表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

11

 錆びた懐剣を抜き、番頭に応急処置をしてもらった葉桜は、(はや)る気持ちを抑え山道を急ぐ。


 方向からしても山崩れのあった場所と見て間違いないはず。

 何より、他に行くあてもないだろう。

 太陽もだいぶ真南を過ぎ、山間(やまあい)の村は徐々に夜に向かう準備をみせはじめる。


「葛の葉」

 どこにいるのか分からないその姿を探して、耳を澄ます葉桜は大きく辺りを見回した。


 耳に届く小さな咆哮(ほうこう)

「もっと上の方だわ」

 崩れた山の道無き道を、葉桜は進み始めた。





 飛びくる水の(かたまり)に、美しい白銀の毛並みは重く水分を含み、その動きを封じようとしているかに感じさせた。


 (おそ)いかかる黒い影のいくつかは、葛の葉の鋭い爪と牙に切り裂かれたのか、その数は明らかに減っている。


 葉桜は、遠巻きにその姿を(とら)えはしたものの、踏み込むことには二の足を踏んでいた。


 今ここで、自分に何が出来るのか。


 辺りを見回す瞳に映るのは、地滑りの起きた斜面。


 なんでここなのかしら。


 地滑りはもっと上から流れて来ていて。


「あっ」

 大きく振り向いた葉桜が見るのは、あの御屋敷。

 と言うことはここは、流された殿舎(でんしゃ)のあった場所。


 破魔札を握る手で印を結ぶ。

 瞳を閉じて集中すると、感じ慣れた葛の葉の霊力。

 その周りを囲む敵意、憎悪。


 他には……。


 ドス黒い残像が葉桜の左後方から漏れ出ている。


 これだ!

 土砂に足を取られながら走る葉桜は、その場所を辿(たど)ると素手で地面を掘り進めた。


 その手が、ズボりと穴を突き止める。

「地下水。

 破邪、急急如律令きゅうきゅうにょりつりょうっ。

 滅せよ」


 葉桜は念を込めた破魔札を投げ入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ