弐拾参
澪菜と千鶴の沈黙が続いたので、空気を和らげようと茄子を探したが、姿が見当たらなかった。
「茄子、茄子の姿が見えないんだけど……」
部屋中辺りを見回すけど、茄子の姿はなかった。庭に出てしまったのではないかと不安がよぎる。
噂をすれば、にゃーにゃーとか細いながら茄子の鳴き声が聞こえる。
「茄子ちゃん、いるみたいですね。よかった」
「でも…声遠いよ……?」
「茄子!茄子」と必死に呼ぶと「にゃー」と返事はくるものも、声はするけれどまったく茄子は見当たらなかった。やっぱり庭だろう。
「千鶴ちゃん、茄子捜して来る!!」
澪菜は庭に飛び出そうとしたが、千鶴は離してくれなかった。
「だめです!まだ危のうございます」
千鶴が全身全霊の力を入れて離さないから、振りほどけない。
「でも、あのこ病み上がりだから何かあったのかもしれないし」
「でしたら、私が捜して参りますので、澪菜様はお部屋にいて下さい。」
代わりに千鶴が行くと言い出したが、危ないのには変わりがない。
「姫様の御命と私の命でしたら………」
とたん澪菜の顔が険しくなる。
「千鶴ちゃん!それ以上言ったら怒るよ!!」
そうだこの方はどんな命とて、慈しんで下さる御方。傷付き涙してくれるのだろう。
そんな悲しい事言わないでとポツリと悲しげに言う澪菜を見て、千鶴は自分の言った事に後悔をした。
「申し訳ございません。誰か、遣備の者に頼んで来ますので少しお待ちいただけますか?。大丈夫!すぐ戻りますので」
千鶴は部屋を後にし、人を捜しに行った。
千鶴が部屋を出てすぐだった。
ガタッガタガタガタッッッ奥から物音が聞こえてくる。
「茄子………いるの?」
鳴き声は聞こえない。
ガタッ
また物音がする。
――違う茄子じゃない。――まさか――
「茄子じゃないんでしょ!誰!!」
澪菜は物音の方に向かって叫ぶ。
ガタンと几帳が倒れ込んだ。
「キャアァァ」澪菜が怯んだ瞬間、後ろから手が回り口元を押さえ付けられた。
――――賊!!?――――――
「ふっふぐっ」
口を塞がれて、声がだせない。
ジタバタするも、力が強くて全く振りほどけない。
「澪菜様、茄子ちゃんいましたよ。」
廊下から千鶴の戻って来る声が聞こえた。
「んーんっ」
必死に叫ぶも、まったく意味がない。
澪菜はズルズルと引きづられて、部屋の外へ引きづり出されてしまった。
「澪菜様!お待たせしました。」
「にゃー」
千鶴が茄子を連れて部屋に戻ると、中はもぬけの殻になっていた。
几帳が倒れ、部屋は争った後だけ残っている。
―――!!?
「誰か!誰か!澪菜様…女御様が!!」
千鶴は事の重大さに気付き大声で人を呼ぶ。
その声を聞き付けて、屋敷中、増して騒がしくなった。
「なんで部屋を離れてしまったんだろう」
後悔しても、悔やみきれない。
千鶴はその場に力無く、倒れ込んでしまった。




