参
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午前中の授業が終わるのは早かった。
でも、今日は調理実習があったから、最悪だった。料理は好きだけど、班別行動が苦手。だから体育も芸術も嫌いだ。
5教科が一番楽だ。授業を聞いていればいいから。
「さて、今日はどこでお弁当たべようかな?」
勿論な事、友達がいないので一人弁当。
最近は裏庭の藤棚の近くのベンチが澪菜のお気に入りなのだ。5月から6月前頃になると、綺麗に花が開くので今から楽しみ。
それにあまり人も来なくて、最近出来た友達の野良猫君が住み着いているからだ。
「ふふ。ヤッパリ藤棚で食べよう!!」
澪菜はカタカタお弁当の準備を始めた。
「月城さん………」
席を離れようとしたとき、澪菜は声をかけられた。顔をあげると、そこにいたのは上級生だった。
「えっと…………な……なんですか?」
見覚えのない顔になんて話たらいいのか全くわからず、オドオドしながら聞く。女の子三人組が澪菜を囲んでいた。
リボンの色で学年がわかれているから、上級生だと分かるのだ。
一年が青。二年が黄色。三年が赤。
赤だから、涼と同じ学年の子達だ。
「話あるんだけど、ちょっと来れる?」
直感的にヤバイと感じた。人混みがある所なら、下手な事出来ないと思いここで話を切り出させようとした。
「ここじゃ………だめ………ですか?………」
女の子達は少しヒソヒソ話し、まとまったのか、澪菜に向かって話はじめた。
「あんたさ、なんなの!?」
唐突に言われ意味がわからなかった。
「えっと………な…何がですか……?」
キョトンとしてる澪菜に余計苛立ったのか、人前なので抑えて話していた女の子の口調も少し強くなっていく。
「惚ないでよ!!涼の事だよ」
「あ」
涼は学校での人気はNoを争えるほどの人気だった。
容姿端麗なのは勿論な事、人柄もよく、人望もあつく、男女問わず人気があるのだ。ファンクラブなんて、表だった物はないけれど、それに近い過激な涼信者の集まりはあった。
涼は誰から見てもキラキラしている。
いつも誰かしかに囲まれている。幼なじみじゃなかったら、絶対話しかけも近寄る事さえも出来ない存在なのだろうと思う。
女の子はその中の何人かだった。
「全部見てたんだよ!!朝から手なんか繋いで、ふざけんじゃねーよ」
教室中に響きわたる。周りが少しざわついた。
「いや………あれはそんなんじゃなくて………」
「じゃなくてなに!!!!」
澪菜の言葉を遮ぎる。聞く気があるのか疑問だ。
騒ぎに気付いてはいるけど、誰も助けてはくれない。
巻き込まれたくない気持ちはわかるけど、よけい人間不信になる瞬間だった。
関わりたくなく、足速にさる人。巻き込まれないよう、見なかった事にする人。「ざまあみろ」とくすくす笑う人。
澪菜はうんざりしていた。
「涼君とは幼なじみです。それだけです」
「幼なじみだからって、手なんか繋がないでしょ?色目使うな」
この人達は何を言えば引いてくれるのだろうか…?
否定しても怒るし………面倒だから肯定しようかとも思ったけど、このタイプは逆上すると思ってやめておいた。
はぁ……………はふ………
涼君の取り巻きにはよく絡まれるけど
今回のはしつこいな…………
こんなにあからさまに敵意を持たれるのも初めてだ。
何を言っても無駄だと悟り、黙っていた。
しかし、それがよけいに女の子達の逆鱗にふれたのだった。