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金色の月姫  作者: 藤の花
月より舞降りた鬼の姫
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拾壱

チュンチュンチュン

鳥の声が近くに感じた。朝の光が差し込んでいる。

寝ぼけ眼に澪菜は目をさました。

 

「……………もう時間……学校…遅れ……かなあ…」

澪菜は次の瞬間ガバッと起き上がった。

 

____やっぱり夢じゃなかった

 

目の前に広がる光景は昨日と全く変わっていなかった。

布団から脱出し、廊下に出た。夕べは月明かりごしに見てたから気づかなかったけど想像以上に広い。

庭も整えられている。いや!!庭と言うレベルじゃない。庭園って呼ぶ方がしっくりくる。


「私……ヤッパリ……違う世界にいるんだ……」

屋敷の中を見れば見るほど、そう思わざるおえなかった。

外に出てみたいけど、広すぎてよくわからない。

高い塀に囲まれていて、さすがに登れそうもないし。

 

「涼君どうしてるかな…?」

最後があんな別れ方をしたから、凄く気掛かりだった。

だって川に落ちたまま姿を消したのだから。

 

見知らぬ地。一人ぼっちで不安に押し潰されそうになる。

 

「だめ!!」

バチンッッッと澪菜は両手で自分の頬を思いっきり叩いた。

「痛っ、、しっかりしろ!澪菜」

自分に言い聞かせる為に、気合いを入れたのだった。


涼君に迷惑かけないって思ったばっかりじゃない!泣いてる場合じゃない!ただでさえ心配かけてるはずなんだから、自分でなんとかしなきゃ。折れそうな心を奮い立たせ、澪菜は前に進みだした。

 

「そだ!昨日の人!!朧。あの人ならこの世界の事、もっと詳しくわかるかも」

朧の事は、名前とこの屋敷の人としか知らないけど、他にあてもなかったので朧を探すことにした。

フラフラと屋敷を探索していると後ろから呼び止められた。

 

「姫様!!」

澪菜は声のする方向を振り向くと、澪菜と同じ位の歳の女の子が立っていた。

 

「姫様、なりません。殿方の前に顔を出してしまいましたらいかがなさるつもりですか!!しかもそのような恰好で。私がお支度しますゆえ、部屋にお戻りください。」

 

「あなたは…?」

 

「私は、千鶴(チヅル)です。姫様のお世話を任されました、女房です。」

 

「女房??」


「はい。なんなりとお申しつけください」

千鶴はそう言うと、部屋に澪菜を連れて帰り仕度をテキパキと整えた。流されるままに、千鶴に任せていると、みるみるうちに、着替えさせらていた。

 

うわー!着物何て初めて着た。嬉しい反面、艶やかな紅い打掛。澪菜の金色の髪には浮いて見える気がする。

 

「これが黒髪だったら似合うんだろうな…」

ポツリと言う澪菜にそんな事ありませんと千鶴は答えたが何故か目を合わせなかった。

気のせいかもしれないがもしかして、私嫌われてる?


千鶴サンの様子を伺っていると、

 

「お気に召しませんでしたか?コチラの着物では?」

 

「いえ!!じゃなくて、悪いなと思って。しかもかなり高そうだし」

 

「でしたら気にしないで下さい。これは東宮様から承ってますので。」

「東宮様?」

キョトンとしている澪菜に、千鶴は続けた。

 

 

「はい、こちらの屋敷の主様ですよ。」

 

――朧の事だ!

 

「私そこまでよくしてもらえる義理もないし……千鶴さんもご迷惑でしょう」

 

「貴方は、東宮様の女御になられると決まった御方ですので、お気になさらず。私めの事は千鶴て呼び捨てて下さい。」

東宮?女御?言葉が難しすぎて、澪菜にはよくわからなかった。

 

 

「ごめんなさい。よくわからないけど……着付けありがとうございます。……千鶴ちゃんでいいかな?歳も近そうだし。」


「はい。姫様さえよれしければ。」

 

「千鶴ちゃんもよければ私の事は澪菜って呼んで下さい!!」

澪菜は初!女友達が出来るかもとドキドキしていた。


千鶴は少し困った顔をし、わかりました。澪菜様と返事をした。

なんか違う気がする…と思いつつも、澪菜には精一杯の勇気なので、呼び方の話はそこで終わってしまった。

まぁ、人見知り脱出の一歩目にしては上出来だろう。 

 

「澪菜様、御髮もととのえますのでそちらに座って下さい。」

仕度も後半戦に入っていた。サラサラと髮をとかしていく。澪菜には姉妹もいなかったので、なんか胸がくすぐったい気分。照れ臭いけれど、なんか…嬉しいな…こういうの。

「千鶴ちゃん……ありがと………」

 

 

とその瞬間ガリッと思いっきり櫛がひっかかり、髪がつれてしまった。


「痛っ」

澪菜の髪質は、猫っ毛で、細くて、しかもクルクル天然がかっているから絡み易いのだ。

 

カランッッッ千鶴は驚いた拍子に櫛を落としてしまった。

「ごめんなさい。私の髪絡みやすいから……千鶴ちゃんだいじょ……」

 

「申し訳ございません!!」

 

「えっ!!?大丈夫だよ」

振り向き千鶴を見ると、床に手をつけ、尋常でないくらい、震えながら謝り続けていた。

 

「申し訳ございません。申し訳ございません。申し訳ございません…」

 

「千鶴ちゃん?」

謝り続ける千鶴にそっと触れようとしたら、後退りされてしまった。

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