参拾捌
「姫?疲れたかい?少し休むか?」
「はふぅ。」と澪菜の疲れた息使いに気づき、朧は馬を止めた。
辺りをキョロキョロ見渡し、馬から飛び降り、澪菜をふんわり抱き上げ馬から降ろした。
涼と千鶴も続いて止まり、馬から降りた。耳を澄ますと、奥から微かにせせらぎが聞こえて来る。近くに涌き水があるのだろう。
「水くんでくるから、そこで待っていなさい。」
ふんわり笑うと、朧は一人奥へと進んでいった。
「澪菜様、大丈夫ですか?」
「うん。ごめんね……足引っ張って……皆の方が大変なのに………。」
「何言ってんだ!気にするなよ。今は皆、運命共同体なんだろ。」
そうだ。こんな所でめげてる場合じゃない!!!!!!
二人に励まされ、澪菜は気を取り直し立ち上がった。
「よし!頑張るぞ!!」
すると、ガサっと後ろから音がした。
「朧?ありがと」
朧が戻って来たかと思い振り向いたが、誰も現れなかった。
「お………ぼろ?」
「下がってろ。」
涼は澪菜と千鶴を一歩下がらせ、落ちていた長い枝を拾うと構えた。「出てこい。」と音のする方に目掛けて叫ぶが、ガサガサと響くだけで出て来ない。
「まさか熊?」と千鶴は呟きながら、澪菜を守る様に立つ。
三人は息を飲み、一点を見詰めた。
物音と友に現れたのは、朧ではなく熊でもなかった。
「ヘヘヘ……こんな山奥に!高そうな服着てる奴らがきますぜ。」
「今夜は良い物食えそうだな。」
――――――山賊!!?
「身ぐるみ置いて行きな!」
山賊達はニタニタ笑いながら、一歩づつ近寄ってくる。
手には灘を持ち。
「女、可愛い顔をしているじゃないか。二人もいるし楽しくなりそうだな!」
「この!薄汚い手で近寄るんじゃねぇ!」
涼が山賊に飛び掛かる。一瞬怯んだが、枝と灘では部が悪い。
「澪菜、今のうちに朧呼んで来い!」
「う……うん!」
澪菜は、朧が行った方向に走り出したが、後から来た山賊の仲間にまわり込まれていた。
「逃げようったてそうはいかないぜ!」
腕を思いっきり掴まれ、身動きが取れなくなってしまった。千鶴は澪菜を助けようとするが、全く歯が立たない。やはり、澪菜同様捕まってしまった。
「澪菜!!千鶴!!」
「よそ見してる場合じゃないだろう。兄ちゃん」
「くそぉぉぉぉっッッッ!!!!!!」
その瞬間、涼と戦いを交えていた、山賊がどさっと倒れた。
――――何だ!!?
朧が山賊に刀を突き立てていた。
「騒がしいと思ったら、追い剥ぎか。」
いつもふんわり笑う表情はなく、視線だけで相手を殺せるんじゃないかと思うくらい冷たく鋭い目つきだった。
朧は腰刀を一本涼に投げた。涼は受け取ると、朧に加勢する。
「私の姫に手を出した事、後悔するがよい。」
威圧的な目で敵を射り、次々と薙ぎ倒して行った。
「やべえよ?こいつずらかるぞ!」
圧倒的力の差に怯え、慌てて逃げる山賊に澪菜は突き飛ばされ、よろけ倒れた。
「痛っ。」
「姫!危ない!」
カラン――――――。
澪菜が突き飛ばされ、投げ付けられた拍子に不安定な足場が、カラカラと崩れ落ちそうになっていた。
その瞬間、足元が崩れ始めた。
「姫!間に合ってくれッッッ」
朧は勢いよくかけより、澪菜の腕を掴もうとする。
「くっッッッ」一瞬掴めた様に思えたが、スルリと抜けて、崖の下へと転げ落ちてしまった。
ガタガタガタガタッッッ
「キャアァァ」
―――痛い
崩れ落ちた所は急な崖になっていて、なかなか止まらない。全身を打ち付けていて、痛みで意識が遠くなりそうだった。
涼君――
朧―――
千鶴ちゃん――
母さん――父さん――
走馬灯の様に皆の顔が目の前を走る。
もぅだめ――――
諦めかけたその時、澪菜の胸元が熱く熱し出した。
な…に……着物の懐から熱する物―
「春晃さんから貰った…札が……?」
札は光輝き、その光は澪菜を包みこんだ。
熱い――眩しい――
転げ落ちる体がふわっと軽くなる。
その感覚と供に、目の前に女性がたっているのがわかった。美しい白髪でスッキリした顔立ちの大人な女性。足元を見ると、足はあるが地に着いてはなく、宙に浮いていた。
「一度だけ式神を召喚出来る様、春晃の力が込められている」
白菊の言葉が脳裏を過ぎる。
「もしかして式神さん?助けてくれたの?」
白髪の女性は澪菜の方を見て微笑むと、スッと姿を消した。




