弐拾漆
ここを抜け出さなくちゃ。正面からは警備が厳しくて、確実に出れないし。高い塀が何処までもつづいているここを、登るしかないであろう。
「木をつたえば、いけるかな……?」
高らかとそびえ立つ、木々を見上げ、決心した。
―――出来る!!澪菜!頑張れ――――
自分にエールを送り奮い立たせる。足を幹にかけ、少しづつ上って行く。必死にしがみつきながら何とか登れてはいるけれど、やっぱり怖い。今にも落っこちそう。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
下を見ちゃだめ見ちゃだめ
やっとの思いで塀の高さまで昇り上がり、飛びうつる。
塀までたどり着いたけどどうやって降りればいいんだろうか。外側は特に足をかけられそうな場所も物もない。
飛び降りるのは無理。全然考えてなかった。
いつまでもここにいると、見つかってしまうからウジウジ悩んでる暇でもない。
打ち身くらい覚悟して、飛び降りるしかないか。
「涼君はもっと辛い目にあってるかも痴れないんだ」
考えると飛べなくなる。意を決して、飛び降りた。
ひゃぁぁぁ
「危ない!風よ、大地に吹上よ」
何処からともない声と共に、澪菜の体がフワッと浮かんだ。
「えっっ!!?」
風に包まれる様に、ゆっくりと地面に降り立つ。
「空からまさか姫君が降ってくるとは………。」
そこにいたのは春晃だった。
「そんな所から飛び降りたら、怪我をするだろう。馬鹿か?」
「、、、うぅ」
朧に頼まれたのか?春晃に見付かってしまったから、強制送還決定だろう。
「助けて頂いたのは、有り難いですが、私戻りませんから!!」
春晃は相変わらず淡々と無表情の間々変わらない。
「言いたい事はそれだけか?」
「涼君の居場所!知ってますか!!」
「……………。」
春晃は無言で懐から、和紙と筆を取り出し、サラサラと何かを書き上げていく。気になって尋ねるも、春晃は澪菜の方をチラッと見ると、何事もなかった様に作業を続けた。
うーん。何考えてるかサッパリわからない――――。
書き終えると、近くにいた鴉の足に括り付け、何か呟いていた。すると、鴉は何処かへ飛立ってしまった。
――不思議な人だ―――
と眺めていると、春晃が近寄って来た。
「参るぞ。」
「へぇ!!?何処に?」
「早くしなさい。嫌なら東宮御所に戻るがいい。」
澪菜をおいて、スタスタと行ってしまった。
え!!?え!!?どうしよう!!?
捕まえに来たみたいじゃないし。えぇい!一かばちかの賭だ。どうせあてもない。春晃なら教えてくれる可能性が低くとも知っている可能性は高い。春晃の後ろをひょこひょこ着いて行った。一応警戒はしながら。
2人は会話もなく、黙々と歩き続ける。
そして、屋敷から少し離れた所に馬が停めてあった。
「何をしている?ついて来る気があるのなら、早く乗りなさい。」
「え!」
「馬には乗った事ないのか?」
「はい……。」
「振り落とされない様、しっかりつかまっていてくれれば大丈夫だ。」
馬に乗ってしまったら、逃げるにも逃げられなくなってしまうだろう。
でも、ここまで来たら後には引けない!
なんとしても聞き出してやる、そう意気込んだ。
「行くわ。」
春晃に支えられ、馬に跨がった。
春晃の掛け声と共に、馬は走り出した。




