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金色の月姫  作者: 藤の花
月より舞降りた鬼の姫
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弐拾玖

白菊がバタバタと廊下を駆ける足音が聞こえて来た。

「白菊、客人に失礼だろう。静にしなさい。」

春晃が一喝する。

 

「申し訳ございません!東宮様がお越しになっております!」

あわてて白菊が部屋に入って来るや、追う様に朧も入って来た。



「春晃、この文はどういう事だ!!」


「東宮様、お書きした通りですよ」

文を握りしめながら切迫した顔でやってきた朧に対し、春晃はやれやれと息をついた。 

朧の声に気付き、春晃の後ろから澪菜は、そっと顔を出した。二人は目が合い、朧は澪菜に触れようとしたが、何故か手を引っ込めた。

「触らないで」私そう酷い事を言ってしまった。



「朧ごめんなさい。私何も知らなくて。でも、何も言ってくれなくちゃわかんないよ。今朝も言ったけど、朧には感謝してる。力になりたいから話して欲しい」

引っ込めた手をキュッと握り話かける。しっかりとした迷いのない瞳に、朧も話す決意が出来た。

 

「帝が、姫に会いたがっている。」

 

「帝?」

 

「現天皇。国の最高権力者。私の父上だ。」

 


えーーー!なぜそんな偉い人が私に!?



「あんたが、澪菜を后だとか言ってたから、そんな話が出たのじゃないのか?」

涼の言葉にそんな生温い話ではないと、朧の表情は険しくなった。

 

「帝は不死の力に興味がおありなんだよ。」

  

 

不死。永遠に続く命

生きとしいける者、いつかは命尽き果てる。

寿命と言う個人差はあるだろうけれど、逃れられない運命だろう。

「不死の伝説とは、いろいろある。人魚の生肝、不死鳥、鬼の心の臓の血。探せば不死の伝説なんて、まだまだ出て来るだろう。」

 

「鬼の心の臓の血…」

 

 

「そうだ。かぐやの伝説、竹取物語でも、月の姫は最後に不老不死の妙薬を残していく。まさに、貴方は不老不死を求める者にとっての条件に当てはまってしまったのだよ」

 

「そんな………でも私は、鬼でもかぐやでもないよ…………」

 

「例え真実は違うとしても、死を恐れる者にとって縋れる物なら何でもいいんだ。私の息子の后になら手を出さないと思うたが残念だ。」

 

「このままだと、澪菜はどうなる!!!!」

荒ぶる涼に朧は一瞬言うか言わないか、悩んだがハッキリ言う事にした。

 

「最悪……心の臓の血を飲まれるだろうな」

澪菜は現実味のない、事実に泣きたいのに涙もでない。

そんな事をされたら間違いなく死ぬだろう。 

呆然と立ち尽くす、澪菜を朧はそっと抱き寄せる。

 

「すまない無力で。この髢を付けてくれないか?子供騙しだとはわかっているが、少しでも時間が欲しい。何か他の方法を見付けて見せる。」

 


「私にいい案がありますよ。」

黙って話を聞いていた春晃が話しだした。

 

「なんだ?」

 

「私が適当な占術をいたしましょう。」

国1番の陰陽師の占いなら帝とて信じるだろうが、不死をそう簡単に諦めるとも思えない。

 


「朝露の

したたる雫

一口と

鬼まじわりて 

不死へいざなふ

心の臓とは人の核となる部分。それに筆頭するもなを差し出せばよいのではないですか。」

 

 

「ん?どういう意味ですか?」

澪菜には歌で言われてしまうと、全くわからない。 

 

「姫に伽の相手をしろというのか!」

 

「とぎ?」

朧が反論するも、やっぱり澪菜には意味がわかっていない。反対に涼は意味がわかったらしく目を逸らし、横からみても耳が真っ赤になってるのがわかる。

 

「本当なに」

 

「あ、、、うーん」

みんなわかってるのに、自分だけわからないから気になってしかたがない。さすがの涼も困り果て、ちらっと朧に目線を送りアピールをしていた。

朧も澪菜の耳にあまり聞かせたくないようで、なんと言えばよいか考えてしまった。



「男女の交わりをしろって言っている。帝に抱かれなさい。」

二人が遠回しにしてくれたのを、春晃が直に言う。

「えっ…………」理解した澪菜は顔が茹蛸より、真っ赤になった。

 

「まだ、姫君は操なんだろう。乙女の貞操は神秘的で、核に相応なものであろう。」

淡々と春晃は語るが、いろいろ爆弾発言だ。

命は助かるかもしれないが体を差し出すなんて絶対いやだ。必死に拒否する澪菜に、表情一つ変えず返事を返す。



「死にたくないのだろう?」

死にたくない。でもどちらも選べない2択だった。


「姫落ち着いて。」

朧が興奮する澪菜をなだめた。抱きしめ、髪をなで、柔らから口調で話しかけながら。

 


「私の月姫かぐや。例え、父上とて姫の肌には指一本触れさせはしないよ。この美しい白い肌に触れて良いのは、私だけだ。」

澪菜の手を掴むと、そっと甲に唇が触れる。髪に触れ頬に触れ。

澪菜は茹蛸が最高臨し、限界突破しバッと離れた。涼はすぐさま澪菜を庇うように間に入った。

 

 

「おい!なんでそう、あんたは手が早いんだよ」

 

「そうか?恋愛とは思った時に思った事を口にしないとね。失ってからじゃおそいんだよ。フフ」

朧の微笑み方が何か見透かされているそんな気がして涼をイラッとさせる。

何か二人の空気また悪くなってる?

 


「あーあー春晃さん、他に手はないですか??」

空気がこれ以上おかしく進む前に、澪菜は話を戻すことにした。


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