六話 人間が悩んでいるんです
六話 人間が悩んでいるんです
毎夜、エスパーダにメッセージを送るのだが、無視された上に通知が来た。
このままではアプリを消さなければならないが、そうなると歩み寄るのは完全に不可能になってしまう。
想を頼ろうとしたら都が返事をした。想のスマホも他人に使われているのだと思うと同情を禁じ得ない。
だが今は藁にもすがりたい。都に事情を話した。wがいっぱい送られてきた。
『どうしたら良いと思う?』
怒りたいの我慢して、答えを求めた。
『自分で考えな』
都は冷たかった。
『想は?』
『想はなんかプログラミングで忙しいから』
取り次いではくれないようだ。都に言うしかない。
『だったら都が真面目に答えてくれよ』
『人の恋愛に口出ししたくないの。あんた、写真の子好きなんでしょ?』
『そうだけど、今はそんな場合じゃない。スマホが止まる』
『止めちゃうのも手かもね。彼女はゲーム出来なくなるし』
またwがついている。
やはり真剣に考えてくれていないと要は感じた。
『考えてみる』
とりあえず欲しい答えをくれなそうなのでやりとりを打ち切った。
エスパーダは好きだが、そのせいでスマホを使えなくなるのはイヤだ。できれば彼女への心証を良くして、課金をやめさせたいが、居場所が分からない。会って説得すれば勝機はあるのに。
「会いたいなあ」
エスパーダの写真は全て消されている。新たな写真もないので、要が見る前に消しているんだろう。今でも写真を撮っているのはアプリをオフにする操作が分からなくて放っておいたためで、他意はない。
でもエスパーダは嫌がらせと受け取っている可能性もある。
「誤解を解かなくちゃな……あれ?」
急にお腹が痛くなった。その痛みはどんどん強くなっていく。
要は慌てて病院行った。急性虫垂炎だと言われ、すぐ手術を受け、入院した。
スマホを一緒に持ってきていたので、偶然にも次の課金は阻止できた。良いんだか悪いんだか。