壱
私の名前は月城澪菜
15歳。趣味はお菓子作りで、人見知りが激しいけれど、ごくごく普通の女の子。
でも………
人とは違う所がある。
そのせいか、なかなか周りに馴染めなかった。
朝の日差しと供に、私の一日が始まる。
家の中は、香ばしいパンの香りが漂っていた。
我が家の朝ご飯は、パンが基本なのだ。
料理が趣味の母は、大概毎日、焼いている。
朝に弱いのでいつもギリギリまで寝てるので、食べてる時間はあまりない。
――遅刻
部屋から急いで出て来ると、澪菜はパンを一切れ掴み、バタバタと走り回った。
「目玉焼きは食べないの?」
「ごめんなさい。時間無い!!!いってきまーす!!」
「朝から相変わらずね。いってらっしゃい」
パンを口にくわえながらモゴモゴ話す澪菜に、母はクスクス笑った。慌ただしく出て行く澪菜を、母はいつも見送るのだ。
大通りを抜けて、揺るい坂道を上がった少し先に学校はあった。
高校は近い所を選んだ。家から走って、15分くらいだから近い方なのかな?坂まで来ると、澪菜の憂鬱な一日が始まる。
「ハァ………」ため息まじりに歩き出した。
「おはよー」
「おはよー」
校門の前まで着くと、皆親しげに話をしてる。
昨日の事。授業の事。部活の事。恋愛や友達。昨日見たテレビ。雑談など…。
大概は、愚痴や文句なんだろうけれど、それが高校生らしい。そんな人達の横を早足で通り過ぎて行く。たくさんの学生達がいるのに、澪菜には誰一人声はかけてこなかった。
無言でスタスタ歩く澪菜を、声はかけないけど振り返り皆チラチラ見ている。
その理由は澪菜の風貌にあった。
―金髪に碧い目―
ハーフの澪菜は父親が英国人の為、その血をこく受け継いでいた。黒髪の集団の中にいるには、余りに目立つ髪色だ。どこにいても目に入る髪色。
興味本位の目線が澪菜は嫌で仕方なかった。さすがに、高校生にもなると、容姿で「イジメ」をする人はいなかった。
けれど、集団行動を好む日本人には、「周りと違う者」と自ら触れ合う人もあまりいなかった。
だから、澪菜に話しかけて来る人がいなかった。
自分に無いものに憧れを抱く人もいる訳だから、「変わった髪色」それを生かして、社交的に周りと触れ合えればよかったのだが、澪菜自信、自分から話しかけれなかった。内向的で人見知りの性格が原因だった。
一番の原因は幼い頃にあった。
子供とは正直な生き物である。
澪菜の金髪と碧眼は子供達にとって未知なる存在で、好奇心をくすぐる存在だった。
「お前の髪の毛変な色!!!」
よく髪を掴まれからかわれた。毎日、泣きながら帰ったのを今でも覚えている。泣くと余計に、嫌がらせは酷くなり、悪循環だった。
ただ、父と母には心配をかけないようにと、よく帰りに、家につく前に公園により、涙を止めてから帰った。
そして、一番厄介だったのが、そんな子供達の親達の心ない噂話。子供にとって、親は絶対的で存在である。
正しい事も間違いな事も全てが正しいと思い込み、澪菜はイジメの対象となっていった。
「はぁ…なんで………こんな髪の色なんだろ………。」
校門を越えると足も重くなり、トボトボ歩く。はふ………とため息ばかり出る澪菜。
その瞬間、がばっっっと澪菜は肩をつかまれた。
「ひゃあッッッおばけッッッ」
あまりの驚きに、ぺたっとその場に座り込む澪菜を見て、後ろから笑い声が聞こえた。
「クッ……クク。おまっ……お前、おばけはないだろ……フッ」
その声の主は、校門前なので、必死に笑いをこらえ様としているが、耐えきれず腹を抱えて笑い出した。
澪菜はこの聞き覚えのある声に、誰なのか気付いた。