参拾弐
きっと何か考えてるはず。会って聞いてみないと。
澪菜は千鶴て静子に詰め寄った。
「姫様、今日は東宮様には会えませんよ。」
「教えて頂けないのなら、勝手に探しに行くだけです。お願いします。」
静子は余計な事を言ってしまったと後悔しつつ、千鶴を呼び寄せた。
「はい!」
「千鶴、姫様の御支度お願いします。勝手に出掛けられるよりはいいです。供の者呼んで参りますので、少しお待ち下さいね」
そして静子は、苦笑いながらもテキパキと準備を始めた。
澪菜は千鶴にグルグル巻きになるぐらい、着せられてた。
「千鶴ちゃん着せすぎじゃない?」
「澪菜様前も言いましたが、人前に出てしまうのですから!!足りないくらいです。嫌ならおとなしく部屋にいてください!!」
「はい。」
大人しく巻かれる事にした。
「後、髢をつけて終わりますからね。」
さらさらと熔かしながら、つけていく。金髪が黒髪に変わっていく。なんか凄く不思議な気分。
鏡に写る黒髪の姿が、嬉しい反面、自分じゃないようで何ともいえない。
「出来ました。」
足元まで伸びた黒髪。小さい頃から憧れてやまなかったその姿が、今目の前にある。
「御綺麗です。」
「ありがと。千鶴ちゃん」
支度が終わると、門の外に車の準備も完了していた。
深々とお辞儀をする。
お供に従者が二人に千鶴もついてくる事になったからだ。
「姫様、我々にお任せください!」
澪菜は牛車に乗り込むと、朧がいる場所まで走り出した。
ガタコン……ガタンッ牛車に揺られて、一時間くらいたつと、物々しい建物が見えて来た。
「なんか……薄気味悪い……感じがするね」
小窓から覗きながら澪菜が呟く。
「そうですね。ここは国中の極悪犯が集められ、最期を迎える場所ですから…。成仏仕切れない御霊が沢山いるんですね」
朧がここにいるって事はやっぱりなのかな?
処刑場の門をくぐり、中に入った。奥からは、呻き声が聞こえて来た。処刑の順を待つ囚達が暴れ騒いでいるのだろう。
処刑場の中にある建物の前に着くと、牛車は止まった。
「東宮様にお会いに参りました。東宮女御様であらせられる。お通し願えますか!」
従者の一人が門番に取り次ぎ、中に入る事が出来た。
血生臭い。異臭で気持ち悪くなりそうなくらいだ。
「こんな所で仕事しているんだ。」
「東宮自らおいでになられるのは珍しいですよ。」
「そうなんですか?」
「はい。普段は祭事にお忙しいのですので。」
従者と会話をしながらトコトコ歩き。気を逸らす為に、会話をしていたが、進めば進むほど、血生臭さは濃くなり、殺風景になる。1番奥の小さな部屋の前に着くと、従者は立ち止まった。
「こちら奥の部屋ですね。では、姫様いってらっしゃいませ」
そろっと中に入って行くと、朧が中に座っていた。
疲れている表情だ。朧は澪菜の気配に気付き、驚きながら澪菜の方にやってきた。
「こんな所へ、早く屋敷に戻りなさい」
「朧に会いに来たんだけれど」
周りをチラッと見る。それに気付いた朧は人払いをかけた。
「何かあったのか?涼の事は任せて起きなさい。信用ないかい?」
澪菜は首をブンブン横に振った。朧を信じられないわけじゃない。が朧のとても疲れた表情を見る限り無理をしているのがわかる。
「姫には何でも話すって言ったからね。処刑は残念ながら行われるよ。」
「!!!!じゃあ涼君は!!?」
「こっちに来なさい。」
朧に澪菜と手を繋ぐと地下に降りて行った。薄暗い中、牢が建ち並ぶ。足元に気をつける様にとゆっくり進んでいった。不気味さに、澪菜は朧の手をギュッと掴んでいた。
「怖いかい?もっとくっついてもいいんだよ?」
「大丈夫!!です」
「おっと、姫着いたよ。」キィーっと牢を開け入ると中には、春晃と涼がいた。
「東宮様、それに姫君まで」
春晃は二人が入って来たのに気が付いた。しかし、涼は無表情にただその場に立っていた。澪菜は涼に近付き、肩を揺らすが反応がない。ぼんやりと何処か遠くを見詰めているだけだった。涼に必死に話し掛けたが、無反応は全く変わらなかった。
「姫、それは涼ではないよ。」
「何言ってるの!!?」
確かに、その様子は涼とは思えなかったけれど、風貌は、どこからどう見ても正真正銘涼である。
「私からご説明致しましょう、その涼は偽物です。本物は私の屋敷にいる。」
目の前にいるのは涼であって、涼でない―――?ん――!!?
「わからないのならば見せてあげましょう」
春晃はそう言うと、腰の刀に手を伸ばし、思いっ切り涼を切り付けた。
ザンッッッッ
「キャーッッッ」
切り付けられ倒れて涼は、次第に人から紙に変わっていった。
――――――――――――――えっ
紙を拾いながら、春晃が答える。
「式神です。紙にアイツの御霊のカケラを添えている。」
「どういう事?」
「処刑はどうあっても止められない。罪を許してしまえば、犯罪は多くなるばかりだ。」
朧が悲しげな顔をしながら澪菜に言う。
「でも力を力で抑えても、何も変わらないよ。悲しみや憎しみが生まれるだけだよ。」
「姫、貴方の言う通りだ」
朧は澪菜の頭を撫でながら、切なそうな笑顔を見せた。
「力がないと何も出来ない世の中だ。悪循環でしかないかも知れないけど、それで大切な物が守れるなら、私は力を使うよ。」
迷いのない朧の目に、澪菜はなにも言えなくなった。




