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金色の月姫  作者: 藤の花
月より舞降りた鬼の姫
30/79

参拾

他に案がないか問われても誰もすぐにはおもいつかなかった。春晃に澪菜なりの案を出してみるが、ことごとく却下される。

 

「あんた!ちょっといいか」

澪菜が離れた隙に、涼は朧に呼び止めた。

 

「なんだい?」

 

「澪菜は、人なれしてないんだ!あんまりからかわないでくれ!!」

 

「そうやって大事に大事に守ってきたのか?」

 

「そうだ。だからあんたに横から掻っ攫わせはさせない。」

 

朧は楽しそうに笑う。 

「いや、確かにあの姫は純粋ですれていない。幼い分、自分好みに育てられるな」


「そんな目で見てたのか!ふざけるな」

ガタンッ―――――涼が襟元を掴むと朧を壁に叩きつける。部屋に衝撃音が鳴り響いた。

 


「二人共!喧嘩してるの!」

気付いた澪菜が近寄って、二人の間に入って来た。

 

「涼君、だめだよ!手離して。朧もどおしたの?」

心配そうに二人の顔を覗き込んだ。男同士の話をしていただけだと笑いながら朧が言うが信じられない。二人の顔を交互にジトーと見た。

 


「本当に!!?普通に話してただけで喧嘩ごしになる…」


「男とはそんなもんだよ。拳を交合わせ、仲を深める!」

朧は涼の肩に手を回すと、笑って見せた。


「なら……いいんだけど………。」と言いつつ、まだ納得出来ない顔で見ている。

 

「姫、春晃と話をしていたんだろ?私達もすぐ行くから。ほら」

澪菜は朧に背中を押されて、春晃の元に戻っていった。

澪菜が春晃と再び話はじめると、涼は朧の腕を振りほどいた。

 

「邪険にしなくてもよいだろう?姫は私達が仲良くするのが望みみたいだし。」

にっこり微笑みながら朧は言う。涼にとって朧の笑顔は何かたくらんでいる様にしか見えなかった。

 


「うるさい。」

 

「ふふ……でも今の間々では兄妹の感情から何も変わらぬぞ。」

 

――――!!!!!!涼は言い返したかったが、図星だった。澪菜にとっての自分が、幼なじみであり、兄の様な存在であるのをわかっていたからだ。



「運命は動かなくては何も変わらない。自分の手で切り開くものだ。」

 

「何企んでる!!?それに俺がいるのは、あんたに取って邪魔じゃないのか!助言の様な事言ってる場合か!!?」

 

「確かにそうだね。しかし、それも運命。ただ、私から姫を簡単に奪えると思わないほうがよいぞ。」

そう告げると、にっこりと微笑み、朧は澪菜達の元に戻って言った。

 

何なんだあいつは!!?涼は朧の事を一生理解出来ないだろうと思った瞬間だった。



――――――――――――

あの後、皆で朝まで話し合ったけれど、結局案は、澪菜の貞操以外何もでなかった。もぅため息しか出ないくらい、疲れ始めていた。

 

 

「なんか……他に……不治の妙薬があればいいのにね………」

澪菜がポツリと呟く。

何気ない一言だったけど、これがかなり重要な言葉に変わった。

 

「それだな。姫君!」

春晃が澪菜の一言に食いついてきた。

 

 

「何だ?春晃」

朧が不思議そうに聞く。

 

 

「いえ、代わりになる妙薬を探すのが一番手っ取り早い方法だと思いまして。」

「妙薬……ってそんな簡単に見つかるの?」

 

 

「いや簡単に見つかるのなら、帝がなりふり構わずまでならないだろう。」

朧がため息つきながら答える。

 

「そうでしょうが、他に方法はないです。帝を納得させるには、妙薬を手に入れるしかありません。あれこれ策を練るより初心に戻るのもよろしい。」

 

春晃は真剣な表情で続けた。

「竹取の物語にあった通りならば、姫君は月に帰る前に不治の妙薬を残して行きました。その妙薬を物語の帝は山に撒いたと伝えられてます。ここに、今伝説のかぐやがいるのであるなら、不治の山ですら実在しそうな気はしてきませんか?」

 

「確かに。春晃に言われるとそんな気もするな。」

朧もその気になりだした。

 

「その山に行けば、少なからず何かしら、不治の秘密が解明出来るかも知れないでしょう」

「でも……私かぐやじゃない………」

 

 

「澪菜、可能性があるならかけて見ればいいじゃないか!」

涼が励ます。

 

「姫、貴方は私にとって、比売神。大丈夫、私の元に舞い降りたのも奇跡。そんな運命があるのならば、不治を見付ける運命もあるはずだよ。」

 

 

「うん…。」

 

山の存在を史書で詳しく調べて、妙薬を探しにいく事に決まった。

無事見付かる様、澪菜は心から祈っていた。

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