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金色の月姫  作者: 藤の花
月より舞降りた鬼の姫
31/79

参拾壱

カラリと御簾をあげ、朝の光が差し込んだ。

「澪菜様!お早うございます。」

 

「千鶴ちゃんおはよう。」

あの後、澪菜は朧と一緒に東宮御所に戻って来ていた。

すぐにでも探しに行きたかったけど、春晃が史書で不治の山の詳しい地理を調べる時間を待っているのと、朧が一仕事終えてからでないと、出掛けられないからであった。

涼は、東宮御所に入る訳にも行かないので、大人しく春晃の屋敷で待っている。

 

「千鶴ちゃん、朧はもう仕事に行った?」

 

「はい。昨日の賊の件の後処理に出掛けられました。」

 

 

昨日の………。

「本日は御所からお出になられませんよう、おおせ付かって下ります。」

 

「大丈夫。わかってる」

涼の事は上手く丸めておくって言ってたけれど、どおするんだろ?涼の事、帝の存在、不老不死、考えれば考えるほど不安になることばかりだ。

 

「姫様」

澪菜を呼ぶ声に振り返ると、静子が部屋に入って来た。

 

「顔色がすぐれないご様子。大丈夫ですか?」

静子が心配そうに眺める。 

 

「はい。大丈夫です!」

 

「あまり、無理なさらないで下さいね。一人の体じゃないんですから。」

一人の体じゃないって。言い方!また誤解されそうな。

通訳すると「大事な東宮様の女御なんですから、お体に気を付けて下さいね」だと思うが、訂正すると長くなりそうなので流す事にした。

 

「はい。気をつけます。」


「疲れがたまっているのでしょう。今の時季は、藤が見頃ですね。まもなく菖蒲に紫陽花。気分転換に見に行くのもいいですよ。」

 

「藤に菖蒲に紫陽花かぁ」

 

「それは、極楽浄土に迷い込んだみたいに、美しいですよ。」

うっとりしながら、静子が語る。

 

桜に躑躅

藤に菖蒲に紫陽花

紅葉に萩

椿に梅

四季折々に彩られる。

 

「極楽浄土か………。静子さんは不老不死ってどう思いますか?」

 

「どういたしましたか?そうですね。不老は憧れますけど、不死は嫌ですね。人間の永久の憧れであるとは思いますが、私は天寿をまっとうし、浄土に旅立ちたいです。旅立つにはまだやりたい事がありますから、まだまだ先になりますけど。」

静子らしい答えるだ。

 

「姫様は不老不死が望み何ですか?」

あまりに真剣な顔で聞くので静子少し疑問に思っただけだったが、「そんな事はないです!」と全力で否定するので不思議に思った。

 

「"不死"何て望まない方がいいですよ。神から与えられた天命をねじ曲げると、代わりに失う物が多すぎるやも知れません。」

 

手に入れる代わりに失う物。その痛みがどれほどかはわからないけれど、決して簡単な物ではないだろう。

 

黙り込む澪菜に気付き、静子は話題を変えた。

「姫様、話は戻りますが、都外れの寺院の藤が今、色鮮やかに咲いてます。よかったら東宮様と出掛けて来たらいかがですか?」

 

 

「藤。」

学校にいた頃、藤棚でお弁当食べてたなぁ。懐かしい。


「私の世界にも藤棚があって、よく行ってたんですよ。懐かしいです!」

懐かしさの余り、澪菜はにっこり微笑んでいた。

 

「姫様の御国にもあるんですか。でしたら、より気分転換になりますし」

 

 

静子は途中まで言いかけて、何かを思い出した。

「??どおしたんですか?」

 

 

「あ……いえ。東宮様、当分ご予定が入っているみたいですので、お出かけは難しいかなと思いまして。」

静子が申し訳なさそうに言う。

 

「今日も忙しそうですよね。昨日の賊の処理に追われてるって千鶴ちゃんに聞きました。」

 

「本日、賊の公開処刑が行われるらしいので、その対応していらっしゃいますね。」

 

 

―――公開処刑!!?―――

「こ……殺すの……」

 

「申し訳ございません。姫様にお聞かせするような話じゃありませんでした。」

 

 

澪菜の顔が青ざめていく。

 

涼君……

 

落ち着け!!澪菜

 

朧は任せておけって言ってくれた。


大丈夫。、、、大丈夫。 

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