弐拾陸
あれから涼はどうなったのだろう。何処に連れて行かれたかもわからず、不安で仕方がない。
私のせいだ――――何でこんな事になったの。
「うぅ………」
涙が止まらない。
「姫……」
「ひどいよ」
ポロポロ流れ落ち、頬を伝う。
この国と日本では価値観が違うのを、この短い期間ですら見てきたじゃないか。涼も警戒していたのに、考えなしだったせいだ。
澪菜より世渡り上手な涼があれだけ警戒していたのだから、きっと同じくらいにいやそれ以上にこの国の違いを見せられたのだろう。
「何処に連れて行ったの?」
「涼君生きてるよね?」
質問を重ねながら縋る様な目で見るも、朧は何も答えなかった。
「姫、貴方に渡さなければ為らない物がある。」
朧はそっと箱を出した。
「何これ………?」
こんな時に!!?プレゼントなんかされても騙されないから!!澪菜は箱を開けると、中には美しい艶やかな黒髪が入っていた。
「え………」
「髢だよ。」
「かも…じ…?」
「そなたの髪は、この国では目立ちすぎる。これを付けていてくれないか?」
――――――――!!!!
「朧がこの髪が、月色で綺麗って言ってくれたの……嬉しかったのに。」
全部嘘だったんだ!!
私の事、鬼って思ってたんだ。馬鹿みたい。私。心なんて開くんじゃなかった。
辛い思いするのなら、何も感じない方が幸せかも。
「姫」
バシッッッ「触らないで!!」
澪菜は、朧が髪に触れようとしたのでつい、払いのけてしまった。
「あ」
ガシャンッ
床には、払いのけた拍子に箱がひっくり返り、髪が散らばっていた。
「あ、、、、ごめんなさい」
物音を聞きつけ、女房が御簾の外に来たが、何ともないと朧が声かけ再び人払いをした。
申し訳なく、澪菜は散らばる髢を拾おうとすると、朧は大丈夫といい、自ら髢を集め拾う。
「わかった。また後で来るよ。」
朧は静に部屋を後にした。
―――――
日も落ち、辺りも静まり返り始めた。月明かりがほんのり輝く以外は、後は漆黒に包まれている。
「そろそろいいかな」
澪菜は起き出すと、コソコソと準備を始めた。
「にゃー」
茄子が足元に擦り寄る。
「しーっ静にして!茄子も一緒に行く?」
「にゃあ」
茄子を抱き抱えると、足音を立てないよう、部屋を後にした。
恐らく、屋敷にはもういないだろう。リスクが高すぎる。澪菜の近くに置いておくとは思えなかったからだ。
「とにかく、ここを抜け出さなくちゃ!」
涼が何処にいるかは知らなかったけれど、捜しに出た。
――――あてはなく。




