肆拾
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目が覚めた時は朝になっていた。
「ん……どれくらい寝てたのかな」
隣で、朧達三人がざこ寝していた。あのあと、朧が涼と千鶴をここに誘導したのだろう。
起こさない様澪菜は布団から起き上がった。
体が突き刺さるほどの痛みがなくなっていた。
「小夜さんの薬凄すぎ」
澪菜は小夜が家の中にいないのに気づき、捜し始めた。
朝早くからどこに行ったのだろうか?
ドアをギィーと開き外に出る。辺りはまだ、薄暗いくらい。山奥の澄んだ空気が気持ちいい。
「あら、姫様御目覚めですか?」
小夜の声が聞こえて来た。
「小夜さん!!昨日は有難うございます。」
「元気になってなりよりですわ。」
「薬すごい効き目なんですけど!あれはなんだったんですか!!?」
「ふふ。秘密」
小夜はニッコリ微笑んで、軽くかわした。あまり知られたくないような珍しい薬草だったんだろうか?
「朝早いですね!どちらまで行ってたんですか?」
「水を汲みに川までですわ。」
小夜の手には桶が握られていて、まだ川まで何往復かするみたいなので、澪菜は手伝う事にした。
川までの道程は、木々が生い茂り、空気が美味しい。山奥なだけあって見たことない、動物達も顔を出していた。
しかしその反面やはり、人気が全くない分一人で住むには寂しすぎる場所である。
「小夜さんは、何で一人で山奥に住んでいるんですか?」
「私は人里には住めない人間だから。」
小夜はポツリと答える。
人里に住めない?
「……喘息?……とかですか」
「ちょっと違うけれど、そうね。ある意味『病い』なのかもしれないわ。一生治らない。」
重い空気になっているのに気付き、小夜がフォローをする。
「ごめんなさいね。暗い話になっちゃって。大丈夫!私は一人で住んでる方が気楽だし、人里にいた時の方が寂しかったわ。」
口ではそう言っているが、小夜の寂しそうな表情を見逃さなかった。
「あの、、、私達、この旅が終わったら都に戻るんですが、一緒に来ませんか?いい医師に巡り会えるかもしれないし。」
「…………。」
小夜の表情はますます暗くなっていた。
「すみませんでしゃばった事を!!気に障ったなら謝ります。」
「あ、大丈夫よ。有難う。嬉しいわ。でも姫様と違って人の中で生きる資格がないの…」
資格って、、、そんな事言ったら、私の方が資格ないよ。
この国の人間じゃないし。
朧に助けられなかったら、今はないだろう。
それに、今は髢をつけてるから気付かないけど、『鬼』と恐れられている―。
ただ、この会話はお互い空気が重くなるのを感じ、ここまでになった。小屋に戻ると、朧達は目を覚ましていた。
何も言わずに出てきてしまったから朧は小屋の周りを澪菜を探してた。
「ごめんなさい。疲れてそうだから声かけなくて」
「姫、もう具合は大丈夫なのかい?」
心配そうに朧が見詰める。
「はい、小夜さんの薬湯が効いたみたいで!凄い薬だね」
よかったと澪菜の頭を軽く撫でると小夜の元に行った。
「小夜殿、ありがとう。」
「いぃえ。困った時はお互い様ですわ」
御礼にと、朧と涼は女性の一人暮らしには大変な力仕事を手伝っていった。
「ふふ。頼もしいわ」
小夜が嬉しそうにしてるから、澪菜も嬉しかった。だってこんなに素敵な人なのに、悲しそうな顔して欲しくない。
「姫様方はどちらにお向かいなんですか?もし、よかったら抜け道を案内できるやもしれません。」
「どちら、、、。」
もしかしたら小夜なら、あんな凄い薬を知ってるから、不死の妙薬の事を何か知ってるかも知れない…。
そう思い思い切って聞いてみた。
「実は、訳合って『不死の妙薬』を探しているんです。」
「え?今なんて……言いました?」
一瞬間があいて小夜は聞き返した。
「不死の妙……」
ガタンッッッッ!!
澪菜が言い終わる前に小夜は手に持っていた物を地面に落としてしまった。その手は震えていて、顔も今にも倒れるのではないかて思うくらい青ざめていた。
「さ、、、小夜さん?」
澪菜は、心配そうに小夜の顔を覗き込むと、さきほどまでの穏やかそうな小夜と違い、大声を荒げた。
「なりません!!なりません!!『不死』なんて求めるのは罪深き事!!!!そんな私欲捨てなさい」
「えっ…」
異変に気付き、朧が澪菜の元に戻ってくる。
「小夜殿?いかがなさいました?」
「あ、、、取り乱してすみません。ただ、私から言える事は不死なんて求める物ではありません。」
小夜は我に返ると物凄く暗く、魂の抜けきった表情になっていた。




