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ラズヴェルト様と私の辺境までの道のり その1

こんな感じでほのぼのと、ひとまず辺境到着まで書いてみようと思います。

短編の方へご感想、評価、ブックマーク下さった方々、移動できず大変残念ですが、本当にありがとうございました<(__)>


 さてここで、私と共に辺境に行くイカレタメンバーを紹介するぜ!


 まず我が至高の主、邪悪な者に虐げられし穢れなき慈恵の天使ラズヴェルト・ハイゼブランス第二王子様、御年14歳。

 でその護衛騎士であり、淡い茶色の短髪で笑顔が爽やかな世話焼きオカン、カイルークさん。

 超絶人見知り、長い群青色の髪で顔全体が見えない最強の天才魔術師、ソルフェールリットさん。

 天然でスーパードジっこ(疑惑)、赤い髪に童顔の子犬系従者、ナキ。

 青みがかったサラサラの銀髪、表情の乏しいクール系メイド、クラーラ。


 それから置き去りにされた兵士の方々。私としては全員初対面。

 長い金髪を高く結い上げた鋭い雰囲気の美人女性騎士、ジニアさん。

 足と顔に怪我を負った元騎士団長で英雄のオジサマ小隊長、ブライルさん。

 ブライルさんの狂信者、グレてる系の青年、ヘクトー。

 ちょっと気弱だけれど穏やか笑顔の工作部隊所属、モット。土精霊の加護を持っているらしい。


 以上10人で、女神より使命を授かった天使ラズヴェルト様を助け仲間を増やし、いずれ醜悪なる者を引きずり落とし国を取り戻すための物語が今ここに幕を開けた(絶対いつかざまぁしたる!)。



 しばらく走って、護衛騎士さんことカイルークさんからも見渡す限り魔物がいないということで、影ができるような木の傍に車を停め昼食をとることにした。

 助手席から降りたラズヴェルト様は両手を上に体を大きく伸ばしている。しなやかな体が青空に向かってぐいんと延びるのは、大変爽やかで可愛らしい。

 一方荷台に乗っていた面々は、腰の辺りを摩っていたり口元を手で覆ったりしながらよろよろと降りてきた。やっぱり荷台で舗装されていない道を走るのは大変そうだ。


「よろしければどうぞ」


 そんな彼らに『買い物バック』から出したペットボトルの飲み物を渡す。水に紅茶にお茶とひとまずは無難なものにしてみた。


「これが水でこれが甘くないお茶。そしてこっちがほんのり甘い紅茶です」


 それぞれを指差して簡単に説明をする。他にも甘いジュースや炭酸飲料なども買い物バックに入っているけど、今回はお披露目なしだ。

 並べたペットボトルの中から私は先に味付きの水を取り、皆に見えるように蓋を開けてからぐいっと顎を上げて飲む。久々の運転に緊張していたこともあって渇いた喉に水が美味しい。一気に半分ほど飲んでしまった。

 そんな私の様子を見てラズヴェルト様も紅茶のペットボトルを手に取り、蓋を開けて恐る恐る口を付ける。何かと複雑な立場のお方であるので毒見などしなくて大丈夫だろうかと思うが、自分が信頼できると決めた者は無条件で信じるとラズヴェルト様が決め側近達にも話しているので、それを止める者はいない。そこまで全幅の信頼を寄せられて、なお裏切ろうと思う者はこの中にはいないからだ。


「とても飲みやすくて美味しい。香りもいいね」


 一口飲んで驚いたようにラズヴェルト様が感想を言う。他の面々もそれぞれにペットボトルを掴み、一口含んで目を瞠ってからごくごくと一気に飲み干していく。まだまだ水道設備が未発達なこの国で、しかも使われる水は硬水だから、日本の水はどこか甘く飲みやすいと思う。

 ほとんどの人があっという間に一本を飲み干してしまい驚いた顔でまじまじと空のペットボトルを見つめた後、勿体無いことをしたという風に肩を落としている。どうやら気に入ってもらえたことに安堵しながら、好きなだけどうぞとペットボトルを追加した。


 車酔いしていた人達も落ち着いたようなので、皆で食事の支度に取りかかった。

 ナキやカイルークさんが休憩場所を軽く整え、兵士さん達が周りに魔物や危険な生き物がいないか確認に回っている間にカセットコンロを出してお湯を沸かす。さらに取り出した人数分のマグカップに粉のインスタントスープをあけていく。

 ホームセンターで買ったインスタントスープを箱から出し、一袋ずつ封を切ってちまちまカップに入れていると、メイドのクラーラが手伝いを申し出てくれた。大人数の分を作るときは小分けにしてあるとちょっと面倒臭い。


「街で買った分で数日は凌げるだろうが、この先食料が手に入るか心配だ。魔物を狩ることも考えなければ」


 そこらに転がっていた岩や倒木に腰かけながら、それぞれが街で買ってきた食べ物を取り出す。国から支給された旅の資金も全部持って行かれてしまったので、手持ちのお金で買える食料は少なかったようだ。

 魔物も食べれるが相手の強さによっては余計な怪我を負いかねないし、美味しい魔物もいれば食べられないほど不味い魔物もいるので安定的に手に入る食料とは言い難いのだ。それを思い、ブライルさん達が溜息を吐く。


「こういったもので良ければいくらでもありますよ」


 そんな彼らに私はスープ入りのマグカップを渡し、ビニール袋に包まれたままの大手メーカーの菓子パン類を取り出した。ロールパンや焼きそばパン、ウインナーロール等から、食パン生地に具を閉じ込めたサンドイッチのようなものまで一通り並べてみた。

 それぞれがどれだけ食べるのか分からないので山のように取り出した菓子パンを、事情を知らない兵士の人達が唖然としながら眺めている。


「ずっと気になっていたが、君のそれはいったい……」


 聞いていいものか悩んでいる様子ではあるが、我慢できなかったように漏らされた問いに、ちらりと目を向けたラズヴェルト様が頷いたのを見て、私は簡単に自分のギフトの説明をした。

 とはいっても、私がこの世界に来た経緯や異世界のことは省いた。全部説明するには時間がかかるし、何より面倒臭かったので。そのうち説明が必要な面々が全員そろったときにでもまとめて説明したい。いっそレジュメでも作っとくんでそれ読んでほしい。

 『買い物バック』については過去に似たような能力を持った人がいたらしくすぐに分かってもらえたけど、『ホームセンター』はなかなか理解してもらえなかった。そもそもお店の形態がよく分からないらしい。食料品から日用品から衣類から庭木まで、広大な店に何でもそろっているというのが想像できないそうだ。市場かと聞かれたけど、そう言えるような言えないような。いややっぱり違うか。

 それぞれが食事を終えたので、これについてはおいおい説明していくことになった。


 あ、菓子パンはなかなかに好評だった。


「こんな柔らかいパン初めて食べたな……」

「これがパン!? 白い! 甘い!」

「うおっ! 中の何だこれうめぇ!」

「スープも美味しいな……。深い味だ」

「毎食これだと栄養が……。どうにか野菜も手に入れたいな」


 パンやスープに驚いてもらえたのは大変嬉しかった。袋に触っては驚き、開け方に驚き、パンを抓んで驚き、一口噛み付いて驚き、噛み締めてその味に驚き。個人的な好みは別としてどれも美味しいと喜んでもらえてよかった。中には気に入ったパンを抱え込んでひたすら食べている人もいる。

 でもやはりオカンからダメ出しが! いやそれ私も気になっていたけれども!


 それからプラスチックごみについては皆から回収して袋にまとめておいて、後でホームセンターのゴミ捨て場に持って行く予定だ。そこに捨てておくと気がつけばごみが消えている。ごみに悩まなくてもいいとても細々とした配慮がされているギフトなのである。



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