拾参
目の前で殺されるのをわかっていて、目をつぶるなんて。そんな事私にはできない。
怯えながらも前から動かない澪菜に、春晃は溜め息をつきながら刀を鞘に戻した。
「行きなさい。気が変わらぬうちに、姫に感謝するんだ。」
春晃の言葉に静子は千鶴を連れて、足速に奥に下がっていった。2人の無事にほっとし澪菜がありがとうとお礼を言うと、眉間にシワをよせ不思議そうな顔をした。
「何故、お礼をいわれるのかが理解できぬ。」
「二人を助けてくれたし!それに私の事もかばってくれたんですよね!」
「我は東宮のお心のままに動いたまでだ。」
「はぁ、、、」
「貴方のその髮の輝きは目立ちすぎる。この世では鬼と言われてもいた仕方がない。それを弁えて覚悟しておいた方がよいぞ」
髪の色はどうにもなんないしと思いながら苦笑いを浮かべた。反対に顔色も変えずに淡々と話してくる春晃に、自分が鬼だと思わないのかと澪菜は素朴に投げかけた。
「私とて陰陽師。鬼か人かの区別くらいつく。変わった気ではあるが、妖かしとは違う気だ。」
とても凄い力の人なんだなと感じとれた。
「では、朧、、、東宮様は、私の事鬼だと思ってるんですか?」
「貴方は東宮にとっての比売神。
漆黒の
夜に満ちあふる
月の光
姫舞い降りし
永久の栄光
かぐやの君と思ってる。現に我の予言の夜現れたそなたは、東宮の未来永劫に輝く月の姫君なのだろう。」
「その歌!我の予言って!!貴方が私をこの国に呼び寄せたの!!?」
春晃占術したにすぎないと答えた。呼び寄せるほどの力はないというので、少し期待をしていた澪菜はがっかりした。もしかしたら、この人なら帰り方がわかるかもしれないと思ったからだ。
「東宮に様子を見て来て欲しいと頼まれただけだから。もぅ行くがよいか?」
「すみません!最後に。私の世界じゃなかったから、東宮とか女御とか言葉の意味がわからなくて。それだけ教えて頂けますか?」
「東宮とは帝を継ぐもの。次期天皇である。女御はその奥方になる人の事だ。」
そう告げるとスタスタと春晃は去っていった。
___チョット待って。
次期天皇?
朧ってめちゃめちゃ偉い身分の人だったの!!?
てか!私の事女御呼んでいたよね!?!?
いつの間にそんな事に!?!?何かの間違いだよね
もぅなにがなんだか聞けば聞くほど疑問ばかりが増えていく。
膨大な情報に思考回路が処理しきれてない。
結局、一人で悩んでも解決しないし、落ち込む一方なので考えないように自分に言い聞かせた。
まぁ考えないって言うのが1番難しいんだけどね。