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金色の月姫  作者: 藤の花
月より舞降りた鬼の姫
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参拾漆

外が薄明るくなって来た頃、澪菜は物音で目が覚めた。

パカラッパカラッ

 

「ん??馬?」

ソロリと起き上がり、外を覗いて見る。庭で涼が馬を乗り回していた。

澪菜に気付いた涼が、馬から降りて近づいて来た。

 

 

「涼君!馬のれたの?いつの間に!!?」

 

「今、練習してたんだよ!結構様になってんだろ!いやぁ、本当俺って惚れ惚れするくらい器用だよな。」

自画自賛する涼に、ツッコミをいれる。

 

「褒めすぎ!」

しかし、初めて乗ったとは思えない位の鮮やかさではあるのは事実だ。

 

 

「私も練習してみようかな。」

 

「いや!お前じゃ無理だよ。」

 

「ひどーい!!確かにそうだけどもしかしたら奇跡が起きるかもしれないでしょ!」

 

 

澪菜は、馬の毛を優しく撫でながら様子を見る。

馬は大人しく撫でられていた。

 

―――よし!大人しい子だから乗れそう!―――

思いっきり飛び乗ろうとするが上手くいかず、ズドーンと落ちてしまった。

 

「キャアァァ!!うぅぅ…痛い」

 

「大丈夫か!!?だから言っただろ無理するなよ!」

涼はビックリした馬が興奮する前に落ち着かせ、澪菜を引き起こし立ち上がらせる。


「いくら大人しくても急に飛び乗ったら馬も、びっくりするだろう。」

優しく馬を撫でると、喜ぶように涼に顔を擦り付けてきた。人の心のみならず、馬の心まで掴むなんてすごすぎる。


叫び声に気付いた朧と千鶴が中から出て来た。千鶴は慌てて澪菜の元に行き様子を見る。

着物に着いた土をすぐさま払い落としながら怪我をみつけた。


 

「まぁ、お怪我を!おいたわしや…」

 

「大丈夫だよ。これ位!」

怪我と言っても、落ちた拍子に手のひらをを少し擦りむいただけだった。

 

「何を言ってますか!傷跡でも残ってしまったら…澪菜様は少し無頓着すぎますよ!」

ボロボロ泣き出す千鶴に澪菜はたじたじになる。

こういう時、なんて言葉をかけていいのかがわからない。

 

 

「千鶴ちゃんごめん」

「コンナ危ない真似せずとも姫君ならば、都でゆったり出来るはずなのに」

 

 

まずい!!!!非常にまずい!!

千鶴なら、危ない所に連れて行かないって言い出しかねない。

「無理しないから!ちょっと涼君とじゃれてただけだし。早く出発の準備しよ」

 

必死に話をすり替え、屋内に戻った。

澪菜は千鶴に仕度を調えて貰い。出発の仕度は完了した。

また、着物をグルグル巻きに着付けられそうになったけれど、「山道を馬で移動になるから、返って危ない」と朧が助け船を出してくれたお陰で、動きやすい軽装でまとめあがった。千鶴は少し不服そうだったけれど、朧の言う事だから素直にしたがった。



「さて、姫は私が乗せていこうか。涼、お前は馬結局は大丈夫そうか?」

 

「あぁ。朝試し乗りしてみたけど、余裕!!なんなら、澪菜は俺が乗せてくぜ!」

 

「慣れてないんだから、乗せるのは、危ないだろう。」

スッパリ、涼の言葉を切り捨てた。

いつもなら、ここで言い争いになりそうだが、思いも寄らず涼が引いた。状況を考えると、いがみ合ってる場合でないのは、涼もよくわかっている。

悔しいが、乗馬の腕で朧には敵わないだろう。

 


「あぁ。わかってるよ!冗談だよ。澪菜の事は任せたぞ!澪菜、気をつけろよ」

 

「うん。涼君もね」

そう告げると、涼は馬の元に行き馬具の調整を始めた。

 

 

「千鶴は?」

朧が今度は千鶴に尋ねる。

 

「はい。乗れます。」

 

「千鶴ちゃん!!馬乗れるの!!?凄い」

 

「自信はないですが、足手まといにはならない程度なら大丈夫です。」

千鶴の家は地方貴族の為、宮仕えする前は田舎にいたので多少自由があったらしい。幼い頃は結構おてんばだったから乗馬もやりたがって覚えたと顔を赤らめながら説明してくれた。



馬具を付け終えると、直ぐさま馬を走らせた。

足元は不確かな場所が多く、木々が生い茂り視点が見づらい。山道は想像以上に険しく、一歩間違えば怪我じゃすまない様な道程が永遠と続いた。

 

 

「姫しっかり捕まっていなさい。」

 

「はい。」



朧は、涼と千鶴がついて来ているか確認しながら、足早に馬を走らせている。

澪菜は振り落とされないよう、馬にしっかりとしがみついているのが、精一杯だった。

 

 

 

そして、何日も山を越え、谷を越え、走り続けた。

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