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金色の月姫  作者: 藤の花
蒼き竜の雷
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弐‐壱

みーんミンミンみーん。夏のうだる暑さが続く。

 

「澪菜様、おはようございます。」

「千鶴ちゃん……おはよぅふぁ」

寝ぼけ眼な顔で返事をする。

 

「大丈夫ですか?寝不足でしょうか?」

 

 

 

私、月城澪菜ツキシロミオナ。ある日月の光に攫われ時空を越え、平安の国に迷いこんでしまった。

 

平安国に来て、約一年。

この国にもなれてきたけど、どうしてもこの暑さだけは無理みたい。

都は盆地になっているから、暑さは酷いし。ましてや、扇風機やエアコンなんてハイテクな物なんてある訳がない。

 

 

「ごめんなさい。寝苦しくてすぐシャキッとするから!」

桶に張られた水で顔を濯ぎ、目を覚ました。

 

「ぷはッ!!!!すっきり!!!!」

ピョンっと立ち上がり、仕度を始める。

 

 

澪菜は平安国に迷い込んでから、『おぼろ』の屋敷でお世話になっている。

朧はこの国の二番目に立つ権力者で、そんな朧の名目上だけど女御として住んでいる。

まだ入内の儀はしていない。正式には入内をへて女御になるのだろうが、何故か暗黙の了解で澪菜の事を皆女御と呼ぶ。

 

女御とは奥方の事で形だけではあるが。

そんな訳にはいかない!!ただ飯喰らいにならない様、女房達のお手伝いをしている。

自己満足でしかないんだけどね。

 


「すぐお手伝いするから、待って!」

いつも通り手伝いを始め様とすると、女房頭の静子が澪菜を制止した。

「姫様、今日から手伝って頂かなくて結構ですわ。」

 

 

「え………なんで?」

静子の、いきなりの言葉。思いもよらない事に澪菜は動揺を隠せなかった。

――――――役立たずは、出て行けって事!!?

顔面蒼白の澪菜に、静子はクスクス笑みをこぼした。

 

 

「なっ何で!!笑うんですか!」

「かわいいお方だなと思いまして。」

 

――――?意味がわからない。

 

「そんなに心配せずとも大丈夫ですよ。東宮様が手放すはずがありませんから。」

静子はテキパキと朝ごはんの準備を進めながら、話を続けた。

 

「御后教育のお話を前にしたの覚えていますか?」

「……琴にお香に歌に……あと何でしたっけ?」

「そう。宮中の作法と嗜みを教えて頂ける素敵な先生が見付かりましたのよ。」

 

「へぇ……」

って!!!!!!!!!!!!

 

「これで入内に一歩近付きましたね。姫様」

静子がにやりと笑う。



いやいやいやいや!入内って、朧の正式に本当の奥様になるって事でしょ。朧は好きだよ!でも恋愛の好きかどうかなんて、わかんないし!

澪菜は困った表情を浮かべていると、静子はぽつりと言った。

 

「東宮様の事お嫌いですか?」

「嫌いじゃないよ!!ただ」

慌てて答える澪菜を見ながら、静子がクスクスと笑っている。

 

 

「だから!なんで笑うの?」

「ですから、かわいいお人だなと思いまして。」

「???んー?」

そこでかわいいになるのだろう?からかわれてるのだろうか!!?澪菜はさっぱりわからなかった。 

 

「夫婦になられてから、愛を育めばよいではないですか。」

「いや、そういう問題ではないんですけど」

 

「国中の姫の憧れですよ!細かい事気にしないのです。」

細かくはないだろう!と突っ込みたかったけど、静子は気にせず話を続けた。

 

 

「入内は抜いたとしても、姫としての教養を身につけるには、よき機会ですよ。」

 

確かに、琴や香など楽しそうだし、平安国では為になるだろうからやってみたいとは思うけれど。

習ったが最後、流される間々入内させられてしまう気がする。

 

 

「では、本日から参りますから、覚悟しておいて下さいね!」

パチンッッッとウインクをして静子は去った。

――――――

 

「ハフッ」

澪菜は朝御飯をすますと、庭に出ていた。

「茄子ぅ!どおしようかなぁ」

ぱしゃんっ

 

「にゃあ?」

 

結局、断る間もなく静子に押し切られ、御后教育を受ける事に。先生が来るまでやる事もなかったので、暑さを紛らす為に、澪菜は茄子と一緒に庭で打ち水をしていた。

 

 

ぱしゃんっ…ぱしゃんっ

「どんな人だろうね?」

 

「にゃあ。」

茄子は呑気に毛づくろいをしている。

 

 

「もぅっ!ちゃんと聞いてくれないんだから。」

ぱしゃんっ

 

「冷たいッッッ」

冷たい?茄子?――て茄子な訳ない!!

 

「ごめんなさいッッッ!」

打ち水をかけてしまったみたいだ。あわてて声の方を見ると、そこには涼がいた。

 

 

「涼君!!来てたんだ。どおしたのその格好?」

「今日は春晃の使いで来た。」


いつもと違って、かしこまった格好だった。

涼は今、春晃の家に住んでいる。陰陽師の弟子として。

 

「あはは。ウケるよな!俺全く霊力なんてないのに。まぁ、世話になってるし、ぽく見える様にはしなきゃな」

相変わらず、涼は順応性が高く、春晃の所での生活も上手くやっている様だ。

 

「まぁ、こんな所で立ち話もなんだし。見付かると、またあらぬ容疑かけられそうだから、後で春晃の家まで抜け出してこいよ。」

 

「うん。あっ!!!!でも今日は無理。明日でもいい?」

 

「別にいいけど、何かあるのか?」

涼が不思議に尋ねて来た。

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