拾肆
澪菜は奥座敷にもどり、ウジウジしていた。この屋敷を出て行きたかったけど、一人で出て行く勇気がなく結局は篭の鳥の様に部屋にまだいた。
そんな行動力のない自分が余計に嫌だった。
「はぁ………はふ…」
「姫君はため息がおおいね」
クスクスと笑いながら御簾をまくりあげ入って来た。
澪菜は顔をあげると、朧がとろけるような笑顔でいた。
「もぅお仕事は終ったの?」
「ただいま。姫の顔が早く見たくて、急いで終わらせて来たよ。」
朧は澪菜の隣に座るとじっと見詰めながら、そんな事を言うから恥ずかしさ最大限である。
「……い…だっ……誰にでも言うんでしょ!!」
「つれない事を言われてしまったね。」
といいつつもクスクスと笑いながらら表情も変わる事ない、朧の反応は大人でちょっぴし悔しい。
「こうして話していると、本当に夫婦みたいだ。」
朧がポツリと言った。
夫婦!!?そうだ!私、女御とか呼ばれていた事訂正しとかなきゃ!!
「朧って東宮様だったんでしょ。私、、、女御って言われたけど違うよね?」
「まだそうだね。しかし、私の女御になるのは決まっているから。」
「決まってるって勝手に!!?」
「定められた運命。春晃の占術が出てその運命の歯車は動きだした。」
とは言われても困ってしまう。
「大丈夫。入内は、まだまだ先になるから。それまでに私の事を少しでも好いてくれれば」
入内ってなんだと思いながら困った顔をしていると、澪菜の頭をぽんっと撫でた。
「さて、姫。これから出掛けてみないか?」
「おでかけ?」
「あぁ。町にでも出てみないか?」
「いいの?」
顔色を伺ながら答える。
「ふふ。ここは姫の国とは大分違うみたいだから、よかったら案内するよ。お忍びになってしまうけど…」
「行きたいです!!」
澪菜は嬉しそうに声を張り上げた。ここにいても、余計な事を考えてばかりだから出掛けたい。
「やっと笑った。やはり姫は笑顔が愛らしい。」
「朧」
些細な気遣いが澪菜にとって凄く嬉しかった。
「よし、じゃあ千鶴にでも出掛ける仕度を整えて貰って来なさい。」
えっ!!千鶴ちゃん
「??遠慮する事はないぞ。私に仕えている者共は姫にも仕えさせているから」
「私は仕えて貰える様なそんな偉い人間じゃないし、それに……」
それにさっきの今だとかなり気まずい。もごもごしている澪菜に朧が何か感づいた様だ。
「姫は先程の女房達の振る舞い怒っているのかい?」
「朧……知っていたの?」
「春晃からな。臣下としての振る舞い、遺憾しがたい行為だ。姫が許せないのなら、処罰も考えるぞ」
いつもの穏やかな朧の表情でなく、鋭く真剣な顔に変わる。
「いやっ全然怒ってないから!!ただちょっと気まずいだけです」
慌てて訂正した。澪菜の一言で本当に、千鶴達がどうかなってしまいそうで、怖かった。