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金色の月姫  作者: 藤の花
月より舞降りた鬼の姫
43/79

肆拾参

――――

 

「その娘さんが、小夜さんだったんですか…?」

小夜はコクンっとうなづいた。澪菜はあまりの衝撃に戸惑いを隠せなかった。

 

「苦しむ為に生まれて来たってそんな悲しい。絶対何か理由があるはず。」

ポロポロと涙を流す澪菜を見て、小夜は不思議な顔をする。何不自由のない姫が泣くのかがわからない?

 

「姫様は愛されて生きてこられたでしょう!私の気持ちなんてわからない」

 


澪菜はスルリと髢を外した。ふわっとした月色の髪が現れる。

 

「金色の髪!!!!?」

小夜は目を見開いて、澪菜の髪にくぎづけになる。

「姫様あなたは」


「驚きますよね。でも私も人間なんです。私は朧や、涼君や、千鶴ちゃんいろんな人に助けられて生きて来たから一緒にしたら、小夜さんは怒るかもしれないけど。同じではないけれど人と違う悲しみはわかります。」

 

 

「…………。」

小夜は黙って聞いていた。

 

 

「幸せになって貰いたい。死ぬ事しか考えてないなんて寂しいし悲しいです。」

 

 

――――――――寂しい?悲しい?

あの人と同じ顔をして悲しむ


「何これ」

頬をつたう、温かい雫。指先で触ると、小夜の頬にも涙が流れ落ちていた。

あの人がいなくなって。私の涙は枯れ果てたと思っていたのに。

 


わたしは

悲しかったの――?

寂しかったの――?

 

今まで抑えてきた感情が一気に溢れだすかのごとく、小夜は涙を流した。



―――

落ち着くと、三人は小屋に戻って行った。時間はもう朝になりかけていた。

「涼君達待ってるだろうね。」

 

 

小屋に着くと、涼と千鶴が出迎えてくれた。

 

「皆様!ご無事で何よりです。」

千鶴が嬉しそうに駆け寄る。

 

「千鶴さん。ごめんなさい、私のせいで御足労かけて」

申し訳なさそうな顔をしている小夜は、笑顔で「いえ。ご無事でなによりです」と答える千鶴。それにつられて、小夜にも笑顔が出る。

 

 

「あら、澪菜様髪が!」 

「千鶴ちゃん、ごめんね。はずしちゃって!付け直して貰えるかな?」

 

「はい。喜んでさせていただきます。」

澪菜の髢の支度をしながら、再び作戦会議が始まった。



「不老不死」それは求めてはいけない産物。

仮に見付かったとしても、帝にもいつか同じ悲しみを与えてしまうだろう。かと言って、妙薬を見つけなくては、澪菜の身が危ないのは変わらない。


どうしたらいいものなのか。またふりだしに戻ってしまった。

 

 

「話してわかる相手ならば、こんな事にはならないんだがな」朧がため息まじりに呟く。

 

「一度、都に戻る?」

都に戻ることが危険な事はわかっていたけれど、もうそれしかなかった。

 

「そうだな。春晃の助言も聞きたいし。姫すまないね、何も出来なくて…」

朧は悲しげな表情だった。

 

 

「朧が悪いんじゃないよ!!」

「いや父の事なのに、私が何も出来ないなんて。力がないのが、狂おしい。」

 

「朧。」

 

「なんなら、最悪!帝なんかに連れてかれる前に!!賊にでもなって俺が澪菜をさらってやるよ!」

涼がおどけながら、励ます。

 

「もぅ。涼君は危ない事しないでよ。でもありがと」

 

 

道は一つしかない。都に戻って。帝をなんとか諭すしかない。『死』に捕われている帝を諭すのは、『妙薬』を見つけるより遥か難しい事かもしれないが、悲しみを増やさない為には方法はそれしかなかった。

 

 

「あの」

小夜が話しに入って来た。

 

「先程から、『帝』って耳にするのですが、もしやあの今上帝様ですか?」

「えっあぁそうだ。まだ言ってはなかったね。」

 

「帝。帝の御子東宮様でしたか。」

 

「小夜殿は、父を知っているのか?」

 

 

「この長い間生きてると、様々な出会いがありました。帝が幼き頃少しばかりお会いにあった事はありますがきっと御方には記憶にも残らぬくらいでしょう。」

 

「そうか。」

 

「帝の御子の元に姫が舞い降り、姫がわたくしの所に来る。これは何たる運命の糸。忝ございませんが、ご一緒に都に連れていっては貰えませんか?」

思いがけない小夜の言葉に一同ビックリする。

 

 

「小夜さんそれって、、、一緒に来てくれるんですか?」

 

 

小夜は澪菜に、にっこり微笑みながら答えた。

「はい。死に御心囚われている、主上おかみとお話してみとうございます。姫君のお役には立てないかもしれませんが、よろしくお願いします。」

 

 

「では!全は急げだな。決まったなら都に戻るか。小夜殿ありがとう。」

返事を聞き終えると、朧は立ち上がり、旅路の支度を始めた。

 

 

先程まで、死んだ様に暗くなっていた皆の顔に光が戻る。

この間々上手く進めばいいのに。誰しもがそう願っていた。

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