弐拾捌
駿馬の速さに必死に馬にしがみついていた。
「もうすぐだ。喋ると舌を噛むぞ。」
春晃はもうすぐというけれど、段々と家より木々が増え、都からはずれて行く気がする。
山とまではいかないが、町並みはもうなくなっている。
走らせて、一刻くらいたった頃一軒の屋敷が見えて来た。
屋敷の前に止まると、春晃は馬を降りた。
「着いたぞ。」
門を開き、中に入っていく。古びた屋敷だが、なかなか風格があった。
澪菜は連れられるままに、中に入って行った。
「お帰りなさいませ。」
すると、女の子が迎えてくれた。
「白菊客人だ。丁重に頼むぞ」
白菊と呼ばれる少女は、愛らしい笑顔を見せる。
見た目は澪菜より幼く、10歳になるかなくらいの年頃にみえる。幼いのにしっかりしてて感心する。
「はい!いらっしゃいませ。どうぞこちらへ」
白菊は澪菜に近寄ると、奥の客間座敷に招きいれた。
「春晃様がお客様を連れて来るなんて珍しくて、私本当、嬉しゅうございます。」
にこにこしながら白菊はいろいろ話をしてくれた。ここが春晃の屋敷だという事。人混みが嫌いでこんな人里離れた場所に家を建ててしまった事。
「私的にはもっと人間らしく生きて欲しいんですけどね」
人懐っこい子だなぁ
「白菊、おしゃべりがすぎるぞ。」
春晃が戻って来ると、イタズラがばれてしまった様な顔をして、慌ててパタパタと去って行った。
「姫君、貴方の探し物だ。」
春晃の後ろから、のっそりと出て来たのは澪菜が捜してやまない者だった。
「ったく!何だよこんな夜中に」
「りょりょ涼君!!?」
「澪菜??何でここに」
「涼君こそ、、、」
「なんかこいつが助けてくれた。」
「春晃さんが?」
カラカラと笑う涼を見て、澪菜の緊張の糸が一気に解けた。
「涼、、、くん、、うわぁーんよかったよぉ」
泣きじゃくりながら、涼に駆け寄り、飛び付く。2人は勢い余って倒れ込んでしまった。
「痛てててッッッ」
「ごめ、、、でも無事でよかった、、、私のせいでウグッ涼君が死んじゃったらってエグッウウウ」
泣かないように必死に我慢するが、全然涙はとまらない。そんな澪菜を見てて、そっと頭を撫でた。
「俺は大丈夫だから、もう泣き止め!春晃有難う」
「春晃さん、有難うございます。」
二人は春晃に礼を述べるが、思いのほか、薄い反応だった。礼を言われる覚えはないという顔をしている。
「涼君を助けてくれたじゃないですか!」
「助けた覚えはない。東宮の御心の間々に動いてるだけだ。」
え―――それってまさか―――――――――
「東宮って誰だ?」
涼が不思議そうに聞く。朧の事だと説明すると、涼は思い出したのか「あぁ」と返事をし考えこんだ。
「嘘、、、」なぜ朧が?だって先陣きって涼君を捕らえたのは朧だった。
「嘘をついてどうする?」
春晃が淡々と答える。
「だって………信じられないよ」
「戦乱の世、姫みたいな澄んだ心だけでは、渡ってはいけない。時には偽りに隠して守る物もあるのだ。」
「そんなでも、髪、綺麗って言ってくれたのに、それも嘘だったんです。」
はぁと春晃がため息をつく。
「髢でも、渡されたのか?」
「はい…。でも何でそれを?」
「それすら、言ってないのか。あれは東宮様の亡くなられた御母君の髪だ」
「それって…どういう事?」
「さぁて、それは本人に聞くのだな。文を読んで慌てて向かってるのではないか?そろそろ着く頃だと思う。」
文??いつの間に?あ!屋敷を出た時のか。さすが抜かりない
最後あんな風に言ってしまったのと、黙って出てきてしまったのでとても会いづらい。澪菜顔が曇った。
涼は澪菜の顔を覗き込むと、額に思いっきりデコピンを入れた。
「痛!!!!!!?」
澪菜は、ビックリして額を抑えながら涼の顔を見ると、涼は満足気に笑顔を浮かべていた。
「俺は何の話かはよくわからんが、会いづらいからって会わないと、余計づらくなるぞ。母親の髪を渡して来たんだろう?少なからず、そんな大切な物を渡すなら何か理由があるはずだ。俺もいるんだし!」
ワシャワシャと頭をなでる。涼の言葉に澪菜は少し元気がでて、はにかむように笑顔をみせた。
「ライバルに旗振ってどうすんだか。俺お人よしすぎだな。」
「ん?何か言った??」
何でもないよと涼は苦笑いをした。




