拾伍
朧の納得が出来ない表情に、澪菜はさみしげに答えた。
「大丈夫だから!それにやっぱり人と違うのは受け入れ難いのは仕方のない事」
「朧は怖くないの?この髪の色鬼の色が」
「姫は私に何て言って欲しい…?」
じっと見詰める朧に澪菜は黙ってしまった。無意識に優しい言葉をかけられたかったのだろうと気づくと何も答えられなくなった。
沈黙はどれくらい続いたのだろうか。
「姫」
先に口を開いたのは朧だった。
「私はそなたを始めて見た時、本当美しい髪だと思ったよ。まるで月の姫君。お伽話話のかぐやそのものだと。」
澪菜の髪先を優しく指で梳かすように絡めながら話かける。
「心優しい姫君。例えそなたが本当に鬼だとしても、こんなに心の澄んだ鬼なら騙されてもいい」
澪菜に気をつかって言ったのだろうと思い顔をあげると、まっすぐ見つめる朧の目は嘘や御世辞を言うようには見えなかった。
本気で言ってるのかもと思うと、とても恥ずかしく、真っ赤になり顔を伏せてしまった。
そんな姿を見て、朧は微笑ましく笑っていた。
「女房達を許してくれて、嬉しいよ。」
「偽善心かもよ?」
恥ずかしすぎてわけわからない事を言ってしまった。
「仮に偽善だとしても、人間偽善すらなかなか出来ぬ。彼女達は信頼してる人間達。本来ならば処罰をせねばならなかったが、あなたのお陰で女房達に機会を与えてやる事ができる。」
子供の頃はともかく、中学高校の歳なら自分がもっと社交的ならばきっと髪色くらいでハブられはしなかっただろう。話すの苦手だから、人見知りだから、涼くんが助けてくれるから。いろいろ理由をつけて自分から行動をしなかった。
日本より金髪碧眼は禍々しく捉えられる平安の国ではもっと嫌な思いをするだろう。しかし何もしなければ今までと変わらない。
「可能なら女房達と仲良くしてほしい。」
「うん!出来るなら私も仲良くしたいです。」
にこっと笑って澪菜は立ち上がった。千鶴にお願いしてくるとパタパタと千鶴を探しにいった。