性は竜と共に再び姿を消すと、さっきまで晴れていた空はガラリと変わり、黒雲がたち込めていた。雨がポツリポツリと降り始め、雷鳴も聞こえ始めた。

次第に強くなって行き、雷が蒼く縦光りをする。



天気の異変に気付き、小夜と千鶴が屋敷に戻ろうと捜しに来た。

 

「あぁ!川には入らないで下さいって言ったじゃありませんか!お怪我ありませんか?」

千鶴が澪菜の打掛を広い、駆け寄った。澪菜は慌てて川からあがる。

 

 

「ごめん千鶴ちゃん…さっきの見た?」

いいえ?と首を傾げる千鶴の反応からすると、竜を見ていないんだと思う。小夜も変わった様子ないし。

 

「天気が崩れてしまいましたね。東宮御所に戻りましょうね」 

 


まさか夢だったって事はないよね?あんな大きいの見間違える訳もないし。

 

澪菜はあの光景が頭から離れなかった。

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