肆
「黙ってないでなんかいったら?」
「いい気になってんなよ」
「そんなんだから誰も相手しないんだよ」
ある事ない事、言いたい放題いい始めた。
「金髪でかわいーと思ってんの!」
「態度でけーんだよ」
「涼も何でこんな女構うのかね!!趣味悪いんじゃん」
早く気が済まないかとじっと堪えていたが、澪菜の耳に聞きづてならない言葉が入って来た。
…………………………プチッ………プチ………ッッッ
「………今ななんていいいました……?」
震える声を必死で絞り出した。
「涼君に謝って!!!!!!」
「なに、いきなり!生意気な」
「謝って!!!」
突然一歩も引かない、澪菜の強気な態度にカァーっとなって手をあげようとしていた。
打たる!
「きゃー」「危ない!!」クラスの子がさすがに危ないと感じ声をあげたのだ。
一瞬の出来事だった。
やられると思い澪菜は反射的に、手に持ってた弁当箱を投げ付けていた。
「やっ――!!」ガシャン
クリーンヒット。我に返ると、目の前にはお弁当まみれの女の子達が立っていた。頭には美味しそうに、厚焼き卵が乗っている。
「……つ…つい」
騒ぎすぎたせいか、人が集まりだしていた。
「先生こっち」遠くから先生を呼んでる人もいる。
廊下から先生の声も聞こえてきた。
よりにもよって、掴まったら面倒な、学年主任で生徒指導も担当している先生の声がする。
「ヤバイ!!面倒な事になるよ」
多少なり、自分たちにも非があると感じているからかは謎だが、女の子達は慌てて逃げていった。しかも「覚えてろよ」なんてありきたりな捨てゼリフを残して。そんなセリフ、ドラマの中だけだと思っていたけれど本当に聞くとは。
女の子達が消えた教室に澪菜だけ取り残された。
さっきまでの出来事、傍観者は沢山いたけれど、誰も庇ってはくれないだろう。このままだと、私だけ尋問だ。
澪菜も、慌てて教室を飛び出した。
逃げたって後で待つ事は変わらないけど、今は逃げるしかなかった。