伍
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漆黒の
夜に満ちあふる
月の光
姫舞い降りし
永久の栄光
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教室から逃げ出し、行き場に困った澪菜は、家の近くの公園にいた。はぁ………本当今日は最悪な日だ。
ぎーぎーウジウジしながらブランコを揺らす。
「取り合えず、帰ったらお母さんに謝らなくちゃ。呼び出し確実だよね」
「あと、俺にも謝りなさい!」
こつんと頭を軽く小突かれた。
えっ!!?「涼君!!?」
振り返ると後ろには涼がいた。不思議そうな顔をしている澪菜に、涼は優しく微笑み掛けた。
「俺、待ってろっていったよな?おいて帰るなよ!!」
いやいや、それ所じゃなかったから。
「ほら!!かばん。忘れ物」
「持って来てくれたの?ありがとう」
落ち込み気味の澪菜に涼は冗談まじりに話し出す。
「いやー、今日はラッキーだな。学校サボれて」
「…………」
「怒るなよ!何言われたかは聞いてないけど、きにするな」
俯いたままの澪菜に少し困り、隣のブランコに座る。
「たまに乗ると、結構面白いな。ブランコ!!」
無邪気にブランコを揺らした。めちゃくちゃ楽しそうにブランコを揺らすから、公園であそんでいた子供達が、集まって来た。
「お兄ちゃん、僕らもブランコやりたい!」
澪菜と涼は子供達にブランコを譲ると、楽しそうに子供達はブランコで遊び初めた。
子供達は涼に背中をゆっくり押してもらいながら、ブランコを漕ぐ。
「お兄ちゃん、こっちも押して!!!」
涼は子供達にも引っ張りだこだった。やっぱりいつもどこでも人に囲まれてる涼は、すごいと思う。
「…涼君は……何でここに来たの?」
やっと返事をした澪菜に涼は安堵の表情を浮かべた。
「澪菜は怒られたり、辛かったりした時、イツモここにいたからな!」
そう。小さい頃からずっと近くで守ってくれた涼君。澪菜がからかわれて、公園で泣いている時も、いつも涼は来てくれた。慰めてくれて、元気をくれた。
あの時、涼君がいなかったら、今の私はいないだろう。
かけがえのない、大事な大事な幼なじみ。だから、自分のせいで涼が悪く言われるのは堪らなかった。
「涼君は、何で私なんかといてくれるの?」
「何言ってんだよ!!!」澪菜の頭をぐしゃっと撫でると、涼はにかっと笑った。
「いたいから、いるんだろう?考えた事もないよ。」
いることが当たり前。いたいと思う事が当たり前。そう言ってくれている。
「だめだよ……私なんかといると涼君まで悪く言われちゃうよ」
目を潤ませながら話す澪菜に、何言われたか涼は感づいた。
ああ、俺の事言われたのか。
涼は、複雑な気持ちで今度はそっと澪菜の頭を撫でた。
「大丈夫だよ。俺は何言われても!それにその位じゃ俺様の人気は崩れないぜ!!」
「それとも澪菜は、俺の人脈がその程度だと思ってたのか?」
澪菜は必死に首を横に振った。そんな事思うはずない。
「だろ。だから俺は大丈夫だよ!」
陽気に振る舞う涼の姿を見て、自分の弱さがヒシヒシと感じる。
「涼君は、強いね。」
涼みたいに自分も強くならなきゃと、心に誓い、涼に微笑み返した。
「よし!!笑ったな。じゃあ早速行くぞ!!」
「え?」
「今朝言っただろ!!」
「あれ!どこ行くの?」
「これ!」
カバンからチケットを取り出し、高々とかかげる。澪菜の見たかった、映画のチケットだった。
「お前見たいって言ってただろ。姉貴が前売り買ったのに、彼氏も買ってたって嘆いてて、売り付けられた」
「ひゃー!!めちゃ嬉しい。」
さっきまで、沈んでいた表情が、みるみる元気になった。
「早く行こう!涼君」
カバンを手に持つと、軽やかに走り出した。