参拾玖
「姫!!」
「澪菜!」
「澪菜様!!!!」
崖の上から必死に三人が澪菜を捜す声がする。早く元気な姿を見せたいが、戻ろうにも打ち付けた場所が痛くなかなか動けない。そうしている間にガサガサっと茂みから、また物音がした。
山賊まだいるの!!?熊の可能性も!?
物音の方から目を反らさずに、後退りする。
しかし、茂みから出て来たのは、山賊でなく女性だった。
「あら、こんな山奥に。崖から落ちたの?」
女性は澪菜の方に近寄って来る。
「山賊、、、じゃない?」
「賊に襲われたの?ではまだ近くにいるかも。ここは危ないわ!立てる?」
あわてて女性は澪菜に肩を貸しながら立たせた。
どうやら山賊の仲間ではないようだが、こんな山奥に女性が一人。誰なんだろう。
「もしかして…式神さん…?」
「??」
さっき助けてくれた式神かとも思ったが、反応がないから違うのだろう。風貌も白髪だった式神と違って、普通の黒髪の女性だった。
「姫!!」と聞き慣れた声がしたので振り向くと、朧が崖を回って降りてきた。
「無事だったか!よかった。」
ほっとした顔をしている。
「怪我はしてないか?そちらの女性は?」
朧が女性に気付いた。
「わたしは、この近くに住んでいます。小夜と申します。姫君様怪我をなさってるみたいですし、よかったら手当てしていきますか?」
「あぁすまない。可能ならば世話になりたい。」
朧は澪菜を抱き上げる。澪菜は顔を真っ赤にして「歩けるから、大丈夫だよ!」と盛大に断ったけど、朧はにっこり微笑んで離してはくれなかった。目は笑ってない。
「本当は、全身痛いんだろう?大人しくしてなさい。」
「………はい。」
大人しく朧に運んで貰うことにした。小夜は二人をみてあらあらと笑っていた。
小夜の後を着いて行く事数十分。小さな山小屋らしき場所に辿り着いた。
「狭くて何も無い所ですが。そちらに寝かせてあげてください。」
小夜の言う通り、六畳くらいの部屋に必要最低限しかないかと思われるくらい、質素な小屋だった。
「ありがとう。世話になる!」
朧は澪菜を下ろすと、ゆっくり寝かせた。
「では、姫様に煎じる薬草捜して参ります。私以外は誰もおりませんので、気兼ねなく休んでいて下さいな。」
そう言うと、小夜は外に出て行った。
他には誰もいない
山奥の小屋に女性が一人。
暮らしに不便だし、何よりも山賊か山犬くらいしかいない場所に女性が一人で住んでいる。怪しい前に、危ないのではないのか!
そんな心配をしてるのを他所に、小夜は何事もないよう戻って来た。手には不思議な液体を持って。
「さぁ、澪菜さん。これを飲んで下さいね」
小夜に渡された液体は、赤黒く禍々しい雰囲気が漂っていた。
「………」
「見た目はあれですけど、効き目は保障しますわ。」
これ……飲むの…?匂いは普通に薬みたいなにおい。
しかしこの色!飲むのには勇気がいる。
「大丈夫ですよ。飲みやすく煎じましたから。」
「はい。」
薬湯の入った椀をじっと眺める澪菜に、皆の視線が集中する。
えぇいっ!
思い切ってぐびっと飲んだ。
…………!!?
「ん??????飲みやすい!!」
目をパチパチしながら驚く。
「少し眠気が来ると思います。起きたら、大分よくなってると思いますので、ゆっくりお体お休めくださいね」
ふぁぁ
小夜の言葉通り、澪菜に眠気が襲って来た。
ただ、少しではなく、強烈な眠気だったけど。




