参拾肆
「さて、誰を遣いにだすか?」
重要な役割だから、下手に頼めない。朧はもう一仕事が残っていたから、すぐには行けず悩んでいた。
「私が行くよ?」
「姫!」
「自分の事だし。従者さん達も千鶴ちゃんもいるし。適当な理由付けて帰り道寄って貰うよ!」
「今日もいろいろあったんだから、早く休んだ方がいい。」
気遣ってくれるのは嬉しいけれど、こんな気分だからこそ何かしていたかった。
「涼君の事……気になるし………」
涼の顔を見て安心したいって言うのも、あったのだろう。
朧は察してくれて、澪菜に頼む事にした。
「わかった。涼と白菊によろしく言っといてくれ。従者には私から上手く話しておくよ。」
従者に頼むと、門まで見送りし、朧もまた仕事へ戻っていった。
春晃の屋敷までは、日が暮れる前には何とかついたが、予想より時間がかかってしまった。
それもそうだろう。前回は馬で、今回は牛車。
春晃の屋敷に付くと、白菊が門まで迎えに出て来ていた。
「お待ちしておりました。」
白菊は澪菜だけ、部屋の奥まで連れていった。
「こちらですね!不死の山の詳しい位置と、あと、札です。」
「ありがとうございます。札は?何の札ですか?」
「はい。春晃様が着いて行けない代わりに、式神が一度だけ召喚出来るよう、春晃様の力を封じ込めてありますので、お守りがわりにお持ち下さいネ」
ただの紙にしか見えないけれど、春晃がと聞くと凄いんだろうなと思う。有り難く受け取ると、時間もないので、テキパキと帰る準備を始めた。
「涼君はコチラでお世話になってるんですよね?」
「涼殿ですね!はい、呼んで来ますね!」
白菊はにぱっと笑うとパタパタと涼を呼びに行った。涼は白菊に連れられてすぐに部屋に来た。
「澪菜!来てたのか!」
明るい表情で目の前に立ってる。
「涼君!!」
「ん!?どうした??何かあったのか?」
涼ではないとわかってはいても、生々しい光景が頭から離れない。涼が生きていたと言う実感にやっと会えた気がした。
「うぅん…ちょっと怖い夢を見ただけ………。」
涼に心配かけまいと、最上級の笑顔を見せた。
涼はポンッと頭を撫でるた。
「何かあったらすぐに言えよ!」
「うん。」
「そうだ!不死の山の事何か掴んだか?」
「うん!春晃さんが詳しく調べてくれて。それを預かりに来たの。」
渡された物を掲げながら答えた。マジマジと二人で見たが、よくわからなかった。
「ふーんこれがか、、、よくわからんな!」
「字も流麗過ぎて…何書いてあるかわかんないね。」
「まぁアイツ朧だっけ?アイツならわかるだろう。」
苦笑いしながら顔を見合わせる。
「明日には出るのか?」
「わかんない。朧の都合によると思うけれど、多分行くと思うよ!」
今直ぐにでも、探しに出たいのは山々だけど、朧に見て貰わなければ場所はわからないし、ましてや、一人で行く事は許してはくれないだろうと思う。
「俺も付いて行くから、明日の朝そっち行けばいい?」
―――!!!!
「だめッッッ!!だめだめだめだめッッッ!!!!絶対だめ!!!!」
澪菜の勢いに、涼は驚いた。
「なんでだよ?」
「危ないよ!!!!また捕まっちゃったらどうすんの!!?」
「大丈夫!!同じヘマは二度もしないよ」
楽観的に涼は言うが、澪菜は怖かった。
――――もぅ―――二度とあんな光景みたくないよ――――――
澪菜が一気に暗くなる。
「はぁわかった。一緒に行くのは譲らないぞ。何処で待てばいい?」
「本当に!!よかった。」
澪菜はほっと一息した。
「涼君が一緒について来てくれるのは、心強いよ!朧に頼んで、ここに寄って貰うから待ってて!!」
「わかった。」
話しがまとまると、澪菜は帰りが遅くなってしまわない様に、牛車に乗り、東宮御所へと戻っていった。
「このままじゃ、兄ですらいられないかな……」
見送りながら、ぽつりと呟く。
澪菜が自分から行動するのが嬉しかったけど、反面、前ほど頼って来ないのが寂しかった。
涼はそんな複雑な気分だった。




