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金色の月姫  作者: 藤の花
月より舞降りた鬼の姫
23/79

弐拾参

澪菜と千鶴の沈黙が続いたので、空気を和らげようと茄子を探したが、姿が見当たらなかった。


「茄子、茄子の姿が見えないんだけど……」

部屋中辺りを見回すけど、茄子の姿はなかった。庭に出てしまったのではないかと不安がよぎる。

 

噂をすれば、にゃーにゃーとか細いながら茄子の鳴き声が聞こえる。

「茄子ちゃん、いるみたいですね。よかった」

 

「でも…声遠いよ……?」



「茄子!茄子」と必死に呼ぶと「にゃー」と返事はくるものも、声はするけれどまったく茄子は見当たらなかった。やっぱり庭だろう。

 

「千鶴ちゃん、茄子捜して来る!!」

澪菜は庭に飛び出そうとしたが、千鶴は離してくれなかった。

 

「だめです!まだ危のうございます」

千鶴が全身全霊の力を入れて離さないから、振りほどけない。

 

「でも、あのこ病み上がりだから何かあったのかもしれないし」

 

「でしたら、私が捜して参りますので、澪菜様はお部屋にいて下さい。」

代わりに千鶴が行くと言い出したが、危ないのには変わりがない。

 

「姫様の御命と私の命でしたら………」

 

とたん澪菜の顔が険しくなる。

「千鶴ちゃん!それ以上言ったら怒るよ!!」

 

 

そうだこの方はどんな命とて、慈しんで下さる御方。傷付き涙してくれるのだろう。

そんな悲しい事言わないでとポツリと悲しげに言う澪菜を見て、千鶴は自分の言った事に後悔をした。

 

「申し訳ございません。誰か、遣備の者に頼んで来ますので少しお待ちいただけますか?。大丈夫!すぐ戻りますので」

千鶴は部屋を後にし、人を捜しに行った。




千鶴が部屋を出てすぐだった。

ガタッガタガタガタッッッ奥から物音が聞こえてくる。

 

「茄子………いるの?」

鳴き声は聞こえない。

 

 

ガタッ

また物音がする。

――違う茄子じゃない。――まさか――

「茄子じゃないんでしょ!誰!!」

 

 

澪菜は物音の方に向かって叫ぶ。

ガタンと几帳が倒れ込んだ。


「キャアァァ」澪菜が怯んだ瞬間、後ろから手が回り口元を押さえ付けられた。

 

――――賊!!?――――――

 

 

「ふっふぐっ」

口を塞がれて、声がだせない。

ジタバタするも、力が強くて全く振りほどけない。

 

「澪菜様、茄子ちゃんいましたよ。」

廊下から千鶴の戻って来る声が聞こえた。

 

「んーんっ」

必死に叫ぶも、まったく意味がない。

澪菜はズルズルと引きづられて、部屋の外へ引きづり出されてしまった。




「澪菜様!お待たせしました。」

「にゃー」

千鶴が茄子を連れて部屋に戻ると、中はもぬけの殻になっていた。

几帳が倒れ、部屋は争った後だけ残っている。

 

―――!!?

 

 

「誰か!誰か!澪菜様…女御様が!!」

千鶴は事の重大さに気付き大声で人を呼ぶ。

その声を聞き付けて、屋敷中、増して騒がしくなった。

 

 

「なんで部屋を離れてしまったんだろう」

後悔しても、悔やみきれない。

千鶴はその場に力無く、倒れ込んでしまった。

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