弐拾伍
澪菜は床下から這い出すと、カラリと御簾をあげ部屋に入っていった。ザワザワと騒がしいなか、始めに気付いたのは千鶴だった。
自分のせいだと思っている千鶴は顔に生気が全くなかったが、澪菜の姿を見て目をまん丸く開き、今にも泣き出しそうな顔に変わった。
「ごめんなさい。騒ぎになっちゃってるね…あはは」
「姫!」
澪菜の声に朧も気付いた。
「澪菜様、その格好!御怪我ございませんか!!?まさか!賊に!!?私のせいでおいたわしいや」
床下に潜っていたせいか、着崩れしあちこちが泥に塗れていた。ボロボロな姿にその場にいる皆が顔面蒼白になる。
「いや、違うから」
従者たちを掻き分け、朧も澪菜の元にきた。顔や首、腕と見える所は隈なく確認し、怪我はないのを確認すると深く息をつき、澪菜をフワッと抱き寄せた。
かなり心配かけたのだろう。朧の呼吸が乱れているのが伝わって来る。
「あわわわっ朧まで汚れちゃうよ。離して」
慌てて離れようとするものの、反対にがっしりと引き寄せられて朧が離さない。
「この手を離したら月に帰ってしまう。そんな気がする」
「いきなり帰ったりはしないから!恥ずかしい、、、から、……」
って皆気をきかせて部屋を退室しようとしないで!!止めてよ
「いい加減に離せ!」
ベリッと澪菜を引き離す。痺れを切らした涼が出て来た。
「お前も何セクハラされるが間々なんだよ!」
「何奴!!?」
涼の存在に気付いた朧は、即座に手が腰にまわった。カチャリと音がする。
まずい!!!!
「朧、落ち着いて!」
涼の前に立ち、今にも涼を叩き切りそうなオーラに必死に抵抗した。
「違うの!賊じゃなかったの。涼君、私の幼なじみだったの。」
「幼なじみ?」
訝しげな表情を浮かべる。
「そう。私がここにいるか捜しに来てくれたの。涼君もここにおいて貰えないですか?私、出来る事なら何でもするから」
「姫………残念だけれどそれは出来ない。」
「なんで!!?」
「ここに忍び込む行為自体死罪に値するのに、東宮妃に手を出すとは許される事ではない。たとえそれが姫の願いとて…」
「そんな……」
「澪菜!!こんな所にいても元の世界には帰れないんだ。一緒に行くぞ。」
涼が澪菜の手を引く。
部屋から出ようとしたが、部屋の外には、既に沢山の従者達が集まっていた。
涼から取り返し、朧は澪菜を抱き抱えた。
「これは私の后だ。勝手は許さない。」
「后!!?何言ってんだよ!!」
「あ………いや…?」
「どっちでもいいから、澪菜はお前の物じゃないだろ!離せ」
勢いよく涼が掴みかかろうとするのを、スルリとかわす。
朧は澪菜を抱き抱えたまま違う部屋に連れ去って行った。
「朧!降ろして!!涼君!!」
ジタバタするも、全然びくともしない。
「澪菜!!」
すぐさま澪菜を追いかけようもするが、集まった従者達に捕らえられ涼も何処かに連れていかれてしまった。




