弐‐参
「教えてくれれば会いに行ったんですよ!」
「ふふ。ごめんなさいね。色々準備があって」
準備と聞いて何かあったのだろうか不思議そうな顔を澪菜は浮かべると、小夜は御后教育の準備をしていたと聞かせてくれた。その言葉に先に千鶴が気付いた。
「もしかして、小夜様が先生ですか!!?」
小夜はこくんと頷いた。
「はい。姫様は和歌も琴もすべて初めてなんですよね?厳しく行きますよ!頑張りましょうね。」
小夜さんが先生!!?これは絶対朧の仕業だな!
わかってたなら!教えてくれてもと思いながらサプライズ的な心使いが嬉しく感じる。
「では、姫様!初めは何からしましょうか?楽しんで学んで欲しいですし、最初は姫様が1番やりたい物からにしましょうね。」
やりたい物と言われても澪菜は正直どれもよくわからない。
澪菜は悩んだ結果選んだのは和歌だった。
朧がよく歌ってくれるけれど、意味がわからない。折角歌ってくれるなら意味がわかればいいなって思うだけなんだけれど。恥ずかしさを堪えながら澪菜は素直にそう話すと、小夜は満面の笑みを浮かべて喜んだ。
「まぁ。愛しい方との歌文のやり取りなんて!!素敵ですわ。和歌からにしましょうね」
愛しいって!!
そんなんじゃないと顔を真っ赤にして否定をしたがを説得力がない。
「姫様は可愛らしいですね。そんなに恥ずかしがらなくてもいいんですよ。」
「本当に違うのに」
朧は好き。涼君も好き。千鶴ちゃんも好き。小夜さんも好き。小夜さんがあの人の話しをしている時の表情を見ていると、違う好きなんだなっていうのはわかる。でも、自分の感情に違いがあるのかわからない。
何が違うんだろう。好きなんだけど、この好きではないの?
愛しいその感情をいつかは私もわかるのだろうか。
「では、出掛けましょうか。」
「和歌の勉強するんじゃないんですか?」
「そうですよ。遠出をするので、鬢と外着もしっかり着付けてあげてくださいな。千鶴さん。」
小夜は千鶴に澪菜の出掛けの支度を頼むと、すぐさまぐるぐる巻の厳重装備にされた。
「和歌は五音と七音にのせて奏でるのですが、1番大切な事は『心』です。」
「心………?」
「愛しいと思う心、寂しいと感じる心、花を愛でる心、風情を感じる心。愛しい方を思って歌うのがいいのですが、姫様には早いみたいなので、美しい物を見て美しいと感じましょうね。」
「よろしくお願いします!!!」
美しい物を見て美しいと感じる心―――。朧も言ってた。
心を養い華麗に歌えるようになり、朧にもお返しに歌を贈れるようになれば喜んでくれるかな?
澪菜は頑張ろうと気合をいれた。
「では、奥嵯峨を周りながら桂の川でも行きましょうか。」
「どういうところなんですか?」
「赴きがあって素敵な所よ。きっといい歌が歌えるわ。」
小夜の提案で行き先は決まった。
こうなる事を予想してたのか、小夜が先に朧に断りを入れてくれてたので、出発するのに時間がかからなかった。
「では、いきましょうか。」
千鶴と従者を連れ、牛車に乗り込んで、屋敷を後にした。




